Revenge tragedy of agent Ⅱ 2
前田一輝二等陸尉が、スーツを着て京都にある老舗料亭の個室に案内され襖が開かれると、そこには現閣僚の一人である菊岡一路が先に席に着いていた。数年前は防衛大臣も勤めている。前田が座ると二人は乾杯を交わして酒を入れ始める。
「やぁ、すまないね。急に呼び出して」
「いえ、ご無沙汰しています。今日は何がご相談があるとの事ですが」
「うん、最近九条駐屯地の様子はどうかなと思ってね」
九条駐屯地の建設に、力を注いだ創設者の一人。前田もその最中に会った事があり、面識がある。しかしながら仲が良い友人という訳でもなく知り合いと呼ぶべくもない間柄。呼ばれたのにもそれなりに理由があるのだろうと前田は直感していた。
「貴方の理想通りにとはいきませんが、要請が入れば妖怪の事にも自衛隊が動けるようにはなってます」
「うん、それだ。私はね前田君。大規模災害に匹敵しうる妖怪の討伐を想定してあそこを作ったんだよ。 前田一輝二等陸尉が、スーツを着て京都にある老舗料亭の個室に案内され襖が開かれると、そこには現閣僚の一人である菊岡一路が先に席に着いていた。数年前は防衛大臣も勤めている。前田が座ると二人は乾杯を交わして酒を入れ始める。
「やぁ、すまないね。急に呼び出して」
「いえ、ご無沙汰しています。今日は何がご相談があるとの事ですが」
「うん、最近九条駐屯地の様子はどうかなと思ってね」
九条駐屯地の建設に、力を注いだ創設者の一人。前田もその最中に会った事があり、面識がある。しかしながら仲が良い友人という訳でもなく知り合いと呼ぶべくもない間柄。呼ばれたのにもそれなりに理由があるのだろうと前田は直感していた。
「貴方の理想通りにとはいきませんが、要請が入れば妖怪の事にも自衛隊が動けるようにはなってます」
「うん、それだ。私はね前田君。大規模災害に匹敵しうる妖怪の討伐を想定してあそこを作ったんだよ。なのに、今の首相は分かってくれなくてね教会とは最低限のやりとりしか出来ないから結局銀の銃弾の取引くらいしか話が通せない。そりゃ、彼等のしでかした事は僕も許せそうにないが、国家が事態をコントロール出来ない状態を作ってしまうのもどうかと思うんだよ。もっと、自衛隊が妖怪を討つべく特殊な装備に特殊な訓練が必要なんじゃないかってね」
今の状態だと活動不十分と菊岡は思っていた。少なくとも陰陽庁ありきの体制では今までと変わらないとさえ思っているのである。
「あれ以来、教会とは折り合いが悪いですからね」
ちら、と前田がもう一人の座布団に目を向けた。
「私はあれがいつか暴走した時に今度こそ
終止符を討つべく事態を想定したいんだ。
だからあの一件を知る君に話を持ってきたんだよ」
やってくれるかな?と前田の酒を注ぐ。
「お引き受けしましょう。その為に私はここに居るんです」
「呼んだかいがあったよ。楽しい会食になりそうだ」
そう言うと、パンパンと手を叩くとまた襖が開き教会関係者と思わしき金髪の女性が修道服に身を包み座布団に座って前田に会釈した。
「教会日本支部の司祭エクレア・アルバーンと申します」
以後、お見知りおきをと、彼女は屈託の無い笑顔を前田に向ける。
「それで、私は何をすれば?」
「自衛隊にも、銃だけじゃなくもっと装備や武装を充実させる為にテストが必要だ。それも実践を踏んでのデータが欲しい。そこに最近ニュースで話題の鬼が暴れているだろう?」
「それも、陰陽庁では討伐出来なかったとか。我々も政府からの要望があればいつでも動く準備はしておりますのに」
若い司祭は嘲笑して、そう言った。
そして、前田も何をすべきか理解した。
「鬼を我々だけで討てと?」
「無茶はしなくていいが、可能な限り遂行して欲しい。一番はデータだからな」
「心配なさらずとも、我々の中から選りすぐりをお供に付けますわ」
教会と自衛官の妖怪討伐という新しいスタイルの確立。発覚すれば無論無事にとはいかないだろう。全ては秘密裏に、処理せねばならない。それでも前田はこの話を引き受けた。今でも鮮明に思い出す瓦礫の山と化した京都の町が目に映る。悲鳴が響き渡る戦場と化し、妖怪が暴れ回り、熱量を帯びた空気の中化け物が沈静化しているのを前田は好機と捉えた。銃を構えて妖怪を討つべく銃口を向けた先にはこの戦場を共に駆け抜けた戦友の姿があった。彼が何故化け物に寄り添い、自分に銃口を向けたのか理解出来ない。
「そこをどけ遠藤!!俺が終わらせてやる!!」
「前田⋯⋯頼む銃を下ろしてくれ。
そうじゃないと俺もお前を撃たなきゃいけなくなる」
そのまま二人は銃口を構え、一発の銃声が周囲に響き渡った。




