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ゴキ娘!!  作者: 猫派犬派
25/58

2匹目:



「お前ら先に帰ってろ」


 食事を終え、店から出たところで、後ろを歩いていた博士たちに声をかける。

 対し、博士は小指を立てた右手を、こちらの目の前に突き出して、


「何だ藪から棒に、さてはコレか! 爆発しろ!」


 などと、古いのか新しいのか分かり辛いことを言ってきた。いや、新しくはないか……。

 ……と、とにかく、


「違うわ!」


 否定の言葉を博士に送り、博士の横に立つゴキ子を見る。

 こちらの視線に気がついたゴキ子は、一度首を傾げ、


「どうかされましたか?」

「ゴキ子、博士について先に帰れ」


 ほれ、と掛け声を一つ。ゴキ子へ向けて鍵を投げる。

 ゆっくりと宙を舞った鍵を、ゴキ子が椀の形にした両手で受け止める。

 そして、掌の中にある鍵を、右の指でつまみ、目の位置まで持ち上げ、数回揺らしてから、


「これはなんですか?」

「鍵だ」


 ゴキ子の問いに、改めて彼女が人の世のことを知らないのだと思い、続ける。


「それがあれば家に入れる」

「どこからでもですか?」

「玄関からな。大切なものだから失くすなよ。使い方が分からなければ博士に聞け。あ、でも博士には絶対に渡すな。」


 最後の部分、特に力を入れて伝える。スペアを作ってないから紛失するわけにはいかず、博士の手に渡ってしまえば二度と返ってこない気がするからだ。

 使い方の説明を丸投げしておいて、渡すなと言っているあたり、少し無茶かとも思うが、ゴキ子が、こちらの言葉に疑問を抱いた様子もなく、返答をしてくるので気にしないことにする。


「わかりました」

「じゃ、一時間くらいでもどるから」


 言って、目的の場所へ向かうため二人に背を向け、歩きだそうとして、


「待ちたまえ愚民」


 博士に首を掴まれて止められた。


「なんだ?」


 顔だけを博士へと向けて問う。


「せめてどこに行くのか説明してもらいたいのだが」


 説明する前に決め付けてきた人間に言われたくなかった。

 ただ、言っていることは正論なので、


「無くなった食材の買い出しだ」


 答える。

 そして再度、歩こうとして、


「そう急ぐな愚民」


 博士の手が、こちらの首をホールドして動けなかった。

 停止したこちらを確認した博士が言う。


「私たちも行こう」

「断固拒否する」


 聞こえた言葉を即否定。

 ……これ以上面倒を起こされてたまるか。

 だが、博士はそこで引き下がってはくれない。

 博士は、首に置かれていた右手をこちらの右肩へと滑らせ、空いた左手で肩とは逆の腕を掴み、


「ふっ」


 発された音とともに、こちらの右肩は前へ押され、同時に左腕が右後ろに引かれる。

 急に力を加えられた身体は、それに対応できず、バランスを崩しながら回り、しかし倒れないように体制を整える。

 そして、


「なにしやがる」


 背後にいた博士と向かい合う形になった。

 こちらの言葉に博士は一度頷き、


「やはり人間、顔を見て話をせねばならんな。背中と会話するのは性に合わん」

 そんなことを言ってきた。


「それで、気分は晴れたか?」

「そうだな。ようやく真面な会話ができる」


 よもや博士の口から『真面』などという言葉を聞くとは、と少し驚き、口にしそうになるが、面倒事に繋がるので、必死に飲み込む。代わりに、


「買い出しに着いてくる真面な理由を言ってみろ」

「ゴキ子くんの服を買う」

「家に帰ってからはなそうな」


 博士の方に手を置いて言い、すぐに買い出し行こうとして、


「待て待て! 今のは真面目だったぞ! ま! じ! め!」


 しかし、必死な声で博士が止めてくるので、


「どうせ、裸Yシャツがどうと言い出すんだろ?」

「いや、言わん。今回は言わないから」


 こちらが呆れ声で行った返答を否定した博士は、いいか、と言ってから、


「ゴキ子くんの衣服は下着を含めて、今着ている物しかないのだ。

 昨日は私のジャージを貸すことで事なきを得たが、これから生活をするうえで、こんなことをいつまでも続けられん。今後は今日のように外出の機会も増えるだろう。まさか女の子に毎日、同じ服を身に着けさせるつもりか?」


「え、あ……」


 博士の熱弁にたじろぐこちらを無視して、彼女は続ける。


「百歩譲って、服は我慢できたとしよう。私が昔着ていた服をあげてもいい。だが、下着はどうする?

 言っておくが、ゴキ子くんは昨日から、履いてないわ、着けてないわで、胸は揺れ、てはいないか。しかし、スカートの裾からは尻が見えかけてて、かなり大変なのだぞ! 主に私の欲望を抑えるのがな!」





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