星の平原にて
アリオン…現在、所持金5万r
「よーし今日のお仕事は?」ルルファアンの討伐報酬で気分上々のアリオンが聞く
「前回はイテルスターの方に行ったからな今回は反対側の星の平原方面にでも行くか?」
「星の平原かぁー。ハイスクール時代に演習で行ったことはあるけど...カイはよく行くのか?」
「へぇ、お前ハイスクール出てるのか、意外と良いとこの出なんだな。まあ平原はいい狩場だからな。見通しがいいから安全性も高い。」
「そういやあカイはどこ出身なんだ?」
「俺はここから東南方向にに星の平原を越えて森を抜けたさらに向こうティライオンとの国境付近にあるミラヴィア、交易都市の生まれだよ。」
「交易都市かぁ行ってみたいな。」
「そのうちな、兎に角今回は星の平原まで行こう。」「そうだな。」
ギルドの受付ホールには大きな掲示板がある。フィロールは首都だ。それだけにモンスター素材の消費量も莫大でギルドには沢山の素材発注があり、その分を討伐依頼として掲示板に素材の時価が常に掲示してある。そのほか季節によって大量発生するモンスターについても討伐依頼が掲載される。掲示板を見つめていたカイが口を開く。
「今回はポーラーホーンの討伐にするか。」
ポーラーホーンは鹿型のモンスターだ。春になると動きが活発になり縄張り争いのため交戦的になる。厄介なのは群れで動き、キャラバンなどを敵対する群れと思い込んで攻撃を行うことだ。しかし一体ごとの危険度はそこまで高くない。
「どうだ?二回目の仕事としてはいい難易度じゃないか?」
「いいね」
ポーラーホーンならハイスクールの演習でみたことがある。初仕事でレアモンスターを討伐した俺ならすこし余裕がありそうだ。
遠出になるのでついでにハイスクールの野外演習の護衛も引き受けた。
ハイスクールのキャラバンに揺られていると懐かしき青春時代を思い出す。と、言ってもまだほんの2年とすこし前のことだが...。友人たちは半分以上そのままイテルスターカレッジに進学した。
「あいつら、どう過ごしてんだろうなぁ...」
そんなことを考えているうちに星の平原に到着した。
道中何もなかったが報酬は行きと帰りにキャラバンに乗せてもらうことなので吊り合いは取れているのだろう。平原で演習といってもハイスクールのキャラバンがキャンプを敷くのはフィロール側の浅い部分だ、街道に近く安全性は高い。護衛とはいえ夜まではキャラバンと別行動することが許可されている。
「よっし、行くかー」
とカイがキャラバンの荷台から飛び降りる。それに続くように俺も飛び降りた。10分ほど歩いただろうか。段々とモンスターの気配が増してきている気がする。すこし警戒を強めながら進む。足元をポーラビットが走り抜ける気配があるが今は無視だ。なぜなら俺たち二人は冒険の必需品、マジックバックを持っていないからだ。あんな高いもん買えるかぁ。素材も余計なものを拾うわけにはいかないのだ。とは言え今回は討伐だ。最低限ポーラーホーンの角を持って帰るだけなら問題ない。この距離ならキャラバンまで何度か戻ることもできるだろう。
キラッと何かが背の高い草の向こうで光った。間違いない、ポーラーホーンだ。
「あいつ狙うぞ」
カイが小声で言った。矢をつがえる。俺も抜剣して身構える。ヒュンッという音でカイの矢が風を切り裂きポーラーホーンへ放たれる。ドスッと鈍い音とキュオォンという鳴き声、矢は後脚に当たったようだ。すかさず飛び出し剣を振る。カツーンという音がして剣が弾かれた。ポーラーホーンが角で剣を受けたのだ。怯まずもう一度力を入れる。剣が首に入る。手応えがあまりなかったが、ポーラーホーンの首は落ちた。討伐だ。輝く角に反射したのか、二回目の攻撃、剣が微かに光った気がした。
「もう日も落ちてきたし、終わりにしよう」
「いいぜ大漁だここらへんでやめとこう。しかしアリオン、やっぱり見どころあるんじゃねえか?いい剣捌きしてると思うぜ俺は。」カイが褒める。
「そうでしょうそうでしょう。」
今日もよく眠れそうだ。