ナインナイツナイト
第三回小説祭り参加作品
テーマ:剣
※参加作品一覧は後書きにあります
透明なキャンパスの上に飛沫が舞う。
それは彼が生きた証だった。確かに彼がそこにいたことを証明する何よりの痕跡。
しかし、それは頼りない染みでもある。いずれ剥がれ落ちていく飛沫。不確かで、あやふや。
彼は記憶を維持しておくことができない人間だった。
果たしてそれは病気だろうか?
彼は知らない。知ろうともしない。
通り過ぎていく風景と同じく、彼にとって記憶が流れ去っていくことはごくごく自然なことだったからだ。忘れたくないと思ったことすらないのだから、記憶が人よりも早く風化することに不便さを感じたこともなかった。
記憶とはなんだろう。
時折、哲学者のように彼は考える。
例えば、意識のどこかにしがみ付いていた記憶の断片が剥がれ落ちる瞬間。
例えば、昨日の出来事を他人と情報共有しようと会話に花を咲かせている者たちを見た時。
不思議で、不可解だ。
記憶になんの意味があるのか彼には理解できなかった。
自分がどこから来た何者なのか、それを知らなくても生活に支障はない。現に彼は自分の一切を知らないが今まで問題なく生きてこれた。確かな重みを感じる刃さえあれば他に何もいらない。後は当たり障りのない笑顔を張り付けていれば事足りる。
彼の手元には刃があった。気づいた時には既にそれは彼の手に握られていた。それだけが風化しない彼の記憶のよりどころだった。
鋭利で冷たい鈍色の刃が一つだけ。
「だーかーらー! 昨日もオレ言ったじゃん!!」
「ふ~ん。あ、そうだ。ねぇ、いいこと教えてあげようか? 基本的にあんたの言うことって聞かないことにしてるの、私」
「聞いて! お願いだから!」
見たことがあるようなないような、そんな街並みを眺めながらゆっくりと歩いていた彼は、通り過ぎようとしていた店先から響く絶叫にも似た声に反射的に足を止めていた。
色とりどりの花を咲かせる植物に囲まれる形で立っている女性――その花屋の店員か何かだろう――と、上から下まで黒で統一した背の高い男性が何やら言い争っている。声を張り上げているのはもっぱら男性のほうで、女性のほうは適当にあしらっている様子だ。
長い金髪を2つに結っている女性は、そのどこか野暮ったい服装とは裏腹に、通りを歩く女性たちとは雰囲気が違って見えた。それは手にしている青い花が彼女を華やかに見せていたからかもしれない。
男性のほうは彼に背を向けているのでよくわからない。一方的に焦っている空気だけは感じ取れた。
恐らくは痴話ゲンカか何かだろう。
うんざりした様子の女性がため息混じりに言葉を続けた。
「私がどこで何しようが私の勝手でしょ?あんたの許可を取る必要ある?」
「そ、……ない、けど――」
「はい、話終了。ほら、これあげるから口閉じなさい。好きでしょ、シンシア」
女性が手にしていた青い花を男性の手の中に押し込める。戸惑いつつも、男性は抵抗せずに花を受け取った。
似合っていただけに、女性の手から青い花が失われたことが残念に思えた。
「それよりあんた、子供たちと遊ぶ約束してるんでしょ。こんなとこで油売ってないでさっさと行きなさい」
「は、油? ンなの持ってねぇけど」
「辞書引きなさい、馬鹿」
冷めた様子の女性の声。それでもそこに突き放した響きがなかったのは、『馬鹿』という単語の中に男性を貶す意思を宿していなかったからだろう。
なおも食い下がろうとする男性を押し出す女性と、そこで初めて目が合った。しかし女性の視線はすぐに彼から外れ、目の前の男性に向けられた。
「あんたは商売の邪魔。まだごちゃごちゃ言うつもりならあいつ呼ぶわよ」
「げっ!? そ、それは卑怯だ!」
「卑怯で結構。はい、バイバイ」
