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The killer of paranoid Ⅱ 11

 夏樹が和子から話を話を聞き終えると、いかに自分が考え無しに彼女に声を掛けたのか胸を締め付けられる。いずれ崩壊した世界であったかもしれない。でも背中を押したのは紛れもなく夏樹自身だった。家族を無くした喪失感と孤独は想像も出来ない。それでも、彼女の後を追うと夏樹は決めた。


「ごめん、あたしもう行くよ。霞さんを探さないと。行きそうな場所とか思い付かないかな?」


「ごめんなさい。今のお姉ちゃんがどこに行くか想像も出来ない。無事でいて欲しいけど」


「そっか、じゃあ見つけたら連絡するね。これ、私の連絡先だから覚えておいて」


夏樹が、手帳を破って切れ端に番号を書いて手渡す。席を立ち、部屋を出ていこうとした矢先、扉が勝手に開く。その扉の前には、一人の少女が立っていた。


「えーっと、和子ちゃんの知り合い?」


「いえ、全然⋯⋯⋯知らない子です」


「こんにちわ、鈴鳴夏樹さんですね?私陰陽庁対策課支部局長、朝倉京子と申します。貴方に少しお話を伺いたいので、お時間宜しいですか。特にーーーー妖怪を消滅させるその異能とカボチャの妖精と呼ばれる少女達との関わりについて」


「今なんて?」


(おおう、陰陽師の集まりっすね)


(そんなん居たの?現実に?)


(妖怪を放った後、現世では彼等が妖怪を滅したり、封印するからこの世は平和に生きる事ができるっす。ちな、世界中にそういう能力者の組織があるっすよ)


「大変恐縮ではあるんですが、貴方が自分のソックリな生き霊を消滅させた時から我々は貴方を監視していました」


後ろから、牧田が現れ申し訳なさそうな表情で夏樹を見る。


「すまんな、上からの指示には逆らえんのじゃ。堪忍してくれ」


「牧田君⋯⋯え、どういう事、何が何だか」


流石に、夏樹の頭が混乱してくる。


「そうですね、時間が惜しいので、説明は案内しながらになりますがこう言えば分かり易いでしょうか。平久霞さんは昨夜発見し、我々が保護しています。ですがある理由から彼女を警察に引き渡す事が出来ず、今も捜索して貰ってる状況になっています。あれから身体に異常が発生し、とても危険な状態に陥っており我々も彼女を救う為に尽力していますが、手立てがありません。夏樹さん、貴方の力を貸して貰えませんか」


少女の瞳に嘘はないと分かる。


これほど突拍子も無い話をこれだけ真剣に話す事なんて普通ありはしないだろう。


「事情はわかんないけど、霞さんが居るなら私は行く。早く案内して」


「外で車を用意していますので、玄関口へ」


夏樹は、二つ返事で頷き、朝倉京子という少女の背中を追いかけた。


 車の中で、夏樹は陰陽庁の起源や役割、現在の状況をかいつまんで説明された。日本で秘密裏に全国を守護する陰陽師の集団というのはどうやら本当らしく案内された場所が京都の本部がある市役所であった。案内されて奥にある関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉を抜けると地下へと続くエレベーターがありその一つがメディカルセンターの様な医療施設となっていた。


「それで、牧田君も陰陽師って事?」


「そうや、代々続く伝統でな。この地下で小学校卒業まで修行して中学生なったら実践に放り込まれるえげつない職業やで考えたら。一応、自衛隊と同じ防衛省傘下の組織で公務員やから給料はええんやけどな。大人になったら深夜勤務になるし辛いとこもあるで」


「何か、お疲れさま。深夜勤務かー⋯⋯夢の世界がどうたらと関係ある訳?」


「あるっすよ。人が寝ている時間に夢の世界で妖怪が育ち、僕らがチェックして世に放つっすから。日中に行う場合もありますが、数は少ないっすね」


「なるほどねー⋯⋯え、何、牧田君」


「何や、ちょいちょい思ってたけど誰と喋ってるんや。ちょっと怖いで」


バクが普通に浮いて見えてるので夏樹は失念していた。


「あ、あははははは。ごめんごめん、ちょっとなんてゆーの、この辺に何か居るっていうか」


牧田が夏樹の様子に首を傾げる中、京子が説明を続ける。


「なるほど、先程説明にあったのがその変なふわふわの方が貴方に力を与えた“夢の住人”と言う訳ですか。こちらでは、送られてくる妖怪の転送場所の妖気の拡大している場所を数日中に確認し、妖怪が具現化したら我々が討伐を行っています。しかし、逸話や伝説や伝承の中に居る様な体験を現代でされるなんて、幸運なんだか不運なんだか良く分かりませんね」


「あれ、ひょっとして見えてる?」


「みたいっすね」


京子は頷く。


「牧田さん、神様が浮いていると考えて下さい」


「マジっすか!?冗談じゃなく?」


「多分この中じゃ私しか見えてません。古来より神より力を賜り神通力を授かった人間の話はありますが、仙人や神の御使いとして登場し、怪物や鬼を退治したりして財を成したり英雄として崇められたりしますが⋯⋯⋯と、ここですね」


扉の前に止まり、京子が部屋に入ると霞がベッドで寝かされていた。但し、全身木の根の様な物が体を覆っており、頭上に綺麗な花の蕾が存在している。霞は熱があるのか体が赤くなって、うなされており、汗をかいて苦しんでいる。


「バク、これどういう状況?」


「マズイっす。妹の付けた種が成長して精神を蝕んでいるっす!!放っておいたら精神は崩壊して物言わぬ廃人になるっすよ!!夏樹さんが彼女の精神世界に入って元凶を取り除くしか手は無いっす!!」


「精神世界って、そんなんどうやって行きゃいいのよ!!」


「おいらが彼女の夢の中まで連れていくっす。寝てくれれば案内は可能っす」


京子がバクに尋ねる。


「夏樹さん以外も複数人連れていけます?」


「もう一人が限度っすね」


京子は早苗に視線を送ると彼女は無言で頷いた。




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