トリックへの違和感
あの遠藤平吉が、現場に証拠を残していくとは思えない。何らかの形で回収したのではないか?
回収されてないじゃないか。
山下がつっこむ。
いや、それがフェイクだとしたら?
天井にも血痕はありましたし、まず間違いなく次元装置ですって。それに、以前の事件でも「遺体」という証拠を残してますよ。今回はその「遺体」がない。充分なトリックだと思いますよ。
...そうか...
それで一応、最近天井裏の点検をしたのか店長の鈴木に聞いたところ、業者にお願いしていたそうです。それが遠藤平吉の利用した日時と被ってます。
俺居なくても良かったんじゃねぇか?
山下がまた欠伸をする。
後藤は違和感を拭えずにいた。しかし、今は可能性から潰していくのが最も効率的だ。天井裏の点検をした業者を徹底的に調べさせることを安田に指示した。安田は既に捜査員を派遣していることを言い、山下と談笑し始めた。
捜査員が何らかの情報を持ち帰ってくるのを期待しつつ、後藤は拭いきれない違和感を同時に考えていた。
安田のスマホが鳴った。山下との談笑を中断し電話に出る。天井裏の点検業者の調べが着いたようだ。
確かに点検をしたそうです。その日、点検をした責任者に聞き込みをした結果、そのような異物があったという報告は上がっていないそうです。
従業員には聞いたのか?
あ、いえ、そこまでは。責任者に聞いただけなので。
その日従事した者全員に聴取は可能か?
聞いてみます。
再度安田に電話をかけ直させる。
安田の表情が曇り報告をして来る。
捜査員に聞いたところ、点検業者は派遣の従業員を日雇いで雇ってます。その日も派遣業者から来た者達で構成されていたそうです。なので、全員の聴取は少し時間がかかるかと思います。
時間が掛かってもいい。とりあえず、全員に聴取!
分かりました。
山下に何かしらごねてから、安田は点検業者の聴取に向かった。
その間後藤は、安田の聴取では心許ないと思い、店員に声をかけ、店長の鈴木を呼び出してもらうことにした。その日、シフトに入っていた従業員全員を聴取するためだ。しかし、店長の鈴木は私用で抜けていることが分かった。仕方なく後藤は、シフト表を他の従業員から見せてもらい、その日入っていた従業員への聴取を開始した。
その日入っていた従業員への聴取は、バイトの2名と店長の鈴木以外全員を終えた。
3名に関しては改めて後日ということになった。
聴取を取るためだけに俺が呼ばれた訳じゃあるまい。
聴取の手伝いをしていた山下がごねる。
山下さんがいるだけで現場に1本芯が通るんですよ。安田はあの通りですし、私は角が立つので。
角を丸くしろよ。まったく。
酒に溺れてるよりは健全だと思いますよ。
まぁ、そりゃそうだ。
痛いところを突かれ山下は口をつぐんだ。
ここまでのところ、お前の見立てはどうなんだ?お前の事だ。また1人で考えてることがあるんだろ?
山下の問いかけに後藤は口を開いた。