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WILD SKY~彼らを繋ぐ世界の空~  作者: 立花 佑
第八話~新王に残された選択~
32/61

1.

 鱗粉を纏った馬のような動物が空から駆けてきた。

 コロッセオの表舞台ではなく、内側の中庭にいたルピナとロインは、現れたものに息を呑んだ。

 周りにいた連合兵たちも何事かと、獲物を持って身構えた。

 静かに降り立った馬はルピナとロインの前で、頭を下げた。

『ヴレイからの伝言です。戦艦への潜入に成功、ルベンスは三日後、ノイゼストに集結する連合軍を討伐しに掛かる。ロインとルピナは前線に出ぬように』

 何重もの声音によって、棒読みされた。伝言を届け終わった馬はその場で粒子となって、風に吹かれて消えた。

「今のは『妖源力』によって作られた幻獣だ」

「三日後って言ってたわね、あいつ、本当にシルバームに潜入したんだ。でも戦艦に潜入してどうするのかしら」

 膝下ぐらいの高さの花壇にルピナは軽く腰掛けて、腕を組んだ。

「僕にも見当がつかない。三日後か、取り合えず皆に伝えてくるよ」

 ロインは将校たちがいる二階待合室へと歩いて行った。

 突然現れて、突然消えた人。消えたわけではない、ちゃんと説明した上で別行動をとったのだから。まるで、夢みたいな人だ、現実にいるのにまるでいなかったみたいに。

 同じ空の下にいるのに、ノイゼストと首都は目と鼻の先ほど近いのに、ヴレイはどこか遠くにいるみたいだ。

 何を見て、誰といて、どうしているのだろうか。何も知らないから、知りたくなる。

 結局、連合軍には参加しないと分かって、しょ気ている自分に気付く。チッと小さく舌打ちをしたルピナはパンパンと頬を叩いた。

「しっかりするのよ、私! あんな奴、どうだっていいじゃない」

 自分を叱咤させるだけ、バカバカしくなり、あーあと空を仰いだ。

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