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第52話 メイドさんへのプレゼント選び③

「彼女ですか?」


 吊革と同じように彼女の声が揺れる。線路に擦れる車輪の音にかき消されそうなほど微かな声は、それでも俺の耳に入り込んできて。


 こう、他人になんと説明すればいいかわからないな。


「彼女じゃないよ」


 間違ってない。そして俺から彼女に告白なんてしてみろ、契約違反だろ……別に契約書を確認した訳ではないけど。

 仕事でうちに来てくれてる人と恋愛するだなんて、俺の中のちっぽけなコンプライアンス意識が黙っちゃいない。


「そうなんですね……でも先輩の大切な人ってことはわかりました」


 もにょもにょと口を動かしながらは東雲は笑う。


「それで、どういうご関係です?」


「ぐいぐいくるな……久しぶりに会ったのに」


「先輩、いいですか。プレゼントというのは難しいんです。距離が離れているにも関わらず重いものを渡すと引かれますし、親しいのにしょぼいの渡すのも嫌でしょう?」


 やけに実感のこもった熱い語り口。それはまるで実体験のようで……あぁ完全に理解した。


 確かにかわいいもんな〜東雲。初めて仕事を教える後輩だからそういう目で見てなかった、というかそんな余裕がそもそもなかったけど、当時も「ラッキーだな、かわいい子で」とか言われてたっけ。


 関係ないだろ、仕事教えるだけなんだから。代わりたいなら代わってやるぞと言うと、みんな決まって目を逸らすのだ。そりゃそうだ、自分の業務で手一杯だもんな。


「あー……苦労してんだな」


「ほんとですよ!会社って仕事するところじゃないんですか……」


 そんなこと男性の前で堂々と言うもんじゃない。というか男として見られてないのか。

 まぁでも彼女なら選びたい放題だろ。


「うーん、関係な〜難しいな。お世話になってることは確かなんだけど」


 まさかうちのメイドですとも言えないし。


「どれくらいの頻度で会ってるんです?」


「………………ノーコメントって許される?」


「何にも選べないじゃないですか、ほら!キリキリ吐いてください」


 いくつかの駅を通り過ぎて、そろそろ目的地。


「まぁそれなりの頻度ってことで許してください」


 本当は毎日だけど。


「それなりの頻度……?うーん、家族、親戚、、、?会社の人じゃないよね……」


 なにやらぶつぶつと呟いている東雲。


 やがて電車が止まって俺たちは外へ出る。


 プレゼント探しの場所に選ばれたのは、百貨店でした。しかも駅直結というアクセスの良さ……百貨店が駅から遠いことは無いか。


「そのお相手の方ってアクセサリーはつけるんですか?」


 思い浮かべても頭に現れるのはメイド服の彼女。アクセサリーなんて……頭に着けてるホワイトブリムくらいか?でもあれって外じゃ着けないしなぁ。


「普段はつけてない、と思う」


「ふんふん、そしたら好みがわかんないのでピアスとかネックレスはやめましょっか」


 そう言いながらエスカレーターでどんどん上がって行く。やっぱり東雲に着いてきてもらってよかった。

 自分のセンスが壊滅的なのはわかっているから、一人で選ぶと喜んでもらえるか不安なんだよな。


「それじゃ、どんどん候補しぼっていきましょー!」


 やけにテンションが高い東雲は、エスカレーターからぴょんっと飛び降りた。

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