2匹目:
「さて、ひとネタ挟んだところで、裸Yシャツの話に戻ろうと思うのだが」
「いや戻らないからな」
「……え?」
「……え?」
一切の間をおかず、目を見開いた博士がそんな返しをしてきたものだから、思わず鸚鵡返ししてしまった。これはどうしたものか。とりあえず、話を戻したら最後。ひとネタどころか、終日漫才をやる羽目になる。それだけは何としても避けねば。
その為には、
「……」
その、為、には……。
「愚民、何も思いつかないのなら、下手に喋らない方が身のためだ」
見透かされている。
「ふふ、愚民の考えていることなぞ手に取るようにわかるわ。
と、私としてもこれ以上話が進まないのは困る。なので、裸Yシャツへの言及は抑え目で真剣に話を始める事としよう」
言い切り、博士は、床の上、ジャーキーを咥えたまま転がっているゴキ子へと視線を移した。
ゴキ子の方は博士の視線に気がつくこともなくジャーキーに夢中である。
ビーフジャーキー一枚で、あそこまで幸福に満ち満ちた顔ができるのは、ゴキ子くらいのものだろう。しかし、周囲の音が聞こえなくなるくらい夢中というのは問題ではなかろうか。ただ、その幸せそうな姿を見ていると、邪魔するのも悪い気がする。
「とりあえずゴキ子は無視して話を進めるが」
「愚民、君はゴキ子くんにだけ妙に優しくはないかい?」
「べつに、ゴキ子にだけ優しいわけじゃないぞ」
ただ、博士にだけ冷たいだけで……。
「今、愚民の心の中から釈然としない気配を感じとったぞ。あれか? あれだな? 失礼なことを考えたな君は?」
相変わらず、必要のない部分でだけ鋭いな……。
「気のせいだ」
「テンプレ通りの誤魔化し方だな。うむ、その誤魔化し方に免じて、今回は問い詰めないでおくことにしよう」
納得のいかない許され方だった。




