聴取
翌日。
後藤、山下、安田は、ネットカフェの聴取をするため出向いた。
店長の鈴木は、今日も私用の為来られないということだった。2人のバイト従業員への聴取を終わらせた3人は、点検業者への聴取をするため車を走らせていた。
鈴木、怪しくないですか?聴取を取るってタイミングで2日続けて居なくなるなんて。
確認させたんだが、どうやら母親の葬式らしくてな。明後日には職場復帰するそうだ。
そういうことですか。母親の葬式位ゆっくりやればいいのに。働きすぎなんですよ。1週間位休んでも問題ないようにしとけばいいのに。
鈴木は仕事に対して真面目な印象です。シフト表や売上日報等も事細かに整理してました。バイトの聴取でも、彼を悪く言う従業員はいませんでした。今時珍しい人格者です。
それじゃあこれで点検業者に絞れますね!
...
どうした?後藤。
いや、なんでもない。
とにかく、次は点検業者を調べましょう。
点検業者に着くと、別班の捜査員達が聴取を取っていた。後藤は話を聞きながらシフト表や受け持ち現場等の資料に目を通していた。
捜査員達が聴取を終えると、後藤は捜査員達に別の任務を言い渡し捜査にもどした。
後藤は捜査員達が去った後、日雇い労働者の名簿を見せながら連絡を取らせた。その中で1人、連絡が着かない人間が浮上した。それは、あの事件のあった日、初めて雇用した人間だった。名を時任と言った。
何故この人だけ初めてだったんですか?その他の人達はいつも頼んでる方々なのに。
現場を担当していた主任に訪ねた。
その日はどうしても人数が合わなかったんです。仕方なく、以前から申し込みのあったこの時任という男を試しに雇ってみたんです。
この、時任という男はどういった印象でしたか?
う~ん...真面目なんですけどね、真面目すぎるというか細かいというか、やりづらい印象はありました。しかし、初めてなので仕方ないことかと思ってました。やっぱり慣れている人とは違いますからね。
時任さんとはこの日以降、連絡を取られていないんですか?
取りました。日雇いではあるものの慣れれば継続して働いてくれる人は多い方がうちも助かりますからね。しかし、向こうから断ったんですよ。合わなかったのかなぁ。まぁよくある話ですよ。
そうですか...
後藤はまた俯き、1人で何やら考え事をしている。その姿を見た山下が、安田を促す。
後藤。話を聞かせてくれないか?お前は今どう考えてる?
少し驚きの表情を浮かべながら、山下の顔を見て察した後藤は安田と山下に伝える。
今考えられることは、ネットカフェの店長の鈴木と、この、時任という男が何かしら関わっているのではないかということだ。
それだけか?
...ああ。今言えることはそんなものだ。
と、一旦会話を終わらせた後藤は、主任に時任と連絡を取れるようにして欲しいことを伝え、ここから移動しようと2人に言ってきた。安田と山下はそれに従った。
車内に戻ると、後藤は話し始めた。