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ゴキ娘!!  作者: 猫派犬派
19/58

2匹目:初めてのお出かけ



「で、結局のところ博士は何に怒ってるんだ?」


 紆余曲折を経て、ようやく本題に入ることとしよう。と言うよりも、これ以上コントみたいなことをされては堪らない。


「決まっている! あれだ!」


 俺の正面。

 言い、立ち上がった博士は、右手で卓袱台を強く叩き、左手で横に座るゴキ子を指差した。

 その指の先、ゴキ子は笑顔だった。正座している彼女は、目と口を弓にしてこちら、正確には博士を見つめている。

 ゴキ子の表情は一見すると確かに笑顔なのだが、座布団にされたことに相当腹を立てたらしく、目が笑っていない。

 そのことに博士も気がついているのだろう。ゴキ子について語ろうとしている博士は、しかしゴキ子と目を合わせようとしていない。恐らく、このまま勢いだけで話を進め、有耶無耶にしてしまおうとでも考えているのだろう。

 だが博士の思い通りに事が進むほど世の中は優しくないわけで、


「博士、また私に何かしようというのなら、ええ、内容如何によっては噛みますよ」


 ゴキ子の一言で博士の思惑は完全に砕かれたのである。


「……安心したまえゴキ子君。この私が、君に害の及ぶことを言うわけがない。まして君に危害を加えるなどあるはずがない」


 数分前の博士に聞かせてやれと教えてやりたいが、ここで口を挟むと、また面倒な展開になりそうなのでスルー。しかし、このまま傍観者に徹したところで話が進まないのも事実。だから軌道修正のために最低限の助け舟を出す。


「二人とも一旦落ち着け。まずゴキ子、噛むのは博士の話を聞いて、内容がくだらなかったらだ、いいな?」

「わかりました」


 渋々といった様子だがなんとかゴキ子からの了承を得た。

 ……まあ、結局噛み付くことになる気もするが。


「よし、とりあえず博士は何を言うつもりだったか話してみろ」

「う、うむ、納得いかない部分もあるが、とりあえず助かったぞ愚民」

「いいから話せ」


 これ以上ややこしくなりそうなら問答無用でゴキ子を嗾けてやる。その後? そんなものは知らん。そうなったらもう放置だ。


「で、では改めて」


 博士は居住まいを正し、前置き一つ、


「愚民! 私は怒っているのだ!」


 ……まさか最初からやり直しとは思わなかった。細かい身振り、テンションまで完全再現とは恐れ入る。

 再度指さされたゴキ子も、若干驚いたような表情でこちらに視線を送ってきている。うん、あの目はゴーサインを待っている目だな。

 さて、流石に本題に全く触れずに噛み付き許可を出すわけにもいかない。ここはゴキ子に我慢してもらおう。よーし、ゴキ子、ステイ、ステイだぞ。


「……」


 どこまで読み取ってくれたかはわからないが、とりあえず通じたらしい。ゴキ子は無言でこちらから視線を外した。

 あとは博士に続きを促すだけだ。


「で、なにに怒っているのか聞いてやるから簡潔に話せ」

「う、うむでは言うぞ? 言うからな」

「はやくしろ」


 急かすと博士は、深呼吸をし、さらに息を大きく吸い込み、両の腕を大きく左右へ広げ、言う。


「なぜ! ゴキ子君の寝間着が裸Yシャツではないのだ!!」


「……」


 暫しの沈黙。

 ……あー、なるほど。


「ゴキ子、噛んでいいぞ」

 むしろ噛め、全力で。





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