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第22話 メイドさんとお弁当②

「それでは行ってらっしゃいませ、ご主人様」


 しっかりお弁当を受け取って、出勤。今日も今日とてメイドさんのお辞儀は綺麗だ。

 あれってどこかで練習したんだろうか、なんてどうしようもないことを考えていたら、いつの間にか会社に。


 忘れないうちに冷蔵庫へお弁当を入れて席に着く。


「あれ?お前今日弁当か?」


「そうなんだよ、昨日の晩ご飯残っててさ」


 もちろんメイドさんが作ってくれただなんて言えるはずもない。それでも、自分が作ったかのように騙るのは少し後ろめたい。


 「ふーん」と興味無さげに返事をした同僚を尻目にPCへ向かい合うと、俺は電源をつけた。


◆ ◇ ◆ ◇


 短針が回ってお昼、やっとお弁当を食べられる。普段はそんなことを考えもしないが、早弁してやろうかと思った。


 いそいそと冷蔵庫から弁当箱を取り出してレンジへ、はやる気持ちを抑えながらオレンジ色の光に照らされて回る弁当箱を見る。


 普段はふらっとコンビニの袋を持って帰ってくる俺がずっと事務室にいるからか、周りからは「なんだこいつ」みたいな目で見られているが気にしない。


 ピーッと音が鳴る前にレンジの蓋を開けて、ほどよく温かくなった弁当箱を抱えて自席へ戻る。


 手を合わせて蓋を開ければ色とりどりの宝石たち。

 玉子焼きにウィンナー、サラダに昨日の肉じゃが、お米には海苔と梅干し、ミニトマトにブロッコリーなど彩り豊かだ。


 昨日の残り物だけだと思ったのに……想像以上にメイドさんは手の込んだ料理をしてくれたらしい。


 混ざったような、それでいて統制のとれた香りが食欲を刺激する。思わずごくりと喉を鳴らして、俺はお箸に手を伸ばした。


◆ ◇ ◆ ◇


 はぁ、幸せな時間だった。こんな充足感を会社で得られるなんて、メイドさんには頭が上がらないな……いや、それはいつものことか。


 弁当箱を給湯室で洗っているとポケットの中でスマホが震えるのを感じる。

 きゅっと蛇口を回してハンカチで手を拭いてからスマホを取り出した。


『ご主人様、お弁当はいかがでした?』


 まるでどこかで俺のことを見ているかのように完璧なタイミング。


『パーフェクト美味しかったです』


 細かい感想は帰ってからにして、今は精一杯美味しかったことを伝えるとしよう。

 

『よかったです、ご褒美は期待しても?』


 何にしようか。この前はケーキを買って帰ったし洋菓子は家にあるし……。

 駅前のシュークリームなんてどうだろう。


『もちろん』


 さて、店が開いている間に帰らなければ。

 洗い終わった弁当箱を水切りカゴに入れて、俺は自席へと歩き出した。

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