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勇者が盗賊退治をする、らしい。

マズイことになった。

群れは我らが避けてしまったので普段と違う位置にズレてしまって配送を遅らせたのだ。


やっちゃったね、こりゃ。


ならばそろそろ牛達が元の位置へと戻って、配送が普段通り始っている可能性がある。


まーた勇者を先回りして、商人を隣町へ戻す必要が出てきた。

成功体験を簡単に積ませたくないからって、我らの仕事が増えるもどうなのよ、とは思うけどね?

他に数十分の会議でいい案が出せるなら出してるって話やね。


うまくいかない時は本当にうまくいかないもので、商人は兵士の命令だからと言って素直に従ってくれる訳がない。

奴らは金か利益でしか動かない。

今回の場合は単純に納期を意味なく遅らせろって言っているのと同じだから当然なんだけど。


早馬の部下が戻ってくると、やはり想定通りに途中にある盗賊の根城をどうにかして欲しいと伝言を預かってきた。


流石は商人さんで、軍の仕事の内の治安維持となると断りづらいし、向こうへの貸しにもならない丁度いいお願いだ。


いや、ここでは我らの仕事ではないか。


でもなぁ、協力して貰った以上は、お宅の領内に盗賊がいますよ、だから早く片付けてって言ってるよ。


なんて報告をこの国の王にする訳には行かないわな。


面倒だが中隊を派遣して盗賊退治だ。


盗賊は30人規模といった所で、そこそこの大所帯だったが、こっちは250人派遣しているのだ。

ほぼ8倍もの人数差があれば負ける訳ない。

それで勝てる様な奴が盗賊にいるなら、いくらでも払ってやるからウチで働いて欲しい。


商人も交渉通り大人しく戻ってくれた様で一安心と言った所だ。

勇者も無事この国へやって来て、やはり帯剣したまま王城へと伺い、タダで船に乗せてくれと無茶苦茶を言って来たらしい。


君らね、俺たちが先回りしてなかったら門で首を刎ねられても文句言えないからね。


幸い先回りした甲斐もあり、打ち合わせ通り勇者をお使いにいかせる事に成功した。

と思いきや、勇者が町から町への移動途中に盗賊の根城の方へと進路を変えた。


おそらく酒場かどこかで盗賊の噂でも聞いたのだろう。

世直し旅だと思っている彼らは、道すがら盗賊退治と洒落込もうって訳だ。


スマートに解決したばっかりだというのに仕事を増やしやがって。


大体4人で30人規模の盗賊団を何とかできると思っているのか。

盗賊と兵士の数が8倍あるから余裕だねって言ってたのに、勇者と盗賊の人数差も8倍ある。


無理だって。

君ら猟師なんだから、罠とか張っている人間相手に地の利も人数差も負けていて勝てる訳ないだろう。


しかし、閃いた。


ふわっとした推測でしかない勇者の実力をきちんと測っておきたい。

ここで俺と数人の兵士で待ち構えて確かめてみようではないか。

それによっては、この先フォローの仕方が変わってくるという物だ。


幸い盗賊の服などは掃討して空っぽのアジトに置き去りだから成り代わろうと思えばすぐ実行可能だ。


俺と3人の精鋭はボロボロの盗賊の服に着替えるが、臭いがキツく、本当にしんどい。


これも仕事と割り切るしかないが、部下にこんな指示をしなくてならないのが悲しい。

優しい副団長としてやっていこうと、パワハラとかセクハラにも気をつけていたし、無理な命令もしない様にしてたのに。


あ、皆、顔も隠してね。

後の任務で接触する可能性があるし、全部終わった後に顔を合わせるかもしれないから。


怪我などしてはつまらないので、念のため後ろや上も警戒しながら待機していると、なんと真正面からやってきやがった。


「この辺りで暴れている盗賊団はお前達だな!俺が成敗してやる!」


そう叫びながらドアを開けた彼らの辞書には、忍ぶと言う字はないようだ。


…辞書そのものすら無さそうだが。


いい加減さ、色々疑問に思ってくれてもいいのだが。

都合が良くねって。


彼らに合わせてこっちも4人だ。


たった4人では盗賊団とは言えないだろうし、この人数ではこの辺りで暴れているなんて認識をされる程の悪事を働くのは困難だ。


逆にそう出来てしまう程の盗賊ならば、勇者なんかより全然厄介なのだ。


分かってる?

分かってないよなぁ…。

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