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Revenge tragedy of agent Ⅲ 6

 東京にある剣術道場にて、一人の少年と師である彼の祖父が対峙している。少年が一息吐いて、攻撃の為に間合いを詰める。剣道独特の掛け声や防具は着用していない。二人が今稽古をしているのは剣道ではなく橘一刀流剣術という、かつて京都で妖怪討伐の為に振るわれた剣術である。それ故、手に持っているのは竹刀ではなく木刀であった。普段は門下生と共に竹刀で剣道を教える道場であったが、それ以外の時間は剣術の時間となる。


「良い線いっとるが、まだまだ甘いの」


少年の猛攻を難なく捌いて、最後の一振りを後ろに回避して、上から叩きつける。少年の手から木刀が零れ落ちた。更に頭に一撃が加わる。既にかなり体を酷使しているのか汗が吹き出し、体で息をしている。


「いっつ!!爺ちゃんもうちょい加減してくれよ!!」


「こんくらいで京都守護職が名乗れるか!!もう千本いくぞ」


「いや、もう京都の守護なんて出来ないだろ!?今は従姉の早苗や紅葉がやってんだから!!」


「馬鹿め。寛治達の身になにかあればお前が継ぐのは当然の事。そうなった時の為お前を鍛えるのが我が役目よ!!」


「だからーーーーもう必要ねえつってんの!!」


「すまん、最近耳が遠くての。ほれいくぞ一本取れなんだら朝の修練に崖上りと滝行、丸太の上での打ち合いにわしの分身と4対1での稽古を加えるぞい」


少年は絶句した。


鬼の形相に変わり、少年も顔が真剣になる。


「お義父さん、葵ちょっといいかしら?」


「おお、咲さん。もう飯の時間じゃったかいの」


その間に、突如女性が道場に入ってきた。


「いえ、陰陽庁から要請を受けて魔法省として京都に仕事になりまして。今日の晩御飯なんですが出前でお願いします」


「おろろ、そりゃしょうがないの」


葵が隙を突いて会話の最中に動いた。直ぐ様気づいて刀で弾く。


「甘いわ!殺気がモロバレじゃい!!」


「だー糞!!」


「じゃあ行ってきますね」


咲とよばれた女性が魔方陣を出現させ、瞬時にその場から消え去った。



 すでに廃校舎は崩壊寸前。ボロボロであちこちに穴が空き、埃が舞っている。二人の死闘は繊細な達人同士による読み合いやフェイクを織り混ぜる等といった高等技術はない。お互いの拳を怒りに任せて殴り会う単純明快な殴り合い。初めは化け物も爪を伸ばしたり、骨の刀で斬りかかったりと多彩な攻撃を見せていたが、その一切が無意味。刀で斬りかかれば素人の攻撃故か読まれてカウンターを食らい、手裏剣を投げれば弾かれ間合いを掴まれ投げ飛ばされる。強引に顔面を鷲掴みにし、地面に叩きつけられて衝撃で巨大なクレーターが出来上がる。目の前に居る女も正真正銘の化け物と言える。伸ばした爪を手で掴んでポキリと折られた時に化け物は気づく。小細工は隙を生むだけだと。事実それは正しく真義は赤子の手を捻る感覚を味わっていた。無限に思える死闘も彼女にしてみれば児戯に等しい。故に彼女も小細工は無用と考えていた。


化け物は、苛立っていた。


目の前の存在を殺せない事に。


自分の証明を為す為に力を渇望した。


新たな爆発が巻き起こり、化け物の姿がその最中で変わってゆく。


一際大きく、筋肉質へと変化し禍々しい姿へと変貌を果たす。



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