その男性をあしらうことは、女性にとって慣れたことなのだろう。言動の端々からその様子が窺える。
押し出されるままに数歩下がった男性から息を吸う音が聞こえた。
「ぶぁかーーー!!」
彼が反射的に両手で耳を塞ぐほどの大声だった。びりびりと大気が震えたように感じたのだからよっぽど大音量だったのだろう。
通りを歩く人々も思い思いのリアクションを取る中で、唯一特に目立った反応を見せなかったのはその女性だけだった。
泣き叫びながら走り去っていく男性を、平然と見送る姿からは慣れが感じられる。妙な先入観が働いているのかもしれないが、唐突に地面が裂けて地底人が現れても女性は慌てないような気がした。
そんな失礼なことを考えている彼の視線に気付いたのか、不意に女性の顔が彼へと向けられた。
「騒いじゃってごめんなさいね。あの馬鹿ちょっと心配性だから」
こちらを向いてしゃべっているというのに、自分が話しかけられているのだと気付いたのは、反応のない彼を訝しんだ女性が綺麗に整えられた眉を動かしたのを見てからだった。
とっさに口元を笑みの形にして緩く首を横に振る。不審そうに彼を見る女性の眼差しは変わらなかったものの、そこを突っ込んで指摘するほど女性も気にしたわけではないのだろう。軽く小首を傾げて肩を竦めてみせた。
「それよりどう? 花。買ってかない?」
仕切り直しのつもりなのか、そう言って女性が見せたのは、控えめに咲く淡い桃色の花だった。小さな花は確かに可愛らしくはある。しかし、彼の視線が向かった先はその花の向こう、女性の背後で綺麗に活けられた青い花だった。先ほど女性が走り去っていった男性に手渡していた花だ。
やはり、と思う。
その青い花は女性にとてもよく似合う。
「……もしかして、これが気になってる?」
彼の視線の先に気付いた女性が青い花を示して尋ねてくる。
躊躇う理由も見付からなくて――というよりも、考えようともしなかったが――無言で頷く彼に、女性の顔が柔らかく綻んだ。
「……――ありがとう」
小さく呟かれた言葉は、油断していたら聞き逃していたかもしれない。それほど女性の呟きは小さかった。
なぜだろうとは思ったが、彼がその疑問を口に出すことはなかった。
「今は季節外れだから少し高くなってるけどいい?」
頷く。
必要最低限の出費しかしてこなかったので懐にはだいぶ余裕がある。少しくらい値段が高くても十分支払えるだろうと彼は判断した――そう判断が下ったのは頷いた後だったが。
「誰かへの贈り物? それとも観賞用?」
問われて、返事に窮した。
花を贈る知人に心当たりは――現在記憶に残っている限りでは――いないし、ひとところに留まることがないため花を飾る場所もない。
それでもその青い花を欲しいという欲求は薄れなかった。
「……どうかな。もしかしたら誰かに贈るかもしれない」
曖昧に言葉を返す。
女性は不思議そうに目を瞬かせたが、軽く小首を傾げながら笑っただけで追及はしてこなかった。
「じゃあ軽く包装しときましょうか。量は?」
「全部」
迷わず即答する。
何が面白かったのかは不明だが、女性がまた笑った。
「了解。ちょっと待ってて」
そう言い置いて、女性が青い花と共に店内へと消えていく。視界の中から完全に消えるまで、彼は青い花を目で追った。
何が彼の欲を刺激したのかはわからない。どこにでもあるとは言い難い淡い青色の花の何にこんなにも惹かれたのか、考えたところで答えが出てくることはなかった。
ただ直感的に欲しいと思ったのだけは確かだ。
昔のことなど覚えてはいないので確実とは言えないが、強い欲求を持ったのはこれが初めてだった。
視界から青い花が失われたことを契機に、店先に陳列――という言い方が適当なのかわからないが――された花に目を向ける。
