表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

勇者が魔王に挑む、らしい。

森で一晩身体を休めた勇者パーティは意を決して城へと歩みを進める。

この勇敢な面構えと雄大な雰囲気を持つもの達が、別に大して強くないし何も成し得てなんていないとは誰も思うまい。


目論見通り四天王戦が進む度に彼らはその対立に疑問を持ってくれた様で、この調子ならば俺の仕事はなさそうだ。


ならばよい。

その方がよい。


四天王最後の相手との友情も結び、いよいよ魔王戦だ。


後ろには囚われの姫がいて、それを見た勇者の心のボルテージも上がっていく。

もし本当に神のお告げだか加護だかがあるのであれば、光り輝く場面だろう。

剣が身体の周りのオーラあたりが。

当然光ったりはしてないけど。


魔王は相当器用らしく、単体戦闘力がとんでもないその力を使って互角の戦いを演出してくれる。

マジで強かったもんなぁ。

俺と団長二人合わせたよりも強いんじゃないかってくらいだった。


見ていると痛いけど大怪我も致命傷も負わない絶妙な力加減で感心してしまう。

俺も後で稽古を付けてもらいたいくらいだもの。


やや勇者が不利になったタイミングを見計らい、間に割り込んで助太刀する四天王の男の亜人。


これは熱いシーンだろう!


…いや、本当は人間なんだ。

あれ兜で顔を隠しているだけの団長だし。

ただ毛深くて、ムッキムキに鍛えている為に獣の様に見えちゃうだけだ。

部下思いで優しい団長なんだけどさ、あまりにゴリラが過ぎるだけなのだ。


あれ?コイツはもしかして人なんじゃないかと少し疑ってあげて欲しかったところではあるが…美味しい酒を買って来てあるから、後で渡そう。


戦闘の間に挟まれる同情すべきストーリー。

勇者達がそれに呑み込まれ、魔王の目的、つまりは亜人の独立と人間との交流に理解を示して戦いは終わった。


「俺が…!

俺達が架け橋になってやる…!


…だから罪のない姫様を返してくれ。

人質が必要なら俺がなる。

説得が必要なら俺がする。


…だから!」


いやぁ、感動的だね。

姫も感動した様子で両手を握り見惚れている。


「勇者様…!」


だってさ。

アンタちょっと太ったよな?

どんな自堕落な生活してたんだよ、ここにいる間に。


見えてんだよ、ボタンを二つ外したドレスのスカートがよ。


分かり合えたところで返還されたムチムチの姫をその腕に抱えて勇者は誠の勇者となった!


これはドラマチックだろう!

文句なしに!


とっとと帰れ馬鹿。


彼らが帰路に発った後に、協力してくれた魔王に国交が何とかなりそうだという王の意向を話しておいた。


後に文官がやって来て細かい打ち合わせがあるから、魔王城改め、亜人国の本当の戦いはこれからであろう。


こんな茶番に付き合ってくれた彼らの今後に幸あれと思う。


本当にすいませんでした。


帰国すると姫の帰還パーティーが行われており、勇者が高い所で手を振っている。

いやぁ、めでたいねー。

このお祭り騒ぎで経済も良く回ることだろう。


これから彼らはどうなるのだろうか。

増長されても活躍されても邪魔なのだがなぁ…。

亜人国の駐在員として働いてくれるのが理想的なのだが。


しかしながら、そんな懸念はすぐに解決した。

新たな戦いだか人助けだかを求めて、勇者は直ぐに何処かへと旅立ったのだった。

あんまりアレなら暗部か俺に王から命令が行っただろうから一安心である。


…いや、一安心か?

今後は本来の実力でやって行かなくてはならないのに。

もしこの勇者の話が物語となりその続編が出るならば、何故だか戦闘力が初期化されてしまっていることだろう。


まぁ、よくある話だ。

過去の英雄が仲間になると意外と強くないとか、そんな話は。


神のみぞ知ると言った所だよ。

お告げとかあって来たんでしょ?

大丈夫大丈夫。


これで俺の仕事も終わり、騎士団も通常業務に戻っていく。


…今回は疲れたな…。

数日の休暇を貰い、ゆっくり釣りでもして過ごそうと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