鈴木と時任
ネットカフェの店長鈴木とここの従業員の時任を徹底的に調べましょう。
突然どうした?何か閃いたのか?
まぁ、閃いたというか、勘だな。
勘で捜査を進めて大丈夫なのか?
安田がつっこむ。
今までそうしてきた人もいるだろう?
後藤は山下の方を向いて言った。山下はそっぽを向く。
まず、鈴木。安田が言った通り怪しい。2日連続で休む等、彼の生真面目さから言って不自然だ。彼の生真面目さなら、用事が済んだ後の出社もあり得る。母親の葬式も本当だとしてもタイミングが良すぎる。恐らく何か隠している。
次に時任。あの事件のあった日以降、連絡が取れないのは不自然だ。主任さんも言っていた通りの真面目な人物であれば、用は無くとも電話ぐらい取りそうなものだろう。連絡が途絶えたのは用が済んだからと考えられる。
じゃあ、手っ取り早く時任が登録している派遣会社から時任の居場所を突き止め話を聞けばいいじゃないか。
そこまではさっきの捜査員達に頼んである。俺たちが向かうのは鈴木の方だ。恐らく、鈴木の方が本命だ。
ここまで話を聞いていた山下が口を開く。
後藤。ここまでで怪しいのは2人。しかし、未だに二宮が出てこないのは何故だ?
...分からないんです。ここまでで、二宮の痕跡が殆どありません。というか、有りすぎて絞れない。と言った方が正しいです。もしかしたら、この事件に二宮は関わっていないかもしれないとも思ってしまう。それだけ絞りきれてません。今はとにかく可能性を1個1個潰すしかありません。
なるほどな。まるで詰め将棋だな。
鈴木の自宅に着く。喪中の文字が玄関先に掛けてある。
呼び鈴を鳴らすと鈴木が出てきた。
あの、すみませんが喪中なんですけど...
確かに線香の匂いがする。玄関前の塩、喪中の文字。母親が他界したのはどうやら本当のようだ。
失礼は承知の上です。しかし、一刻も早くあなたに聞きたいことがありまして。時間は取らせませんので。
はぁ...では中の方にどうぞ。
部屋に通されると、神棚に骨壺があった。卒塔婆も用意してある。デスクの上にはパソコンが置いてある。
明日には墓に納めようと準備しておりました。
そのパソコンは?
ええ。家でも仕事が出来るようにと置いてます。簡単なシフト表や売上日報等はこちらでも出来ますから。従業員には私が不在の時にはパソコンに情報を送るようにしています。
ちょっと拝見しても?
ええ。どうぞ。
パソコンに不審な点は特に無い。
後藤は頭を悩ませていた。これなら遠隔操作でも出来る可能性がある。可能性が増える一方だ。思い悩むその顔を見て、安田が後藤を外に呼び出した。