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ゴキ娘!!  作者: 猫派犬派
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1匹目余談:博士の企み御風呂でのお話


 博士に連れられて風呂場に来たゴキ娘は、窮地を迎えていた。


「さあ、ゴキ子君も脱ぎたまえ」

「あ、はい。今――」

「なんなら私が脱がせてあげよう」


 原因は博士だ。

 博士は脱衣所に入った途端、ゴキ子の服を脱がせようとしたのだ。

 博士の目は妖艶な輝きを帯び、両の腕がゴキ子の纏う衣服へと伸ばされている。その姿からは完全に理性と呼ばれるものが失せていた。


「いえ、自分で脱げ――」

「私が脱がせてあげよう」

「だから自分で――」

「脱がせてあげよう」

「博士、落ち着いてください。私は自分で脱ぎま――」

「駄目だ。私が剥く。ゴキ子君は大人しくしていなさい」


 三度、説得を試みたが、それどころか言い切る前に遮られる始末。最早、説得は意味を成さない。

ならば、脱がされる前に脱ぐしかない。


「そんなことはさせん」


 だが、目論見は博士の手によって、簡単に阻止されてしまう。


「博士、手を放して下さい。服が脱げません」

「問題ない。私が脱がすのだからな!」

「は、博士!? 何故、スカートのホックを外すんですか?」

「ふふ、そんな野暮なことを聞くものじゃない。次は上を脱がすぞ」

「やめてください。自分でやりますから」


 この後、抵抗むなしく、ゴキ子はすべての衣類を脱がされた。文字通りすべての衣類を……。



 博士たちが風呂へ行ってから数分、俺は煩悩を殺すために、ひたすら読経をしていた。


「気にならない、気にならない、覗きたいなんて思ってない。」


 読経していた。


「風呂、風呂、風呂、裸、裸、裸」


 読経していた(※ 違う)。

 読経の効果は絶大だ。俺の煩悩を完全に殺しきっている。さらに、足が勝手に風呂へと向かうおまけつきだ。素晴らしい。


「胸、巨乳、貧乳、尻、太もも」


 これは読経であって断じて煩悩を吐きだしているわけではない。その証拠に俺の頭には純粋な好奇心(※ 一般的には煩悩)しかない。足だってほら、風呂場の前で止まっているじゃないか。


「これは覗きじゃない、これは覗きじゃない」


 扉へと手が伸びる。


「俺はただ楽園(アガルタ)へ向かっているんだ――」


「坂田さん、助けて下さい!!」


 扉を開けようとしたその時、全裸のゴキ子が飛び出してきた。


「お、おい」

 扉の前にいた俺は、飛び出してくるゴキ子を避ける事が出来ず―

「いった……」


 ゴキ子に押し倒される形で激突した。

 しかし、ゴキ子はそんな状態を気にすることなく、


「助けて下さい。博士に殺されてしまいます」

「お、落ち着け。話は後で聞いてやるから風呂へ戻れ!」


 この体制はまずい。


「こんな状態を博士に見られたりしたら――」

「おお、ゴキ子君を追って風呂から出てみれば、覗きを働こうとしていた愚民が、全裸のゴキ子君に押し倒されているではないか」


 見られた。しかも詳細な説明つきで……。

 というか、なんだ、その如何にも驚いていますみたいなポーズは……。


「は、博士」

「迎えに来たよ、ゴキ子君」

「私は戻りません!」

「博士、こいつに一体何をした」

「なんだ、愚民の分際で、また私を悪者扱いか。言っておくが、今回は本当に何もしていないぞ」

「だったらどうして、こいつがこんなに脅えているんだ」


 言って、ゴキ子を見る。

 ゴキ子は今、俺の首に手を回し、抱きつくような形になっている。

 あ、控えめながら柔らかいものが当たって……。


「って、違う」

「愚民、君は今――」

「か、考えてないぞ。柔らかいものが当たって気持ちいいなんて、断じて思ってない」

「君は本当に嘘が下手だな」


 何故だ。完璧に誤魔化したはずなのに……。


「さて、これをネタに君を虐めるのも悪くないが、このままいると、私とゴキ子君が風邪をひいてしまうのでな。そろそろ風呂に戻らせてくれ」

「嫌です! 戻りません!」


 ギュッとゴキ子はさらに力を込めて俺に抱きついてきた。

 ああ、素晴らし――じゃなくて。


「なあ、何があったんだ?」


 脅えるゴキ子に問いかける。

 ゴキ子は顔をこちらに向けて、


「博士が、博士が、私の体を――」

「体を?」

「――洗おうとしたんです!!」

「……は?」


 それだけ?

 思わず博士の方を見る。すると博士は肩を竦めて言う。


「だから私は何もしていないと言っただろう」

「疑って悪かった」


 まさか本当に何もしていないとは……。


「私への疑いも晴れたことだし、ゴキ子君を連れて行ってもいいかな」

「ああ、持ってけ」


 この感触を失うのは惜しいが、問題がないと分かった以上、このままにしておく訳にもいかない。


「ほら、お前もいつまでもそうしてないで風呂に戻れ」

「嫌です!」


 ゴキ子は頑なだった。

 何がゴキ子をここまで追い込んでいるのか、俺には理解できない。それは博士も同じらしい。これはもう、当事者であるゴキ子以外にはわからないことなのだろう。だから聞く。


「なぜ、そんなに嫌がる?」




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