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The killer of paranoid Ⅲ 2

 妖精はあれから姿を見せなくなった。何かしら理由でもあるのかよくわからないが、バクに尋ねるとわからないとの返答が帰ってくる。種を植えられると妄想や異常な執着が育ちやすくなる。育った妄想や妖怪をエネルギーの塊に変換しているものと思われる。どれだけ育つかは個人差がある。異常な執念や執着がある者ほど育ち、最終的に種にエネルギーを吸われ、新たな妖怪が生まれ、土壌となった人間は精神を侵され物言わぬ廃人になる。


「結局彼等の目的は未だに謎のまま⋯⋯」


携帯の振動を感じて、ポケットから携帯を取り出して見ると早苗から雪が降っていると一報が入る。一瞬、紅葉からかもと思ったが、期待は外れた。夏の事件からかなりの時間が経過したが関係は未だに悪化したままで、変化はない。喧嘩をした事は山程あるが、これほど長引いた事は今までで初めての事だ。


いい加減仲直りしたいのに、どうしたらいいものかと


京子はため息を吐いて仕事を再開するのだった。


9月も終わりに近づいた頃合い、夏の終わりが来て少しずつ秋らしい季節になった。夏の騒々しさ、特にメディアは昔の事件の容疑者が生存していた事で起こった怪事件が話題だったが、射殺され結果的に事件は幕を下ろして騒ぎは落ち着いた。僕は病院で妹に林檎を剥いてやると、彼女は嬉しそうにそれを食べる。妹は先天的に心臓が弱く、手術を繰り返しては入退院を繰り返していた。最近小学校の友達が千羽鶴をくれたり、会いに来てくれているものの、最近病状が悪化して、他の内蔵器官にも影響が出るようになりベッドで寝る事が多くなっている。親も、妹が段々と弱っていくのを見て辛そうにする事が多くなった。空気が重くなるのを感じる中で、せめて自分だけでも前向きにいようと思っていた。ある日看護婦に状態を聞いて車椅子に乗せて中庭を散歩していると、妹が急に指を指す。


「姫?どうしたんだ急に」


「お兄ちゃん、ぬいぐるみ落ちてる」


「どこにだ」


周辺を見渡すが、どこにも何も見えない。

姫が自分で車椅子を押して、樹木に引っ掛かった何かを拾いあげたように見えた。


「ぬいぐるみじゃないみたい」


「わからない。羽が映えてて、ピンク色のゾウみたい」


「お兄ちゃんには、見えないんだが」


「ふーん、私にしか見えてないのかな。変なの」


「そっか、じゃあ部屋に戻ろう」


個人的に、よくない兆候かも知れないと嫌な予感がした。それが的中したかわからないが時折一人で誰かと会話す事が増えていた。誰と話しているのかと尋ねると、羽の生えたピンクのゾウがふわふわ浮かんでいるのだという。親にそれを話すと、姫も精神的に参っているのかもしれないと話した。その翌日、姫が言う。


「お兄ちゃん、ハクがお兄ちゃんと話がしたいんだって」


「へえ、そうなのか」


「いきなりだとビックリしちゃうから、一応断っときたいって」


「へえ、いつでも出て来ていいよって伝えて」


「あはは、ハクは今もここにいるから聞こえてるよ」


妹が指を指す方向を、ゆっくりと追っていくと


ふわふわ浮く奇妙な物体が確かに浮かんでいた。


目と目が合う。


未知の物体とのファーストコンタクト。


「おわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


壁際にまで下がって、体と頭をぶけて尻餅をつく。


「ハクと申しますわ。以後お見知りおきを」


それは確かに存在し、羽をパタパタさせて浮遊していた。







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