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第39話 メイドさんと実家帰省⑤

 大きな門を抜けて玄関へたどり着くと、彼女は躊躇なくドアを開けた。

 最初に目に入ったのは吹き抜けに螺旋階段、どこかで見たことがあるような彫刻、そして、


「おかえりなさいませ、お嬢様」


 彼女と同じように、綺麗に礼をするメイドさん。

 あ、彼女のことをメイドさんって呼ぶとかがりと混ざってややこしいな。


「ただいま、かなめさん!」


 だっと駆け出してメイドさんに抱きつくかがり。


「お久しぶりでございます、かがりお嬢様……と、慧様でお間違いないでしょうか?」


 軽くかがりをいなすと、ぽんっとエプロンを叩いてこちらへ向き直る。


「はい、はじめまして、本日はお世話になります」


「ご丁寧にありがとうございます。このお屋敷のメイドをしております、かなめと申します。さて、お伺いしたいことは沢山ございますが、皆さまお待ちですのでこちらへどうぞ」


 洗練された動きで奥の扉を示される。お屋敷って言葉、現実で初めて聞いたぞ。


 ふわふわのスリッパに履き替えてかなめさんの後を追う。久々に会えたからか、かがりも楽しそうだ。

 ご機嫌オーラ全開のところを見ると、かなめさんのことが大好きなんだろう。


 かなめさんがずっしりとした扉を開くと、柔らかな光が視界を覆った。

 現れたのはとんでもなく広いリビング、柔らかそうなソファには並んで影が2つ。


 厳粛な雰囲気の男性と柔らかい雰囲気の女性、その顔を見た瞬間に確信する。絶対かがりのご両親だ。

 表情が似ているのだ、ツーンとしている時の彼女と、甘える時の彼女と。


 思わず上がってしまった口角を理性の力でねじ伏せて、ソファの後ろで礼をする。


「はじめまして、かがりさんとお付き合いさせていただいております、藤峰と申します」


 初対面のご両親の前で呼び捨てなんてできるかよ。


「よくいらっしゃいました、かがりの母です。どうぞお掛けください」


 まるで何年かぶりの面接のような雰囲気に、普段は入ることのない洗練された部屋に緊張する。


 恐る恐るソファに腰掛けるが、かがりは俺の後ろに立ったままだ。


(かがりさん、横!)


 小声で話しかけて初めて彼女はハッとしたような顔で隣に座ってくれる。

 ここではメイドじゃなくて娘さんなんだから……!


「よく来てくれた、かがりの父だ。今日はゆっくりつくろいで欲しい」


 それだけ言うと、彼は俺たちが通ってきた扉から外へと出ていった。

 何かまずいことをしたか、と思考を巡らせていると前から助け舟が出る。


「ごめんなさいね〜、うちの人、かがりが男の人を連れてくるなんて言ってたから緊張してるのよ」


「お父さん、めんどくさいね」


 ため息混じりのかがりの声を聞いて肩の力が抜ける。どうやら出会って即嫌われた訳ではなさそうだ。


「食事の時にはあの人もいろいろ聞きたがるから、先に私に聞かせて?たとえば職場でのかがりの話とか」


 そうやって笑うお母様の顔は、かがりが俺を揶揄う時とそっくりだった。


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