第4話 葉っぱパンツ
アイリと出会って、その後も裸で生活すること1週間が過ぎた。この1週間、俺は衣服を盗まずに全裸状態を脱する方法を必死に考えていた。そして、俺はついにある方法を思いついた。そのために先程まで郊外の広野で葉っぱを拾い集めていた。
その方法が知りたいだって?俺を見ればすぐにわかるさ。郊外で木や草が生い茂る広野に葉っぱ1枚を身につけた俺がいるのだから。
俺は不器用だったが一生懸命に葉っぱ1枚で股間を隠せる素敵なパンツ(以下から葉っぱパンツと呼ぶ)を試行錯誤の上で作ることができた。そして、俺はついに葉っぱパンツの量産体勢に移ったのだ。
「見ろアイリ。このすばらい衣服を!そして、この葉っぱたちを!!」
俺は自らが履いている葉っぱパンツを指差した。どうだ。素敵だろうと。そして、次に作成中の葉っぱパンツを得意げに掲げてアイリに見せる。アイリは俺のこの行動に呆れたのか口を半開きにして目を閉じたあとに額に手をあてて唸る。
「ぬしは本当に可愛らしい馬鹿じゃな。救えないのじゃ」
ため息をついた後にそう呟いた。そして、なにを思ったのかおもむろに俺がはいている葉っぱパンツの紐を引っ張りだした。やめて、俺からこれ以上、衣服を取らないでと俺の悲痛な心の叫びをまるであざ笑うかの様に葉っぱパンツの紐を引っ張ることをやめない。
「まて、アイリ!俺の葉っぱパンツの紐を引っ張るな!?」
俺は紐が解けてパンツが脱げないように葉っぱパンツの紐がわりにしているツタの結び目を押さえる。アイリはしばらくして俺の葉っぱパンツのツタを引っ引っ張っていたが飽きたのか俺の方を向いて口を動かしてきた。
「ぬしよ。この葉っぱパンツ?とやらのどこが服なんじゃ?百歩譲ってやって下着として認めてやっても良いが外出着にはならんぞ?」
「おまえが作ってくれた腰蓑とさして変わらないじゃん!!」
「確かにそうかもしれないがの。葉っぱ一枚で秘部を隠すのと全体を覆うのでは明確に違いがあると思うのじゃが…」
アイリはあきれ果てたと言わんばかりの顔つきで俺を見ながらため息をつく。どれだけアイリは俺の葉っぱパンツに文句を言いたいのだろうか。ずっと文句を言っているアイリだがまだ言い足りないのかさらに口を動かす。
「わっちが思うに葉っぱパンツのみを履いてる状態だと裸よりも変態に感じるのは気のせいかや?」
アイリは俺の葉っぱパンツを指しながらそう指摘する。俺はその発言に異議を唱えるべく現実的な話をすることにした。
「なに?真っ裸の方がいいだと?正気かよ。警官にまた追われるだろ?」
俺はアイリにこの葉っぱパンツの有効性とすばらしさを説明した。俺の説明力が足りなかったのだろうかアイリはさらに文句をつけてきた。
「わっちは人間の倫理観が信じれんわい。その格好は全裸より卑猥に感じるじゃろ?」
アイリには裸よりか葉っぱパンツをきただけの人の方が卑猥に感じるようだ。しかし、人間の社会には法律があり、最低限の部位を隠すようにする必要があるのだ。そして、この葉っぱパンツはその問題を見事にクリアしているのだ。
「いいんだ。卑猥に感じるかどうかは二の次で、警官に追われないことが重要だ。そして、この葉っぱパンツはそれを実証済みだ!」
俺は力強くそう言った。葉っぱパンツ第1号が完成した時に実験と称して警官の前を通ったのだ。もちろん、今回は踊りなどはしなかった。その結果、警官は俺の姿に驚きはしたが追いかけては来なかったのだ。
俺の反論を聞いてもアイリは唸るだけで納得したようには見えなかった。そのためだろう。さらに俺の葉っぱパンツに対していちゃもんをつけてきた。それも会話による平和的な文句ではなくて、実にアグレッシブルな方法でだ。
「ぬしは葉っぱパンツなどいらんかったのではないかや?あんな可愛らしいものを隠す必要なんてまったくありんせんよ?」
アイリはニマニマ笑いながら俺の葉っぱパンツを引っ張ってくる。
「まて、アイリ!紐を引っ張るな!?脱げるから!!1週間前の照れて愛らしいアイリはどこにいったのだ!?」
「1週間も見せつけられたら、さすがのわっちも慣れるわい。ぬしがこんな女にしたのじゃ。だから、責任を取ってもらおうかの」
俺は焦りながらもアイリが引っ張るツタの結び目を押さえる。アイリは構わずにさらに力を入れてくる。
「よいではなか。ぬしとわっちの仲じゃ!こんなもんいらんのじゃ」
俺は襲われる女性の気持ちが少しわかった気がした。そして全力でツタを押さえる。俺とアイリがそんな感じで葉っぱパンツのツタの引っ張りあいをしていると急にツタが…
「ぬしよ。すまぬ」
ツタが切れた。それを見たアイリが頭を俺に下げる。俺はため息をついたあとに許すことにした。
「許してやるけどそのかわりに葉っぱパンツを作るのを手伝えよ?いいな」
「ぬしが履くものをわっちがつくるのかや?」
アイリが嫌そうに俺を見ながらそう言ってきた。当たり前だろ。お前が壊したもはお前の手で償えよ。
「そうだ。可愛らしい女の子が俺のためだけにパンツを作るんだ。なんか、これはこれで良いな」
「ぬしは真性の変態じゃ!しかし、わっちを可愛いと…。照れるではないか」
なんだろう。アイリの扱い方がわかってきたような気がする。そんなこんなで、俺とアイリはその後もくだらない雑談をしながら葉っぱパンツ作っていた。
しばらくたって、俺たちは大量の葉っぱパンツを作り終えた。当初の目的が達成できたので、街に向かうためにきた道を戻る。
道中はアイリと会話を楽しみながら歩いた。そして、周りには鳥の鳴き声が辺りに響いて俺の耳を楽しませていた。こうして、俺の葉っぱパンツ生活がスタートしたのだった。