Revenge tragedy of agent Ⅱ 3
前田は他の自衛隊員の中でもあの京都震災を体験し、かつ家族や大事な身内が亡くなっている信頼のおける者を3名を選んで自分の同志となれるか話を切り出した。
秋山知佳、京都震災を経験した際に前田と知己になった。細身の女性ながら実力、知識、技術を持ち合わせる22歳。紺の髪が特徴的。
広間健丙
前田と同期で京都震災を体験した。恋人が負傷して現在も入院中。
黒田太一
京都震災時に前田と行動を共にし前田が特に信頼のおける人物。
この3名は最初は冗談と受け取っていたが、連れられた先で政府、教会関係者へ面通しを受けた事で前田の本気と冗談ではない事を悟った。それでも、話を降りる者は一人もおらず、進んで話を受け入れた。根元になる理由は各々違っていたが、京都震災から今に至るまでにそれぞれ抱える物があったが故の即決でもあった。その翌日に、4人は教会関係者に連れられ、ある建物の中へと通された。
「ここは以前使用していた新人を訓練する施設ですの。古くなっていたので今は新築して別の場所へ移転してまして。ここなら“特殊な訓練”に最適ですわ」
陰陽庁や政府にも介入出来ませんしと小声で呟く。
そこには、妖怪に対抗できる武器、弾薬、自由に使える車両等が置かれてあった。特に異色を感じるのがヒーロー戦隊物のような全身スーツ。それぞれの体に合うようにまだ作られておらず黒田は着る事が出来なかった。細身の残りの3人はスーツを着るなり、その感触を確かめる。一人だけ女性のラインが違うよう設計された黒色のスーツには気恥ずかしさも感じるものの、知佳は仕方ないと割りきった。
「ダメだ、どうしても着れねえ。スーツが新調されるまで待った方がいいんじゃねえか?」
「いえ、行動出来るのはあくまで集合可能な限られた休日期間内に行って貰います。それとぼやぼやしてると陰陽庁に先を越されてしまいますので黒田様には今回は見学をして貰います」
「今日一日で銃の扱いやこのスーツを着こなして明日にミッション開始って無茶過ぎひん?いや無謀やろ!!」
広間がそう言うと、3人は目を合わせて無言になる。教会の修道女が、ニコリと笑顔を見せてその流れを遮った。
「そんな事はありませんわ。特にそのスーツですが重要な箇所には銃も弾く特別な素材で出来てます。軽くしなやかで“この世に存在しない”物質、ドラゴンの鱗から作られておりますもの。妖怪の攻撃程度で傷付かない
事は保証します」
「どこにあんねんそんな伝説の防具が」
「冗談だろ?胡散臭くなってきたぜ前田さんよ」
「この世に存在しないなら、どこから?」
「魔法使いの居る異世界」
前田がそう言うと、修道女が機嫌良く答えた。
「あら、正解ですわ。魔術師だって人間ですもの。善人も居れば悪人も居ます。当然あちらを見限った“善人”だっていますのよ?」
「向こうで犯罪を犯してこっちに逃げるしか
なかった犯罪者が多数と聞いてますが」
前田がそう言うと、修道女の眉がぴくと動いてから
「それは日本政府の都合のいいデマですわ。
我々に忠誠を誓った魔女もおりましてよ。それよりもスーツの耐久性と武器の取り扱いの確認をお願いしますわ」
指を鳴らして、目の前の扉が開かれる。広い空間には、鎖で繋がれた大きな体のハイオークらしき豚の顔を持つ魔物。海外で散見される事はあっても日本では見られる事はないとされている。
「これより先には封印した魔物を放っておりますの。一定時間訓練をした後、あれと戦って貰いますが安心なさって下さい。一人教会から人間を派遣します」
ハイオークが涎を滴ながら、前田を含めた4人に威嚇した。




