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一区切り

山下さん。ありがとうございます。


後藤が、絶妙な間を与えてくれた山下に礼をする。


あれくらい、俺がいなきゃ安田がやってる。


ハードルあげないで下さいよ。ヒヤヒヤしましたよ。


決して無理とは言わない安田を見て、後藤は笑った。


しかし、これで一気に2人分の血液は貰ったな。後は時任の方だ。行方が分かっていればいいが...


その時、別班からの電話が鳴った。依頼していた時任の行方が分かったという連絡だった。


時任は今、一関の工場で派遣従業員として働いて居るようです。スマホの出荷前の検品業務に従事していると連絡が入りました。

盛岡駅から出る乗り合いのバスがあったはず。そこで待機しましょう。


午後7時。

乗り合いのバスがターミナルに入ってきた。乗降口のドアが開きドヤドヤと降りてくる。写真を見ながら確認していると、時任が姿を見せる。3人が時任を囲むように立ち、任意同行を求める。時任は意外に大人しく要求に応じた。



取調室には安田と後藤が入った。山下はガラス越しにそれを見ている。後藤が切り出す。


お名前は?


時任正義。


あなたが何故ここに連れてこられたか、覚えがありますか?


ありません。


1週間前。あなたはネットカフェの天井裏の点検業者に1日だけ派遣されたのを覚えていますか?


覚えていません。


おかしいですね。あなたが働いたと名簿には記載されています。


それを見て時任は、本当にびっくりした表情を見せた。そして、最近悩まされている持病があることを告白した。それは、乖離性同一性障害。つまり多重人格だ。


私は時々、私としての記憶がない時があります。気づけばベッドの上だったりといったように、本当に覚えがないんです。

...でも、信じてくれないですよね、そんなこと...


今日のことは覚えていますか?流れでいいので教えていただけますか?


今日は朝6時から乗り合いのバスで一関の工場に向かいました。工場での作業はスマホの最終チェック。画面に傷がないか等です。5時にはまたバスで移動して乗降口で皆さんに会いました。


その間、昼休みなどあったと思いますが、何を食べましたか?


自分で作った鮭のお握りとコーヒーです。


病院には通っているんですか?


通い始めたところです。薬も処方されています。


通い始めたのはいつ頃からですか?


1ヶ月前ですね。1週間おきに通ってます。


では、そこで誰かと話をしましたか?


いや、特に。ただ、3日間位の記憶がないんです。飛び飛びですけど、1日分の記憶がないのは初めてで、それが3日間位ありました。


その内の1日が、1週間前?


だと思います。


時任は遠藤平吉を内在させている事に違いないと、後藤は確信した。しかし、証拠がない。何とかして内在する遠藤平吉と話がしたい。


あなたの病気に関してアレコレ言うことはありません。専門外ですしね。しかし、同じような人間がいることを知っています。なので、もしかしたら、あなたの力になれるかもしれません。


本当ですか?私と同じような人っているんですか?何処に?


居ます。留置所です。


え!?...その方は何か問題を起こしたんですか?


...言いにくいですが、殺人です。


ええ!?それじゃあ、私がその、殺人を!?


...いや、まだ分かりません。ただ、もしかしたらです。

時任さん。私達はこれ以上犠牲者を出したくない。もし、あなたが良ければ、私達にあなたを監視させて頂けないでしょうか?悪いようにはしませんので。


自分が知らないうちに人を殺めている可能性がある。時任は言葉が出なかった。そしてその恐怖から、泣いた。嗚咽しながら時任は捜査協力することを約束した。


では、早速ですがあなたを監視します。病気ということで、明日からの予定は全てキャンセルして、留置所に入って頂きます。そこで監視します。入院させたいところですが、先程も言った通り、人を殺めている可能性がある人を入院させるのは危険かと思いまして。もちろん、あなたの同意無しでは出来ませんが。


やります。やって下さい。お願いします。


では、決まりなので健康診断を受けて頂きます。その後留置所へ。


はい。


健康診断という名目で血液を採取する。これを持って時任の血液も手に入った。これで3人分の血液が手に入った。ようやく事件解決への扉が開けた事に、3人は一安堵した。

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