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The killer of paranoid Ⅱ 12

起きて下さいっす



目を開けてくださーい。



開きませんね。悪戯チャンス到来っすかこれ



「何が来たって?」


目を開けると、顔を覗き込んでいる早苗と、バクの姿が見えた。周囲を伺うと、どこかの建物の中で、電灯も付いている。大きなエスカレーターが稼働しており、先に行ける様になっている。


「ここ本当に夢の中?」


早苗は、巫女の格好をしており、夏樹自身も学生服を着ていて普段と変わらない。


「その通りっす。このエスカレーターを越えて建物の中に入ったら彼女の精神世界が広がってるっすよ」


早苗が、札や自前の刀を確認して問題がないかチェックしている。


「こちらは問題ありません、夏樹さん大丈夫ですか」


「こっちも問題なし。じゃあ、行こうか」


2人はエスカレーターを上って、自動ドアを潜り建物の中へと入る。中は美術館となっており、変わったモチーフの彫像や、絵画が展示してある。しかし、建物全体が植物の根に侵食されており、奇妙な演出となっている。通路の妨げになる程木が肥大化しており、人面樹が通行を妨げている。二人に気づいて、樹の枝を伸ばすと夏樹はハンマーで破砕し、早苗は小太刀で切り刻む。図体の大きい樹木で、早苗は爆札を取り出して放ち、符術で貼り付け起爆し爆散させる。


「急ぎましょう」


小太刀を両手に持って蔓を捌き、奥へと向かう中で壁の絵に夏樹は目を通した。


「ギギ⋯⋯⋯」


「今度はあたしね」


玉ねぎの様な魔物が襲い掛かって来たので、夏樹が銃で対処する。絵は様々なタッチで描かれており、喜怒哀楽を表現豊かに表している。しかし、廊下の角を曲がるに連れて彼女の絵は暗いものとなっていく。植物の魔物が徘徊しており、二人は殲滅しつつ進んでいく。


「廊下の角を曲がる毎に上へと上がっていく仕組みですね。でも段々と絵が暗いイメージに」


「そういえば、小学校高学年までは普通だったって」


子供の時代は終わり、思春期を迎えた頃からテーマは重い。それから先は、彼女の苦しみが表現されている。虐待を受ける彼女の痛み、苦しみ、飢えや、孤独との闘い。強制労働の大変さ、しんどさ、怒り、差別される憎しみ。それらが表現された絵画が中心で、笑顔や幸せといったテーマの絵は皆無だった。途中で現れる魔物に対処しながら二人は大きな大聖堂へと出る。神聖な場所なのか、先程とは違って神々しい絵が壁や天井に描かれている。霞は十字架に張り付けにされて、気絶している様子が見えた。


側には先ほどよりも大きな樹木が生えており、その根は霞に絡み付いている。


「あれっす!!霞さんのエネルギーを吸ってる諸悪の根元っすよ!!」


「妹さんが植えた種って奴?バク、何とか出来ない訳?」


「出来たら夏樹さんを連れて来てないっすよ!!」


「いけません!!夏樹さん、下がって!!」


それもそうか、と夏樹は巨大ハンマーを手に持ち、樹木の破壊を行おうとした矢先早苗が夏樹の前に出る。結界で防いだが、その衝撃が凄まじく結界は壊された。紫色の人形の化け物の攻撃の前に、早苗が弾き飛ばされる。その豪腕からくるボディーブローの一撃で夏樹の後ろに飛ばされた。地面に転がって、摩擦する。


「早苗ちゃん!!」


「なんだぁテメーラ。霞の精神世界に他人が入り込むなんてよォ。鬱陶しいぜ!!」


「昨夜、確認した霞さんの生き霊ですね⋯⋯ゲホッ」


「こいつを消せば、霞さんは元に戻るのね?」


「違うっす!!壊さなきゃいけないのは後ろの樹木っすよ!!!」


「だったら、両方ぶっ壊す!!」


「やってみろよォ!!何だかわかんねーケドよ、力が溢れて止まらねえ!!」


早苗が、符術で空中に札を散布し、変化させてクナイを化け物へと放つ。


それをさも苦にせず、腕の一振りで薙ぎ払う。夏樹の中型ハンマーの攻撃と、早苗の小太刀の攻撃を化け物は交互に捌く。早苗の袖を掴んで夏樹に放り投げ二人をぶつけると距離を置く。化け物は空中に黒く光る細長い棒状の物を幾つも出現させた。それを二人に放って矢の如く放物線を描く。早苗は結界で防いだが、夏樹は巨大な盾を出現させて猛攻をふせぐ。全ては防ぎきれず、体に傷が出来る。その隙に間合いを詰められ、夏樹の首筋を掴んで地面に叩きつけられた。


「思い出したぜ、確かお前霞の背中を押した女だな?テメーのせいで家族は離散だボケ!!どう落とし前つけてくれんだコラ


夏樹の表情も曇る。感情の丈にここまで来たが、何をどうすればなんて夏樹は考えてなかった。ただ今は彼女の安否を確認してそれで。早苗の小太刀の一太刀を回避され、夏樹から離れる。


「夏樹さん、一旦離れて!!夏樹さん!?」


夏樹の体が思うように動かない。よろよろと立ち上がり、対峙するもすでに戦意は削がれている。


「あたしは⋯⋯あたしは!!」


「テメーまさか許して貰おうなんて思っちゃいねえよなァ。ここまで霞の人生狂わせておいてよォ。八つ裂きにしても尚テメーの罪は許されねえ、テメーはここで俺に殺されろ!!」


夏樹はその言葉に絶望の表情を浮かべた。先程の黒い光の矢の範囲攻撃が放たれ、夏樹は身動きが取れず、串刺しになって地面へと転がった。







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