小振りなものから大振りなものまで、色とりどりの草花が己を誇るように咲き乱れている。その種類は多岐に渡った。知識に乏しい――というよりもそもそも知識を蓄えておくことができない――彼から見ても種類に富んでいると思えるのだから、彼がそれなりに見識のある者であったならば種類の豊富さを褒め称えていただろう。個性を生かされた陳列具合もまた見事だった。
ふと、視界に花とは違うものが映る。半ば反射的にそれを手に取っていた。
「ナインナイツナイト」
それは本だった。表紙の飾り文字を読み上げる。恐らくはこの本のタイトルだろう。
タイトルの下には絵が描かれていた。青の縁取りがされた銀色の満月、それを取り囲むようにして9つの武器が配されている。
輪刀、双剣、忍刀、長刀、薙刀、斧、槍、鎖鎌、そして最後に七星剣。特徴的なのはそれぞれの武器に蛇が巻きついているところだった。
いずれも、彼にとっては馴染みの深いものだ。
「お待たせ」
さきほど店内に消えた女性が、きれいに包装された花束を手に店先に戻ってきた。裸の状態の花を持っていたときよりも、センス良く包装された花束を持っている女性のほうがより似合って見えた。
「あら?」
女性が首を傾げる。視線は彼の持っている本に向いていた。
特に何も考えずに女性にその本を差し出す。店先に置いてあったので彼女のものだろうと、差し出した後に思った。
「ああ、あいつの忘れ物ね。子供たちに読み聞かせてあげるんだとか言ってたのになに忘れてるんだか」
受け取った本のタイトル部分を叩いて、呆れたように女性が肩を落とす。
「それ」
「ん?」
「それは何?」
女性の手の中の本を指さし問う。女性は質問の意味が理解できていないようだった。
「これ? ナインナイツナイトでしょ?」
意思の疎通失敗。
いろいろ言葉が足りなかったらしいと気付いたのは、たっぷり数十秒時間をかけてからだった。
「ナインナイツナイトというのは何?」
「何って……ああ、知らないの?」
頷く。
もしかしたら過去に見聞きしていたかもしれないが、記憶に残っていない以上知らないのと同じだ。
女性は珍しそうに彼の顔を覗き込んできた。
何かおかしなこと言ったのかもしれない。それが何かを考えるつもりはなかったし、考えるという発想自体湧きはしなかったが、覗き込んでくる女性の顔を彼も小首を傾げて見返した。
ニコッと女性が笑う。つられて彼も微笑を返した。
「ま、簡単に説明すれば9つの刀剣に関する9人の騎士の物語よ」
突き返された本を受け取る。
促されるままに頁をまくると、第一夜と大きく書かれたページが目に留まった。さらに頁をまくる。
「紅き鎧の騎士、円月輪フリージアを手に強欲な森の王を封じる」
挿絵には確かに、真紅の鎧を身にまとった騎士が巨大な輪刀を手に闇が肥大化したような森と相対している様子が描かれていた。
頁をまくる。次は第二夜とある。
「青き鎧の騎士、紅蓮双剣ツインズを手に荒ぶる海の王を鎮める」
紅蓮の焔をまとった双剣を手にした蒼穹の鎧の騎士が、同じく闇が肥大化したような海に斬りかかっている様子が。
「黒き鎧の騎士、偽神ロッキオを手に呪われし湖の姫を眠らせる」
それまでの頁に比べて今回はやや趣が違った。
漆黒の鎧の騎士が忍刀と共に闇が肥大化したような湖に沈んでいく様子が挿絵として使われていた。
「白き鎧の騎士、竜王ウロボスを手に邪悪なる闇の王を打ち滅ぼす」
純白の刀身を持つ長刀を持つ純白の鎧の騎士が、肥大化した闇を切り裂いている様子が。
「東の地の騎士、蒼穹号センを手に吠え猛る荒野の獅子を鎖に繋ぐ」
またしても趣が変わった。今度のページには騎士自体が存在しない。
枯れ果てた大地にその四肢を鎖に繋がれた天に向かって咆哮を上げる巨大な獅子の胴を、薙刀が刺し貫いていた。残虐とも言える挿絵ではあったが、それ以上に巨大な獅子の迫力が際立っていた。
