鈴木確捕。
時任の血液、鈴木から預かったへその緒を使って、DNA鑑定を依頼。ネットカフェにぶちまけられた血液と照合させた結果、後藤の予想通り、3人の血液が合致した。これで、血液の出所は分かった。大部分が母親の血液だと思っていたが、3人は各々同じ量の血液をパックに詰めていたようだった。
鈴木の母親の死は、自然死という事になった。
殺人が起こっていない事に3人は、そして、時任も胸を撫で下ろした。
後は犯行のトリックだ。
時任は未だ監視中。落とすなら鈴木だ。3人は鈴木に連絡し、既に出社していることを確認。ネットカフェに向かう事にした。
鈴木はバックヤードでコミック本の梱包作業をしていた。
鈴木さん。
後藤がポケットから小さなケースを取り出す。
出来ましたよ。届けに来ました。
鈴木はケースを受け取り、涙を流しながら何度もありがとうと礼をしていた。母親の死は、やはり自然死だったのだと鈴木の態度を見てそう思った。
鈴木さん。お聞きしたいことが...
はい。
あなたは時々、自分とは思えない行動をすることがありませんか?そして、その行動を覚えていない。違いますか?
...はい。その通りです。
病院にもかかっていない。それは、店長として休むわけにはいかないから。そうですね?
はい。
やはりこの男も遠藤平吉を内在している多重人格者だ。
その悩み、誰にも話されていませんか?良ければ、私に詳しく話を聞かせて頂けませんか?
...作業がもう少しで終わります。少し休憩室で待っていて頂けませんか?
分かりました。それでは。
そう言って3人は休憩室で待つことにした。程なくして鈴木は作業を終えお待たせしましたと休憩室に入ってきた。椅子に座るのを待って後藤が切り出す。
実は、あなたと同じ症状で悩んでいる方を現在警察で勾留しています。24時間監視の下、記憶の無い症状が出るまでです。あなたも、その監視を受けてみませんか?
それは、どういう意味ですか?病院ではなく、警察ですか?
そうです。はっきり言います。1週間前、ここで起きた血だらけになった部屋の事件。私達は、現在勾留中の男と、そしてあなたが関与していると考えています。
...そうですか。断れそうにありませんね。いいですよ。やって下さい。ただ、仕事用のパソコンは持たせて下さい。
...仕事はお休みになられては?
いえ。これをやっているうちは気持ちが落ち着くんです。母に似たんですかね。すっかり仕事人間になってしまって。
...そうですか。では、それを認めますので、いいですね?
はい。
鈴木を自宅まで乗せ、パソコンを持たせた上で、警察所に向かった。鈴木はパソコンとあの小さなケースを持って留置所に入った。