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コイツが勇者、らしい。

初めに取り掛かるべき国交についてのやりとりを、文官に持ち帰って案件を託した結果、彼等の何人かに魔王国へと行ってもらうことになった。


手紙も書かないとね。

勇者が行きますって向こうさんは知らない訳なんだから。


ごめんな、俺も出張させるのは心苦しいんだけど、どうしようもないのよ。

あっちにはウチの団長がいるからさ、助け合って温め合って下さい。


なんとかして勇者とやらを辿りつかせるので、始めは強くあたって、あとは流れで負けてほしい。


そんな内容の手紙だ。

書いていて悲しくなってきたが仕事だ。

ここで辞めてやろうか、とも思っちゃうが、給与が高いのよ、この仕事。


我慢するのよ副団長!


ついでなので、黒色に金の刺繍を入れたマントを贈り、人の目からみてそれっぽい格好をしてもらうことにした。


彼らの文化での悪そうな格好と、我らの文化での悪そうな格好はやはり違う様だったので、対面した時は面食らった。


肌を見せる事が強者の証らしく、魔王は全裸だったのだ。


確かにそうかもしれない。

鎧などは身体の弱さを隠す道具だ。

裸で強いものは強い。

何とわかりやすい事だろう。


しかし、集中力は削がれたと言わざるを得ない。

戦うたびに揺れる魔王の魔王に何度笑ってしまいそうになったかわからない。


もしかして作戦だったのか?


もしも向こうの文化に合わせるならば、我が王も調印の時は全裸にならなくてはならないのだろうか。

今のうちに身体を鍛えておく事をおすすめしたいところである。


さてさて、騎馬隊1500人を率いて勇者に追いついたところ、遅々として進んでいない事がわかった。


そこらの野生動物を狩り、その皮や金銭になりそうな物を売って旅の資金にするなどという、原始時代の様な事をしているのだから当たり前だ。


それにしても彼らは運がいい。


この地方には小規模の群れをなす動物と、何千もの大規模な群れをなす動物がおり、後者とは出会っていない様だったからだ。


いくら武器を多少扱えるとはいえ、数の差はどうにもならないのでもう死んでいる可能性も考えたのだが、一安心である。


まぁ、彼らがダメならその辺で見目のいい役者を雇って姫を助けさせるだけなのであるが、もし役者に完全に国の恥部を知られてしまった場合と、純真無垢な何も考えていない村人異常者との後のトラブルを考えた時に、後者の方が政治的な知恵が回らない分問題が少ないとの結論がでたので、出来れば彼ら勇者に辿り着いてほしい物である。


そんな理由で旅立った奴らなんて、もしなんらかの理由で退場頂いたとしても、騒ぎにはならないしね。


斥候の報告で大規模な群れが勇者のいく先とぶつかりそうとの事なので、500の兵を出して群れを退かせる作戦行動を命令し、一部の兵が出撃した。


数の差ではこちらが不利だが殺す事が目的ではなく、野生動物をルートの外へと追い立てるだけなので問題はないだろう。

野生動物だって無闇に傷つきたくないもの。


勇者は無事にその地帯を通り抜けて海沿いの街へ辿り着いた様だ。


大量の足跡などに疑問を持たないのだろうか。

不思議である。


海を渡る事が出来れば魔王国のある大陸へ移動出来るのだが、彼らは勇者と名乗りながらもその実態は猟師である。


地元の知り尽くした地ではまだしも、初見の土地で高価な船代を稼ぐ事など何年かかるかわからない。


モタモタされていては姫が、またどんな我儘を言い出して彼方の王を困らせるだろうか心配だ。


それにどうせあの異常者達は、我が王の時の様に意味もなく港町の王城へ帯剣したまま乗り込み、船に乗せてくれと戯言を吐くのだろう。


あんなのでも一応我が国民なので、問題になっちゃったら困るし、そんなクソみたいな成功体験を積み重ねられても困るので、先回りして港街の王城へ行き事情を話した。


話の分かる王様と会議を行った結果、取るに足らないお使いをして貰って、その対価に船に乗せようという話に落ち着いた。


丁度隣町に注文している香辛料の配送が、牛の群れを避ける為に遅れているという。


…え?

遅配の原因ってそれなの?

マジでごめんなさい。

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