「南の地の騎士、重刃フエツを手に空を覆う鋼の怪鳥を撃墜する。
西の地の騎士、貫殺姫ミョルンを手に緑を喰らう山岳の蛇を切り裂く。
北の地の騎士、螺旋鬼ラミアンを手に春を奪う雪原の巨人を谷に落とす」
同じく騎士の姿はない。それぞれ巨大な鳥やら蛇やらを斧や槍で撃墜している挿絵が載っていた。
そして最後の頁。第九夜。
「誇り高き騎士、七星剣を手に侵略の霧から世界を救う」
挿絵はもはや挿絵と呼べる代物ではなかった。一面を霧で覆われた挿絵には刀剣の姿すらない。
なんともおかしな消化不良な感情だけが残される。
本を閉じて顔を上げると、女性の苦笑が出迎えた。
「独特の世界観でしょ? そこが一部の層には受けてるみたい。私はよくわからないんだけどさ」
手を出されて、そこに本を返す。
「そんなことより、はい、シンシア」
言って女性が花束を差し出す。
彼は首を傾げた。
「シンシア?」
叫びながらどこかへ走り去っていった男性に向かって、その名を口にしていたのを覚えている。てっきりあの男性の名だとばかり思っていたので、この場面でその名が出てきたことが不思議で仕方がなかった。
女性が苦笑にも似た笑みを浮かべて青い花の花弁を撫でる。
「この青バラの名前よ。月の女神の名を冠してるんですって」
「――……月」
つい反射的に彼は空を見上げていた。
まだ高い位置に居座る太陽を追いかけるように、欠けた月が空に張り付いている。どこか冴え冴えとした印象を持ってしまうのは、月の周りがまだ明るいからだ。その周りには当然ながら9つの武器は存在しない。
顔を下げる。
まだ受け取っていない青い花――バラらしい――は女性の手の中にある。仄かに薄く色付いた花は確かに月を連想できた。
「名前に意味を持たせているのはなぜだい?」
ふと疑問が口を突いて出る。
それは他人が勝手に名付けた自身の名にも意味があるからだ。どんな意味だったかは忘れてしまったが、意味が付けられていることだけは覚えていた。
不意の問いに女性がきょとんとした表情を見せる。ぱちぱちと数回目を瞬かせ、それから吹き出すようにして女性が笑った。
今度は彼のほうがきょとんとする番だった。
「この世に意味のない名前なんてないわよ」
笑い声の合間に女性が言う。
「名前にはね、願いが込められてるの」
「願い……?」
「そう、願い」
不思議そうに返す彼に、にっこりと優しげに笑う女性。
先ほどの彼の動作を真似るように女性が空を見上げる。薄く張り付く月の姿を探して視線をさまよわせ、ある一点で視線が固定されると何かを慈しむように目が細められた。
しばらくそうして月を堪能した後、女性の視線は彼のところで止まらずさらに下へと向かった。
「たとえばこのナインナイツナイトもそうよね。それぞれの刀剣に名前が付けられているでしょ? これは9人の騎士の願いが込められているの。ま、興味があったら自分で調べなさいな。人にばっか尋ねてないで、ね?」
茶化すように女性が楽しげに笑う。
「それより、はい、これ」
女性の手の中に収まっていた花束が彼の胸元に押し付けられる。女性の手の中に収まっていたほうがしっくりきていたが、彼は特に逆らうことなく押し付けられた花束を受け取った。
鼻腔を花の香りが刺激する。
どこか懐かしいにおいだった。
「ありがと」
小さな声で女性が囁く。
顔を上げた彼を見上げて、女性は柔らかく微笑んだ。
「お代はあんたの名前でいいわよ」
「え?」
「ふふ、ジョーダン」
どきりとした。
いや、むしろ心臓がいやに妙な痛みを訴えてきた。
名前――それは記憶を維持できない彼が何よりも先に失ったものだ。他人に勝手に付けられた名前はあるが、それを女性に告げるのはなんだかひどく失礼なことのように思えた。
