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ビフテキの賭け

#### 第一章:仕掛け

春の陽気が漂う3月のある日、彩花は自室の机に座り、手作りアクセサリーを手に持っていた。原価2000円のビーズとワイヤーで作ったネックレスだ。彼女はフリマアプリでこれを5000円で出品していた。ささやかな副収入を得るための小さな挑戦だった。


ある日、彩花は驚くべき発見をした。大手通販サイトで、誰かが彼女のネックレスを15万円で出品しているのだ。写真はフリマアプリのものと全く同じ。まだアクセサリーは一つも売れてないので明らかに「無在庫転売」――在庫を持たず、注文が入ってから仕入れる手法だ。彩花の頭に、あるアイデアが閃いた。「これ、利用できるんじゃない?」そして、大手通販サイトで15万円のネックレスを自ら購入した。そして彼女は即座にフリマアプリのネックレスの価格を10万円に改定した。


転売屋の作戦はこうだ。大手通販サイトで15万円のネックレスを出品。転売屋は15万円で売れたらフリマアプリで私のネックレスを購入し、私から受け取る。受け取ったネックレスを大手通販サイトで購入した人の元に送って差額の利益を得る。今回のフリマアプリのネックレスの価格は元々は5000円。大手通販サイトのネックレスの価格は15万円。14万5000円から送料や手数料などを引いた利益が入る...はずだった。


フリマアプリの10万円に値上げしたネックレスに転売屋から注文が入ったので発送した。10万円でも利益になると判断したんだろう。その数日後、彩花の手元には15万円で買ったネックレスが届いた。送ったものと全く同じものが同じ状態で届いた。ここから彼女は転売屋を出し抜くため計画通りに動く。彼女はこの計画を「ビフテキ作戦」と名付けた。なぜビフテキか?「美味しい儲けが味わえるから」と、彩花は笑った。


#### 第二章:破損の波紋

数日後、計画は順調に進んだ。フリマアプリの10万円のネックレスのやりとりは順調に終わり転売屋が受け取り評価を済ませた。彩花のアカウントには手数料などが差し引かれた8万9000円が振り込まれた。一方、大手通販サイトから届いたネックレスに彩花は目を疑った。ネックレスの一部にヒビが入っているではないか。


「何!?転売屋が私の商品を送ったはずなのに、なんでこんな状態なの?」彩花は混乱した。もちろん演技である。20日後、大手通販サイトに返品を申請した。出品者は予想通り拒否してきたが、彩花は「商品が破損していた」と強調し、サイトの保証制度を利用。攻防の末、15万円が返金された。彼女はほっと胸を撫で下ろした。これで純利益は8万7000円。ビフテキ作戦は成功したかに見えた。


#### 第三章:脅威のメッセージ

だが、平穏は長く続かなかった。フリマアプリに購入者からメッセージが届いたのは、取引終了から4週間後のことだ。


「購入したアクセサリーが破損していたため、直ちに返品を求めます。返品を許容しない場合は法的処置も検討します。」


攻撃的な文面に、彩花は背筋が冷えた。「破損?評価した後に言うなんておかしいでしょ。法的処置って何!?」彼女は動揺しながらも、冷静に対応を練った。フリマアプリのルールでは、評価後は取引完了。返品は原則受け付けられない。ましてや4週間も経っている。


彩花は丁寧かつ毅然とした返信を送った。「受け取り評価から時間が経過しており、発送時は問題なかったことを確認しています。ご納得いただけない場合は事務局にご相談ください。」内心では「訴えるなんて面倒なことしないよね?」と祈る気持ちだった。


#### 第四章:決着

購入者はさらに食い下がってきたが、彩花は動じなかった。彼女は発送時の写真を手に、事務局に訴えられる準備を整えた。やがて、フリマアプリの事務局から通知が届く。「本件について調査した結果、返品の必要はないと判断しました。取引を終了します。」


彩花はガッツポーズを取った。購入者の「法的処置」の脅しは空振りに終わり、8万7000円の利益は彼女の手に残った。ビフテキ作戦は、綱渡りのようなスリルを経て、成功を収めたのだ。


#### エピローグ:次の賭け

夜、彩花はソファに座り、ビーズを手に持った。「これ、面白かったけど危なかったな。次はどうしよう?」彼女の目には、新たなアイデアが浮かんでいた。ビフテキの味は忘れられない。だが、次の一手はもっと慎重に、もっと賢く仕掛ける必要があるだろう。


彩花は微笑みながら、次の「作戦」を夢想した。

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