壱「ファーストコンタクト」
日暮夕焼。その名前を教えてもらったのは霊体になって2週間後の4月22日の午前9時だ。
なぜそこまで明確に覚えているかというとよくは覚えていないが。まぁなんにしても、僕が自転車で轢き、それが四度目の死と言う少女の名前は、日暮夕焼というらしい。
この二週間、白の装束と赤のマフラーは身に付けたまま、長い黒髪を紐で結び、なんともまぁ異世界からやって来ましたかのような少女が日暮夕焼だ。
そして、ただいま4月22日の12時30分。学校からは電話がたくさん来ていたが、親から心配の電話もかかってこない僕は、のんびり家で夕焼と昼食を食べていた。
「そういえばさ、僕はずっと霊体のままで生活しなくちゃならないのか?」
今更ながらそんな質問を夕焼にすると。
「いや、生身にもどれるぞ」
と、当たり前のように返事が返ってきた。
「ちょっとまて。じゃあ、なんで僕は学校に行かずにこんなことをしているんだ!?」
「さぁ?」
さぁって。今からでも一応学校にはいった方がいいよな。
まぁ、どうせはぶかれてしまうことはなんとなくだが分かっている。
入学式に顔を出さない、不良生徒。
そんな、レッテルを貼り付けられてるのだから。
「なぁ、夕焼。僕をもとにもどしてくれ。学校にいきたいんだ」
「そーなのか?仕方ない、戻してやるのは簡単だけど、その前に味噌汁おかわり!」
あぁ。としぶしぶ空になったお椀を手に持ち、味噌汁をつぐ。
なんともまぁ、尻に敷かれた可哀想な高校生だ。
「どうやって、もどれるんだ?」「アレ持ってきて」
アレとは。ベットに寝転がっている僕の体のことだ。
目が半開きで、鳩が豆鉄砲を食らったような顔だ。
「ソレの前に座れ」
アレやらソレやらと僕の体が可哀想だ。
とりあえず、言われた通りに座ると、夕焼は虚銃と呼ばれる神正器を取り出し、僕の顔めがけて撃ちやがった。
「!?」
気がつけば、後ろに僕の体は無かった。
ということは、、、。
「夕焼。もとに戻れたのか!?」
「うっせえ!!寝かせろ!」
?そういえば、なんだか外が暗いことに気がついた。
テレビをつけてみると、25時だったのだ。
「え、まてまてまて。なんだこれどういうことだ!」
「あー、ずっと寝てたぞ。まぁ、もとに戻るのが最初だからな、かなり時間がかかったけど慣れると10秒かからず意識を取り戻すさ」
僕はあれから、約13時間程も寝ていたのか。
というより、こんなことに慣れるのかが心配だぞ!
「ほら、わかったら寝るぞ。明日学校へいくのだろ?」
「あ、そうだった。寝るよ」
なんだが、よくわからないまま布団の中に体を入れたのだった。
4月23日午前6時半。
「おい、夕焼いってくるぞ!」「まて!私もついてくからまて!」
学校が始まるのは8時45分なのだが、二週間も無断欠席したことについて謝罪をするため朝早くからいくわけだが。
「待てよ!私のご飯は!?」「無いよ。あとで購買で飯買ってやるから」「むぅー!」
そんなやりとりをし、自転車の後ろに夕焼を乗せ、学校へと向かった。
そもそもほんとに夕焼は見られないのだろうか。そこのところが曖昧だが、まぁ大丈夫と言われたから大丈夫だと信じておこう。
なんて思いながら、20分ほどで学校へ到着した。
「職員室どこだったかな。というよりも、靴箱もわからないからな」
僕は仕方なく、事務室へ職員室の場所を聞きに行った。
制服でそんなことをいったのでかなり怪しまれたが、事情を説明すると、学年主任と呼ばれる先生のもとまで親切に案内してくれた。
「あー、君か。入学式にも来ずに二週間ほど無断欠席した生徒は」「本当に申し訳ございません。親戚が亡くなったので、葬儀に出ていました」と嘘をついた。
学年主任の先生はとても優しそうな顔で、スーツをキッチリと着ている50前半位の方だった。
「君のクラスは1-2だよ。担任は獅子崎先生という若い女性の先生だよ。獅子崎先生には話してあげるからついてきなさい」
といわれ、ついていくことにした。
夕焼は「なんだこの偉そうなハゲは」と文句を言っていたが無理矢理つれていく。
そして、結論から言えば。
「やぁ、始めましてだね!私は獅子崎揺籠。ゆりちゃんと呼んでくれて構わないよ」
この、おちゃらけた先生が僕の人生の数割りを壊した。そういうことらしい