3匹目:
「生きて、いたんだ……」
病室内。
医師二人の退出から、僅かな沈黙を経て発された言葉。
その声は、ベッドの上に身を起こした少年からのものだ
嗚咽と震えの混ざったそれは、横に立つ女医に向けて、
「まだ、息をしていたんだ。傷だらけで、血だらけで……、それでも、生きていたんだ」
言いながら少年は感情を思う。
自分が、確かなものとして言葉に乗せるそれが何なのか、そしてそれの向かう先を、だ。
家族を失った悲しみか、何もできなかった事への後悔か、あるいは別の感情か。しかしそのどれであったとしても、その何もかもが、
……自分に対してのものだ。
だが、それでも問わずにいはいられない。自分の思い出した全てを以て、こちらの喪失に対して知ったような口をきく彼女に。
「なのに、どうして……、どうして」
救ってくれなかった、と最早言葉としての形を失いかけた問いが女医へ行く。
問に相対した女医は、目を伏せて腕を組み、語る。
それは、少年の知らない『現場』の話。その一端。
「我々が現場に到着したとき、君と君の妹君には息があった」
紡がれる言葉は、ただ事実だけを淡々と、
「ただし、妹君は下半身の殆どを岩塊に圧潰され、助かるのは絶望的と、ひと目でそうわかる状態だった。
対し、君自身も破片で左腕を貫かれ重傷ではあったが、まだ可能性があった」
だから、と女医の言葉は続く。
「――我々は決断したのだ」