冗談で良かったと本当に思う。
請求された金額を支払う間にも、嫌な軋みを上げた心臓の痛みが引くことはなかった。
「また来てね」
去り際、笑顔で女性にそう告げられた。
笑顔で会釈した彼がその店を再び訪れることはないだろうと思った。もし次に会うことがあったとしても彼は覚えていない。
花束を腕に抱えて、足早に郊外へと足を進めた。
人も物も情景も風も時も、彼にとっては通り過ぎていくものでしかない。決して留まるものではなかった。
記憶もまたそう。
1年前のことを何か語れと要求しても、彼はきっと何も語らない――否、語れない。
彼にとって記憶もまた留まることなく通り過ぎていくものだからだ。必要を感じなかったから、というわけではない。意図的に、というわけでもない。
底の抜けたバケツに幾ら水を注いでも水が溜まらないのと同じ原理だ。彼の記憶は決して長続きしなかった。
病気なのだろうかと彼も疑ったことがある。しかし、その疑ったことさえ数日経てば彼の記憶から抜け落ちる。
悟った、と言うにはやや表現がおかしいかもしれないが、彼は自分が空っぽであることを自覚した。それは彼にとって苦痛ではなかった。
流木のように流転する――彼は何かを求めるように世界を歩き回った。しかし、彼にとって不幸だったのは、求めている何かが一体なんであるのか分からなかったこと。姿形も色も匂いも属性も。手がかりと呼べるものは一つも所持していなかった。
それでも彼は求めた。
そこに彼を流転から解放してくれる鍵となるものがあると誰かが囁いたから。そう囁いたのが誰だったのかは既に記憶になかったが、彼はその可能性に賭けてみることにした。
恒常的に続く虚しさと空しさ。築いても崩れ落ちる砂の城。掬い上げても零れ落ちていく水。捕まえようとしてもすり抜けていく風。
彼の手元にはひとつだけ、通り過ぎていかない確かなものがあった。
ナインナイツナイト――そう、花屋の店員が教えてくれたあの童話と同じ名前の銘がついた刃が。
足を止める。
気が付いたら街の外、街道から外れた林の中に迷い込んでいた。
息を吐いて、口の中で小さくキーを唱える。
右腕に蛇のように巻き付いていた腕輪が彼の魔力を取り込んで光の粒子となって分解した。それは彼の周囲を旋回して各々の形を取る。
輪刀、双剣、忍刀、長刀、薙刀、斧、槍、鎖鎌、そして七星剣。
あの本の表紙絵とまったく同じ。彼を月の代わりとして回る。
「――……ナインナイツナイト」
意味を持つ名前。願いが込められていた名前。
――なら月は?
伸ばした手は何もつかまずに虚空を彷徨う。抱えていた花束が腕から滑り落ちた。
視線を落とす。
購入したばかりの青バラ。月の女神の名を冠する。
気付いた。
月はこれだ。彼ではない。
口の中で小さくキーを唱えれば、彼の周囲を旋回していた9つの刀剣は再び光に分解されて彼の腕の中でスパイラルな腕輪へと戻った。
足元の花束を拾い上げる。
失った己を知る手掛かりになるのではないかと思った。空振りだった。
落胆はない。彼はそれを知らない。戸惑いもない。彼はそれを知らない。焦りもない。彼はそれを知らない。喜びもない。彼はそれを知らない。
空を見上げる。木々の隙間から見えた月は冴え冴えと彼を見下ろしていた。
風が彼の銀の髪を撫でる。
道も確認せず、彼は歩き出した。再び流転するために。
第三回小説祭り参加作品一覧(敬称略)
作者:靉靆
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作者:唄種詩人(立花詩歌)
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