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第2話 ハーレムと葉っぱ男

 俺がそんなことを考えていたら、キングゴリラが間合いを詰めるように飛び込んできた。キングゴリラが着地した瞬間に腕を大きく振り上げて俺に向けて拳を叩き込んできた。なんて、早さだ。俺は間一髪かんいっぱつでサイドステップを踏んだことによって回避に成功していたが、間に合わなかったら死んでいたな。


 俺は避けた俺の代わりにキングゴリラの拳が当たった大樹は幹が折れて倒れた現状を見てそう思わざる得なかった。しかし、とんでもない威力だ。


「魔導具さえあれば、このゴリラにも勝てるかも知れないのに…」


 この世界アースでは、魔導具に封印されている魔術を詠唱によって出現させることができる。俺はこの帝国最高の学院で学んだため、一通りの魔術は扱うことができるが、遥か昔は魔導具を必要としない魔法と言われる強大な力を使うことはできない。


 つまり、何が言いたいかというと、葉っぱパンツしかない俺には魔術で反撃ができない。だから、キングゴリラと腕力勝負するしかないと言うことだ。勝ちめないじゃん。俺はキングゴリラの破壊力満点の打撃を避けながら、そんなことを考えていた。


「わっちが宿っておる腕輪は大抵の魔術なら使えるのじゃが?」


 アイリさん、それは本当ですか!? はじめて、死んだ親父に感謝しそうだ。そして、家を追い出した姉貴がこんな素敵な腕輪を渡してくれたことに涙がでそうだぜ。


 キングゴリラが大地を蹴る。奴の両腕が素早く俺に向かって伸ばされる。俺を捕まえて握りつぶす気だろうな。俺は咄嗟とっさにバックステップを踏んでキングゴリラの魔の手から逃れる。そして…


「汝に風の祝福と加護を与えん。加速せよ」


 俺は自らの足を風の魔術によって加速させた。まさか、本当に魔術が使えるとは嬉しい限りだ。しかし、これで相手の素早い動きにヒヤヒヤしながら回避行動をしなくてもよくなるぞ。さてと、ここからが俺の反撃だ。


 キングゴリラが俺の動きを目で追えなくなって、キョロキョロとしているのがわかる。風の魔術で加速した俺のスビードについてこれないのだろう。所詮は獣だ。俺はさらに自らの肉体を強化するために魔術を詠唱する。


「我が肉体は鋼となる。強化せよ」


 腕輪が俺の詠唱に合わせて赤く淡く光る。この腕輪は本当に複数の魔術が起動できるのか!? 通常の魔導具は1つの道具に1つの魔術というように設計をされている。なぜならば、魔導回路の相互干渉が起こって、魔術の威力が減退し、発動すらしなくなることがあるからだ。


 さてと、ここからが反撃だ! キングゴリラよ。人間の恐ろしさを見せてやる。俺はキングゴリラが腕を振り上げて無闇に拳を降りおろすのに合わせて懐に潜り込む。


 そして、掌底しょうていをキングゴリラのあごに叩き込む。キングゴリラが俺の掌底しょうていの威力で体が浮く。俺はそれを見逃さずに無防備になった胴体に発勁はっけいの要領で突き飛ばす。


 キングゴリラは吹っ飛ばされて大地に叩き付けられる.キングゴリラをしばらくみていたが起き上がる素振りがない。


「どうやら倒したようだ。しかし、デカい図体だな」


「魔素の影響で通常の動物達が肥大化しているのかもしれぬ。この森はとても魔素が強いように感じるのじゃ」


「そんなことまで、わかるのか? アイリは…」


「ぬしはわっちを何じゃと思っておるのじゃ?」


 いや、そんなに呆れ顔で言わなくても良いだろ。ひとまず、今回の依頼は無事に解決したわけだし、あとは冒険者ギルドに戻って報奨金を貰うだけだ。


「なんだ?ゴリラ達がたくさん寄ってきたぞ」


 襲ってきたキングゴリラを倒した俺の周りにゴリラどもが集まってきた。やばい、仲間を倒した俺を集団リンチで葬り去ろうというのだろう。あの図体のキングゴリラ1匹でも苦戦したのにこの数を相手に出来るのだろうか…


「ぬしに良いことを教えてやろう。こやつらはすべて雌じゃな。なになに? ボスに勝ったから、私たちはみんなあなたのモノです? お、モテモテじゃな。ハーレムじゃぞ。嬉しいじゃろ?」


「やめてください。俺はハーレムなんていらない! 特にゴリラのハーレムなんて!!」


 嘘だろ。人類ではじめてゴリラのハーレムを所有する男になりたいくないぞ。さすがの俺でも、ゴリラのハーレムはゴメンだ。


「ほうほう、つまり、ぬしは妻を娶って添い遂げたいと…」


 アイリが何かを期待するように目を輝かせて俺にそう聞いてきた。いや、俺もそこは健全な男の子だから…


「いや、俺も男だからハーレムも捨て難いよ。でも…」


「よかったの。ぬしはすでにハーレム持ちじゃよ。末永くお幸せにの。邪魔しては悪いので腕輪の中にそろそろ戻ろうかの」


 最低な人ねと言わんばかりの冷めた視線をアイリは俺に向けてきた。俺の言葉を最後まで聞いてくれよ。俺は添い遂げたいと最後に言うつもりだったんだよ? そんなことを思っていたら、なぜかゴリラと目が合ってしまった。


「ゴリラが赤くなってる。赤くなるなよ!コンチクしょう!」


「それだけ、愛されているということじゃな。このモテキング! ハーレムを大切にしなさんせ」


 アイリはそう言ってなぜか怒鳴ったあとに俺を睨んできた。だから、俺はハーレムなんていらないからね。特にこんなゴリラのハーレムなんてさ。


「ハーレム、ハーレムって、ハーレムなんていらないよ。できるならば好きな人とずっと一緒にいたいんだ」


「そんな、真剣な顔をしなくてもぬしの気持ちはわかっておる」


「アイリ!」


 な、なんだと俺の思いはすでに通じていたのか。知らなかったよ。しかし、嬉しいな。


「本当は雌ならば誰でもよいのじゃろ?」


「いや、違うから!」


 雌ってゴリラかよ。アイリは俺とゴリラで添い遂げろと言いたいのか!? 勘弁してください。


「ホレ、その証拠にその雌ゴリラを拒絶しておらんではないか…」


 指摘された先を見るとゴリラが勝手に俺の葉っぱを捲ってやがった。しかも、俺のを見た後に鼻で笑ってやがる。なんという屈辱。


そして、ゴリラはさらに俺の下腹部を弄ろうとして…


「やめて! やめてください。雌ゴリラ。そこは俺の大切な場所だから」


 俺はそう絶叫してゴリラたちから離れるべく駆け出す。しかし、ゴリラは俺を逃がさない為なのか追いかけてくる。


「ついてくるな! 誰もゴリラの嫁なんて欲しくないわ!!」


 俺のその悲鳴にも似た叫びはこの深い森の中に響き渡るのだった。


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