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隠居した男

早かったな。


俯いて話すその男の表情は分からなかった。声からもその表情は伺い知れない。


ええ。また、困った事件がありまして。


後藤はその俯いている男に話しかける。


しかし、あなたがここにいることに、とりあえず安心はしました。また逃げられたりしてないかと思いましたからね。不安は1つずつ消していきます。


やはり君は侮れん。


表情は変わらなかったが、声色だけは笑っているように聞こえた。


大人しくしていて下さい。山下さんもあなたも居ない。捜査一課は今疲弊しています。これ以上面倒は御免ですからね。

さてと、もう1人の方も心配なのでそっちにも行ってきます。


部屋を移動しようとする後藤に、男は話しかける。


後藤。どうだ?警察は緊張感を持っているか?


お陰さまで。夜もまともに寝れません。有給余ってるんですけどね。取りたくても取れません。


そうか。それは何よりだ。


その男は微かに笑みを浮かべ表情が揺らいだ。


男の部屋を後にし、内田の部屋に赴く。

内田も俯いて表情が見えない。

2人の所在確認をし、留置所を後にする。

混乱に乗じて2人の解放を狙ってくるかと思った後藤は、捜査網を広げられずに居た。


せめてあと1人現場に欲しい。安田ではまだ統率力に欠ける。熱を持った捜査員が欲しい。

スマホを取り出し後藤は再度あの男に声をかける。答えがノーだとしても、後進が育ってくるのを待っている余裕と時間はない。


もしもし。


何度言っても無駄だ。俺は隠居の身だ。俺以外の誰かを当たれ。安田も悪くないだろう?


酒でも飲んだのか、その声はいつもよりしゃがれていた。


山下さん。いい加減戻って下さい。俺1人じゃ無理です。


泣き言を言うな。ハイド君。


山下さんにまで広がってるんですか?というか、そこまで知ってるってことは、捜査一課に出入りしてますよね?


一瞬言葉が詰まり、山下は言った。


...まあ、どうなってるかなあって、老婆心ってやつだよ。


あなたを慕う捜査員がわんさか居るんですよ。まとめられるのはあなたしか居ません。そして何より、山下さん自身も捜査したいんじゃないんですか?それで寝れなくて夜中まで1人で飲んでるんですよね?


また言葉に詰まった。分かりやすい反応に笑ってしまう。


...いつまでも若い者が育たないのは如何なものかと思ってな...


育ててからでも遅くないです!

今から現場行きます!いいですね!迎え行きますから!


電話を切って山下の自宅に行く。現場から遠くなるが、致し方ない。この事件には山下の熱が必要だ。相手が捜査を確認してから動くタイプだからこそ、山下のようながむしゃらな男が必要なのだ。山下が動けば、その時必ず犯人も動くはず。


後藤は山下の自宅に急いだ。


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