表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

勇者は才能がある、らしい。

「正義の剣をくらえ!」


はいはい。くらいますよ、仕事なんでね。

よく見ると勇者の装備が少しだけ良いものになっているなぁ。

ウチの王様が渡した剣は、彼らが襲いかかって来ても斬られたりしない様に銅製だったと聞いているし、どこかで買い換えたんだろう。


さて、腕前の方はどうかな。

勇者は誘うままに攻撃を振るってくるが、カキンカキンと数度打ち合ってわかってしまった。


んー…って感じだ。


まだ若い様だし伸び代はある。

筋も悪くない。


…ただなぁ、こっちは十何年も対人戦ばかりやって来たんだよなぁ、お告げだのなんだので旅に出たとかの村では力自慢でした程度の奴らには負ける気がしないやね。


国の拳闘士のチャンピオンが言っていたのだが、何故か格闘技だけは素人が自分でも勝てると思い込んでいることが多いという。

他のスポーツは全然そんな事ないのに、何故か格闘技だけ喧嘩の延長線上にあると思われている様なのだ、と。


格闘技もスポーツも、どっちも幼い頃から専門的な教育を受けて、プロになった後にも更に勝ち抜いて来たというのは変わらないのにだ。


無理よ、そんなの。

可能性なんてないって。


それは兵士にも言えるってもんだ。


素人に毛が生えた新兵ならまだしも、俺達の様に近衛にまでのし上がる様な奴にはちょっとやそっとの才能で勝てる訳がない。

もしも世界一の才能があろうが、先人達の知恵と経験でブラッシュアップしてきた最先端の戦闘技術には勝てないっつーわけ。


剣を握れば強くなった気がしちゃうんだろう。

それは分かるよ。

ガキの頃初めて木の枝を拾った時は、俺もそんな気分になったもんだ。


とはいえ今回は勝つ訳にはいかない。

拗ねられても、怪我をされても困るからね。


丁度良いタイミングで逃げ出さなくてはならない。


一応腕の立つ奴らを選んだので心配はないが、部下が怪我をしていない事を確認してから、勇者パーティの体力が尽きたタイミングで走って逃げた。


部下が怪我してたら一人一発ぶん殴ろうかと思っていたし、部下のトレーニングも5倍にしていたところだが、そうならなくて本当に良かった。


当然彼らは追って来ることはない。


というか追えないよね、打ち合った後に走るだなんて相応の訓練をしてないとできないんだから。

それこそ兵隊訓練でやるようなね。


「…新兵で入って来たら、3年後には使い物になるだろうと期待する、くらいの実力でしたね。」


自慢の部下の勇者パーティレビューである。


これは中々の高評価だよ。

星3.5ってところかな。


彼も近衛になる程のエリートでなので、物心ついた頃には親にしごかれていたクチだ。

朝から晩まで親父にバシバシと打ち込まれ、学校に通っても友達なんて作る暇もなく剣を振ってきた奴である。


兵士学校へ入学すれば、敷地の外から親父が見張っていて帰宅後に問題点なんかをまとめられていて、訓練でヘロヘロになった後に更に扱かれてきた人生である。


そんな彼から見て、たった3年でなんとか戦える様になるだろうというのだから、素晴らしい評価じゃないか。


まぁ腕っぷしだけの話で、捜査や治安維持、戦術や戦略なんかも身につけなければならないので、お世辞の部類なのだが。


村にいたら助長するくらいの才能と実力はあったって訳か。


俺から見ると一つだけ素晴らしい所があったな、そういえば。


顔が良かった。

あれなら姫もチェンジとは言わないだろう。

一安心だ。


連れて行ってから、コレじゃないって言われるのが今の所一番怖い。


そうは言われましても、当店ではコレが勇者なんでございますって言って納得する様な女なら、もっと早くに帰路についているって話よ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