チームワーク
次に、天井裏の点検をした業者です。
日雇いで雇っているという事は、その中に二宮か遠藤平吉を付与された何者かが紛れ込んでいる可能性があります。
そんなこと言ったら全従業員の聴取も必要じゃないのか?
それなんですが、先程も言ったように日雇いで派遣従業員を雇っている会社です。他にも点検で正規社員が出払っている、もしくは慢性的な人員不足で日雇い労働者を雇わなければ回せない会社なのかもしれません。そうなると、このネットカフェに、別の現場から正規社員が来ることは考えにくい。やはり、事件のあった日にこのネットカフェに最初から派遣されてきた労働者を疑うのが妥当でしょう。
日雇い労働者は、何処の現場か知らされていないことだってあるぞ?
そうですね。しかし、引っ越し業者や単純作業ならまだしも、ある程度知識がなければ勤まらない天井裏の作業です。自ずと、次はこの現場だから等と紹介を事前にされているケースもあります。むしろその方が自然でしょう。
そうなると、例え日雇いでも固定されたメンバーで動くことは多々あります。
まぁ、何れにしろ絞り込むにはまだまだ情報が少ないですが、今のところこんな感じです。
何故それを俺だけに話すんだ?安田にも話せばいいだろう?
安田は聞いてるようで聞いてませんからね。山下さんのように、聞かせてくれとも言いませんし。
いいから言ってみろよ。歩みよりも大切だぞ。
安田が歩み寄ればなんとか...
まったく意地っ張りというかプライドが高いというか、変なとこ家路に似たな。
後藤はちょっとショックを受けていたようだった。山下も、触れてはいけない部分に触れてしまったと思い、すまんとだけ返した。その上で、
チームワークは大切だ。お前の推理と統率力があれば、家路や俺の時とは違う熱量で捜査が出来るはずだ。安田には俺から言っておくよ。お前のサポートをしてやれってな。
...なんかそれも嫌なんですけど...
怪訝そうな顔をする後藤。しかし、山下も気づいていた。家路との関係性は、特別なものだったし、何より、推理力は家路、統率力と上司への報告等は自分と、役割が分かれていたからこそうまく回っていた。それを今は後藤1人でやらなければならない。苦悩するに決まっている。自分が居る内に、安田には上への報告位出来るようにさせておくかと山下は思った。
とりあえず、明日以降ですね。まずは、ここの店員全員の聴取を終えてしまいたい。
そうだな。俺も安田と立ち会うぞ。何事も経験だ。
...はい。
そうあからさまに反応するな。俺の後継者を育てるんだ。お前も協力すれば早く済む。その方がお前のためにもなる。
...そういうことにしておきます。