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第5話 就活スタート

 俺は郊外から続く長い街道沿いの道を通り、荒くれ者の冒険者が集う仕事斡旋所(通称:冒険者ギルド)に来ていた。


 冒険者の仕事はクリーチャーの討伐から洞窟に生える薬草の採取、果ては街の清掃までと幅が広い。そんな仕事を冒険者に斡旋してくれる場所がここ冒険者ギルドであった。俺はおもむろに目の鋭い職員のおっさんに話しかけた。


「何か仕事をくれ」


「葉っぱ1枚!?仕事を取る前に服装を整えてきたらどうだ?」


 いきなり、失礼なおっさんだな。俺の下腹部を見て鼻で笑いやがった。しかも、手を振って去れという動作をしてきたぞ。


 舐めてやがるな。ちくしょう。これは、文句を言ってやらなければならないとそう思っていたら、アイリがおっさんに近づいて口を動かす。


「おじさま。こやつは葉っぱパンツを履いた俺の姿を見てくれ!もう、誰でも良いから見られたいと言っておったぞ」


「……変態だな。そんな変態野郎がいったいどんな仕事が欲しいんだ?」


 アイリの話を聞いたおっさんが俺を見て呆れているが俺は葉っぱパンツを履いた姿を見てくれなんて言ったことはないぞ?俺は変態かよ。これはアイリに文句の1つでも言わなければならないな。


「そうなのじゃ。あやつは裸を見せて喜ぶ変態じゃ。そんな、やつではあるがわっちのためにまじめに働きたいと申しておる。職員のおじさま、そやつのためになにか良い仕事でもないかの?」


「健気でかわいいお嬢さんだ。しかし、こいつはロリコンで露出狂かい。お嬢ちゃん、そんな奴と一緒にいると不幸になるぞ。悪いことは言わないからわかれなさい」


 おっさんがこの世の汚物の頂点を見る様な目で俺に視線を向けてからそう言う。待てよ。おっさん。弁明させろ。俺は露出狂でもロリコンでもないんだ。


「だれがロリコンで露出狂だ!」


「おい、おい、その格好で露出狂じゃないと?」


「そうじゃぞ?ぬしは立派な変態じゃ。誰が見てもそう思うのじゃ」


 いわれのない誹謗中傷に激高した俺は叫んだが職員のおっさんからは哀れみの視線を送られてくる。非常に不愉快だ。だが、このままでは、俺が仕事を得るという目的が達成できない。そこで、俺は今日の本題を切り出すことにした。


「おっさん、皿洗いとか、武器の販売員のような危険のない手軽な仕事はないか?」


「なにを言ってるんだ?冒険者ギルドは街の住人が面倒ごとを解決して欲しいから依頼にくる場所だぞ?そんな危険のない仕事が欲しいなら隣の公共職業安定所に行きな」


 そう言って、おっさんは親指を右に向けて、公共職業安定所のある方向を指す。


「もっとも、葉っぱパンツの野郎が働ける場所があるかはわからないがな」


 親父の呟きに腹も立ったが俺は隣の公共職業安定所に向かうことにした。公共職業安定所は、人でごった返していた。こんなに並ばなくてはならないのか。仕事がない人は俺以外にもたくさんいたんだな。そう思っていたら、中に入ってすぐに係の人が受付用紙を俺に渡してきた。


「受付で順番待ちをしている間にこちらに履歴書等や希望職種の書類をお書きください」


 そう言って受付の横に立っていたおばさんが俺の下腹部にある葉っぱを見てニヤニヤしながら言ってきた。


 ちょっと、そんなニヤケタ顔で俺を見ないでください。恥ずかしい。俺は恥ずかしかったので部屋のすみに急いで駆けていき、そこにあった机で履歴書に今までの経歴を書込むことにした。


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経歴


189年 ダイアン幼年スクール 卒業


192年 ローレライ中等スクール 卒業


196年 アーカイル帝国アカデメイア 卒業

          ・

          ・

          ・

家事手伝い 3年3ヶ月

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希望職種

・楽な仕事

・高収入

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「楽な仕事と書けばそんな仕事が貰えるのかや?ぬしは頭が可哀想じゃの」


「うるさい。どんな仕事が来ているかわからないからとりあえず書類の空欄を埋めてみただけだ!」


 イヤな所をアイリは突いてくるな。ここは話を誤魔化すために話題を変えよう。


「見ろよ。俺の華々しい経歴。アーカイル帝国アカデメイアを卒業してるんだぞ?」


「アカデメイア?それは学校のことかや?わっちには何がなんだかわかりんせん」


「アカデメイアを知らないのか?アーカイル帝国で最も学歴の高い教育機関だぞ?これを卒業したものには将来が約束されていると言われている最高学府だ」


 俺は自慢げに母校であるアーカイル帝国アカデメイアについて語ってみた。


「それはすごい経歴じゃな。将来を約束されているはずのぬしはなぜ仕事1つどころか服1枚ないのかや?」


 俺は、そのアイリの言葉にぐうの音もでなかった。アイリとのやり取りを誤魔化すように書類が書き終わった俺はすぐ受付に向かうことにした。


「こちらは公共職業安定所です。どのようなご用件でしょうか?」


 そうマニュアル口調で受付の姉さんが顔を引きつらせながら言う。その姉さんの視線の先は俺の下腹部の葉っぱである。


「今日中にでもできる仕事が欲しい」


 俺は自らの要求を述べる。


「そのような仕事はこちらにはございません。こちらはあくまでも斡旋業務でございます。職業を得るにはまず商会等に面接を行い、採用される必要があります」


「では、今日中にでも面接ができる所ならばどこでも良いので紹介してくれ」


 受付の姉さんは俺に書類を渡すとすぐに面接会場に行くように言ってきた。俺はワイマール商会の求人票を片手に初面接のドキドキ感を感じながら面接をする建物に走った。


「ここから俺の就活生活スタートだ。そして、定職について服のある安定した生活を手に入れる」


「ぬしの安定した仕事の基準は服があるかどうかなのかや?悲しいのう。葉っぱ姿もよいと思うのじゃがな?」


 アイリはイらしい笑みを俺に向けながら笑ってやがる。本当に憎らしい。ニヤニヤしやがって。


「それにぬしを雇ってくれるような商会やクランなどないのではないかや?」


「絶対に就職してやる!」


 アイリに就職は無理と言われて俄然やる気になった俺はワイマール商会の求人票を握りしめる。空は青く広く澄み切っていた。はたして俺は仕事に就くことができるのだろうか…


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