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第1話 ゴリラと葉っぱ男

 鬱陶うっとうしい程に辺りは木だらけだ。周りには木以外に見えるものはないんじゃないかと言わんばかりに鬱蒼うっそうと茂る森の中で俺とアイリは彼此かれこれ7日くらい彷徨さまよっていた。


 そう、この依頼は冒険者として1週間という実に長い経験を持つ俺が難易度の高い仕事に手を出した矢先のことであった。


「今回の依頼はハード過ぎないか!? エイプマンというゴリラの群れが人里に来て

人を襲うようになったから駆除して欲しいと言われてもな。移動する群れを捕捉するのも困難だわ」


「ぬしよ。そんなものは仕事を取る前からわかっていることではありんせんか?」


 いや、アイリの言う通りでそんなことは考えれば分かることだったんだ。だが、聞いて欲しい。俺が1週間がんばって仕事した報酬がバナナ2箱だったときの絶望感! 俺はそんなバナナと言わずにいただけでもすごいと思う。本当に褒めて欲しいわ。


 そして、このゴリラ駆除依頼の欄にある好物を見た時に俺は思ったのだ。これだ! このバナナはゴリラを誘き寄せるのに使えると。本当にあのときはどうかしていたんだ。現実はそんな単純じゃないのにな。


 当然のことだけどバナナをいくら仕掛けてもゴリラは一向に現れなかった。だが、仕事を引き受けた以上は何としても探し出して駆除したいと思い、今も森を駆け回っている。


「ゴリラがいない。いないぞ!?」


「バナナを持っている。葉っぱパンツを履いたゴリラならいるがの…」


 アイリめ。葉っぱ一枚の俺をゴリラと抜かすか。手に持っているバナナを食べて、朝の空腹を満たす俺をあざ笑ってるのか? これは文句の1つでも言わないとな。


「俺はゴリラじゃないぞ!?」


「だれも、ぬしのことだと言っておらんじゃろ? ホレ、あそこじゃ」


 アイリに言われて、彼女が指差す場所を見ると俺がバナナの箱を置いていた所に複数のゴリラがいた。しかも、ゴリラの癖に葉っぱで下半身を隠している。


「俺と同じ格好をしているだと!」


 何と言うことだろうか。俺はゴリラとお揃いの葉っぱパンツを履いているではないか!? これでは俺とゴリラのペアルックと言われても否定ができないぞ。


「また、ぬしは馬鹿なことを考えておるのじゃろうな」


「失礼な! 俺はいつもまともなことしか考えてないぞ!!」

 

 俺のアイリに対する反論が絶叫となったためだろう。ゴリラ共がこちらに気が付いて近よってくる。ここら辺の普通の動物だったら人間を見たら逃げるのだが、このゴリラ共のエイプマンという種類はここら辺に元々生息していなかったためなのか反応が違うようだ。


「素手でこのゴリラの群れと戦うのかよ」


「ぬしは相変わらず。考えなしじゃな。そのための依頼じゃろ?」


 誰がこんな20匹以上もいると考えるんだよ。こんなにいたら、ゴリラ軍団だよ。俺1人が頑張っても軍団には勝てる訳がないだろ。俺がゴリラどもに襲われる恐怖に震えているとゴリラの一匹が手を顔側に向けて数回ほど折り曲げる動作を繰り返す。まるで、俺についてこいと言わんばかりの動作だ。


「どうやら、ぬしは同じ格好なので仲間と思われたようじゃな」


「アイリはゴリラの話もわかるのかよ!?」


「ぬしよ。わっちは精霊なのじゃ。動植物の声は聞こえるのが普通じゃよ」


 この世界アースは地球と勝手が違い過ぎて、俺の知識が全くと言っていいほどに役に立たないな。俺は驚きを禁じれないぜ。精霊は動物や植物の声が聞こえるのが普通だなんてさ。


「ということは、俺は本当にゴリラの仲間と思われたということかよ!? 最悪だ。おい、笑うな!」

「これが笑わずにおれようか」


 アイリはそう言うとケタケタと笑い出した。笑い過ぎだぞ。もうイヤだ。早く仕事の報酬を貰ってきちんとした衣服を買うんだ。俺はそう決意してゴリラのあとを追う。


 俺達はゴリラ共に誘われるままに森の中を駆けていく。すると森の中に少し開けた開拓跡地のような廃村にたどり着いた。


「ゴリラがたくさん…」


「もう、ぬしが手を下せる仕事のレベルじゃなくなったのう」


 そこには見渡す限りにゴリラが集団で暮らしていた。どこを見てもゴリラ、ゴリラ、そしてゴリラだった。ゴリラだらけのゴリラ村と言っても通じてしまうくらいに人間の廃村にゴリラ共が生活していた。


「確かにコレは無理だわ。もう、帰ろう」


 俺がゴリラ討伐を諦めて、セントポーリアの街に帰ろうとしたら、なぜか大量のゴリラ達がよってきて、俺に体を擦り付けてきたぞ。ゴリラに体を擦り付けれても嬉しくないわ。むしろ、やめてください。


「ふむ、なるほどの」

「なにを納得しているのですか。アイリさん、ゴリラに囲まれて動けないのですが? 彼らは何を言ってらっしゃるのですか?」

「…彼女達はのう」


 アイリの話は木々がなぎ倒される音で中断される。俺が音がした方向をゆっくりと見てみると一際ひときわと身体のデカいゴリラが俺を睨みつけながらゆっくりと歩み寄ってきていた。まるで、地球の映画に出てきたキングコングだ。いや、そこまではデカくないのでキングゴリラと呼ぶべきだな。


「グガァーーーーーー!!」

威嚇か!?急に俺の前で大声で鳴き出したぞ。手を大きく振り上げて、自らの胸を叩いてる。これは…


「ボスの座を狙う新人だと思われたんじゃないかの?」


「嘘だろ!? 俺は本当にゴリラに見えるの?」


 どう見ても、この真っ黒くて逞しい腕をしたゴリラさんたちと俺とでは、種族が違うことが分かるだろ!? どうしたら、間違えると言うのだ。


 俺の嘆きはキングゴリラには通じないらしくて、周りの木々を次々となぎ倒していく。キングゴリラが一通りに周りの木を倒し終わったあとこちらを睨みつけてきた。どうやら、次は俺の番らしい。さてと、どうなることやら…

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