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The killer of paranoid Ⅱ 9

 深夜の道路にて、多数のオートバイクの乗り手が集まっていた。金髪で柄の悪そうな男達が、チームで対立している。数十年前の様な派手な抗争こそなくなったものの、バイク好き同士で集まり集まった集団が別の集団にちょっかいをかけていざこざが生まれるのは変わらない。


「テメーんトコのヤスって野郎がうちのもんを可愛がってくれたってなぁ」


「ちょっと、レースを仕掛けたらそっちが派手に転んで事故ったって聞いてるぜ」


「嘘つけこの野郎、卑怯な手でも使ったんだろうがよ あ?」


「難癖つけてんじゃねえぞコラァ!!」


トップ同士が至近距離で息巻いていると、突然後方で爆発音が響いた。と、同時にバイクが宙に放り投げられ、ぐしゃぐしゃにされて爆発が起こった。


「なんだぁ、ありゃ⋯⋯」


「女がフラフラこっちに寄ってるぜ。オメーの差し金か」


「んなわきゃねえだろうが!!」


少女が、フラフラと苦しそうに真っ直ぐ歩いて来ている。


「ごめんなさい⋯自分でも⋯⋯どうすればいいか⋯⋯ぐっ!!」


バイクが次々と横転し、宙に浮かび、落とされぐしゃぐしゃに壊れていく。よく見れば彼女の進行の妨げにならないよう、排除されているようにも見えた。奇妙な出来事に、一同騒然となり恐怖が蔓延った。少女は苦しそうに頭を抱えて、呻いている。男二人は少女が通りすぎるのを、唖然とした表情で見送るしかなかった。その少し上空で、箒に跨がるパンプキンの妖精が霞を見下ろしている。


「それじゃ刈り取り開始だね~♪」


不気味に微笑むと、夜空を駆け抜けて少女の後を追いかけた。


霞は、意識が朦朧とする中で必死に意識を奪われまいと抵抗していた。足取りがおぼつかず、呼吸も整えられない程に苦しい。


「ハァ、ハァ、ハァ⋯⋯私の中から出ていって!!」


(わかんねえ奴だなぁ。受け入れろよ俺をよォ。俺は長い間お前が溜めた怒りの吹き溜まりだぜェ?色んな事があったよなぁ?小学校の頃熱を出したら部屋に閉じ込められて、結局病院にも連れて行って貰えず看病さえなかった。治って今度は妹が病に倒れたら格差を見せつけられた上、病気を移したって母親に虐待されたのもいい思いでだよなぁ。あん時もお前は静かに怒ってたんだぜェ。自分じゃ自分の事を気づかないもんなのかね。あん時蹴られて全身痣だらけになったよなぁ。身をくるめて必死に母親の暴力に耐えるしかなかったよなぁ。鼻血は出るし、痛いし、泣き叫んだらその日ご飯も出なかった。忘れちまったってのか?)


(忘れてない。今は色々と腹も立つわよ)


(だろォ?俺はお前の願いそのものなんだよ!!表面取り繕って願望が叶わねえ限り俺が消える事はねえんだよ!!)


(私の願い?)


(あいつらを今度こそぶち殺すんだよォ~。それで親子とスッキリ縁切りしようぜ!!)


霞の体温が数度下がったかの様な感覚を味わう。自分のしでかした事を今ははっきりと後悔していた。怒りがあったのも確かだった。それでも怪我を負わせた時自分を一瞬ごまかそうともしたが結局待っていたのは後悔の念だった。もう後戻りは出来ない悲しさが自分を包み込む。


不格好な形で歪であったかもしれない。


人が見ればそれは正しい形ではないと言うかもしれない。


それでも、薄々異常に思いながらもその形が正しいと思い込ませてここまで来た。


それを、自分が結局粉々に壊してしまった。



もう家族には戻る事は出来ない。



「それでも私は、あんたを受け入れる事は出来ない!!」


(そうかよ!!なら、あん時みたく意識を奪って俺が願いを叶えてやる!!)


「お取り込みのトコ悪いんだけど~」


声が聞こえて霞が上空を見上げると、カボチャの妖精が箒に跨がり宙に浮かんでいる


「あんたのその“思い“を刈り取らせて貰うね!!」


不気味にそう言い放って、霞に向かって鎌を構えた。



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