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龍...

2人はサフラナティア名物であるデザーム料理の店に来ていた。宿を出てから2時間やっと入れたその店の比較的涼しい奥の席に座りながらアリオンが文句を言う。

「朝メシが昼メシになっちまうよぉ〜」

「まさか俺もこんなに並ぶもんだとは思わなかったぜ...。」

デザーム料理といっても要は刺身である。しかしそこをグッと一段階レベルアップさせるソース、それが、サフラーンである。もはやデザーム料理店の優劣は使うサフラーンの差で決まると言っても過言ではない。「くっろ、このソース。」

すこし赤みを帯びた黒のソースを見てアリオンが言う。

「これがサフラーン。デザームの魚醤だよ。」

とカイが説明した。

「はぇー。」

一口舐めると

「辛っ。」

想像と違う味に声が出る。優しい塩気の中にガツンと食欲を刺激する辛さがある。

「これノキスミールから米持ってきたくなるな。」

砂漠に米はない。

「それはそう。」

カイも同意見らしい。



昼頃1日半分の食料と水をラカの背に乗せ出発した。ラカは荷物の運搬にも最適だ。ウマよりも大きいのでたくさん乗せられる。道中デザームが遠くで跳ねたり、昨日のように砂の壁を作っているところを何度か見かけたが襲われることもなく砂漠を抜けることができた。植生はすこし熱帯のような雰囲気だが緑の大地はノキスミールを思い出させる。随分遠くまできたものだ。

「そういやあ昨日から気になってたんだけどその弓どうなってんの?」

と聞くと

「これか?これは両端の滑車で張力を強くして矢のパワーを上げてるんだよ。俺とおじさんのオリジナルだ。」

複雑なことは分からないがどうやらすごいものらしい。黒鉄色の矢も専用のものなんだろう。何せ矢筒にその矢は3本しか入っていない。などと言うことを話していると湿度が高いからだろうか日が落ち冷え込んできたことで霧が立ち込めてきた。と思ったのも束の間ものすごい冷気で辺りが真っ白になる。寒さでラカの動きが鈍くなる。まるで雲の中にいるかのようだ。寒気に耐えながらも進むと、ジャングルのように森が深くなっていたはずの風景はいつの間にか開けた場所になった。立ち込めた濃霧の中からヴォーンという体が震えるような重低音を響かせながら巨大な顔が出てきた。あまりにも巨大すぎるその白い顔はその全体像を捉えられないほどだ。人ほどもあるその大きな眼でこちらを見つめる。その目は俺たちのバックパックを見てすこし笑みを浮かべた気がした。ギリギリっと言う音がしたと思えばカシャーンという音と共に3本の黒鉄色の矢が放たれていた。キーンという甲高い音を立て3本の矢はその大きな目の前の何もないはずの空間に阻まれた。


 〜古からの星の輝きに導かれて進むものよ、正しい道をすすめば或いは...星の海には一つ目が眠る〜


白い巨大がヴォーンという重低音を響かせ飛び上がり、その全体像が顕になる。背中に光輪を背負ったその姿はまるで足の生えた鯨のようだ。濃霧が一気に晴れるとその巨体も跡形もなく消えて無くなっていた。「龍...。」

カイがつぶやいた。聞き馴染みのない言葉と信じられないような体験に半ば放心状態の俺をよそに。カイは冷静に矢を拾い集める。すこし悔しそうな顔をしていたのは気のせいだろうか。



「今日はもうここでキャンプを張ろう」

とカイが言う。

「そうしよう...。」

落ち着きを取り戻す為なのか2人はどちらからともなくスープを作っていた。デザームのフカヒレをサフラナティア原産の香辛料をいくつか混ぜて作ったスープに入れていただく。温かいスープが文字通り寒気のするような体験に動揺した心と体を暖める。落ち着きを取り戻しあの怪物の言葉に考えを巡らせる。

サザリオンには一体何があると言うのだろうか...。


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