The killer of paranoid Ⅲ 6
紅葉は、クラスメイトに別れを告げた後教室を後にした。姉の早苗から陰陽庁のお達しでシフトが増えるとの事でこの次期は繁忙期故に仕方がないと紅葉も諦めていた。今年は家でゆっくりとするか、別の友達のグループと混ざってみるか。
(とはいえ、京子がどうするかによるかな)
ちら、と教室でクラスメイトと談笑中の京子を見る。流石に、紅葉も仲直りの切欠を潰したい訳でもなく。京子が他の友達と行くなら自分もそうしようと思える。早苗にそれとなく探って欲しいと依頼しているが自分で声をかけて尋ねなさいの一点張り。それが出来るなら苦労はしていないというのに。廊下を歩いて階段を降りようとした瞬間、何者かの視線を感じて後ろを振り向く。じー⋯っと恨めしそうに、何かを訴えたい顔をした京子が教室から顔を出してこちらを見ている。
「何かよう?」
声をかけると、さっと教室へと顔を引っ込める。
(ったく、しょうがないわね)
クリスマスの話がしたいなら、そう言えばいいのに。そう思って教室へと戻ると京子はまだ談笑中だった。ちらちら、覗くこちらに気づいて、京子が紅葉に声をかける。
「紅葉、何かよう?」
紅葉の顔が分かりやすく紅潮する。
「なんでもないわよ!!」
(用があるのはあんたでしょうが!!)
小馬鹿にされているみたいで気分が悪い。紅葉は勢いよく、扉を閉めて今度こそ走って教室を去った。学校を出て、家へ帰る途中のコンビニでジュースを買うためにガラスの扉を開けてコーラを取り出す。ふと、紅葉は先程と同じような視線を感じる。まさかと後ろを振り向くと、京子が恨めしそうな目でこちらを見ていた。丁度、棚に隠れて顔を覗かせている。吃驚して手に収まっていたボトルを落とすと、さっとまた顔を引いて隠れる。紅葉が恐る恐る近づいて確かめると、誰も居ない。コンビニを出ようとすると、京子が自動ドアをくぐり抜けてコンビニに入って来た。
「紅葉、奇遇じゃない。何か買い物?」
「奇遇ってあんたね」
全力でナチュラルを装っているようにしか見えない。
「何か言いたい事があるんだったらハッキリ言いなさいよ。コソコソ付け回したりしないでさ」
クリスマス私と過ごしたいなら今言えば良い。そう思って伝えたものの暫くの沈黙。京子が首を捻って眉をひそめる。京子の頭に疑問符が浮かんでいるのがハッキリと見えた。
「何の話?」
(あくまで私に言わせたいって訳?)
「もう良いわよ。別になんでもないし!!」
プリプリ怒ってコンビニを出る紅葉を怪訝に思う京子。
「何か変だったけど、久しぶりに喋ったかな」
思わず京子に笑みが溢れる。そういえば、クリスマスの話を紅葉に話すのを忘れていた。今にして、好機だったなと後悔しながら買い物を済ませたのだった。




