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Voo Doo Childー陰陽庁京都支部局長に就任した13歳の少女の物語  作者: 夜桜一献
Revenge tragedy of agentー復讐代行人 Ⅰ
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Revenge tragedy of agent Ⅰ 14

 健一が刀を抜いて構えを取り、結衣が先行して特攻を掛ける。トンファーによる連撃をひらひら回避し、裏拳を出して結衣に一撃を入れよろめく隙に蹴りを入れて後ろへ下がらせた。次に健一が刀による一太刀を浴びせようと躍起になるが、上手く回避され、伸ばした爪で弾かれる。春坂義雄が光の鎖を鬼に飛ばして拘束したが、豪快に力任せに破られた。目標を春坂に向けて、骨の手裏剣を投げつけると、後衛の少女が剣で弾く。山川が再度式神を召喚し、弓による一斉射を行ったが邪魔だとばかりに爪で弾かれた。化け物が後方に居る子供に照準を合わせて骨の手裏剣を投げたが今度は春坂が身を挺して庇って傷つく。早苗は背後に回って術札を空中に浮遊させると手裏剣に変化させる。紅葉も精霊召喚で影丸を呼び出すと注意を引き付けるように命令する。


「倒せとは言わないから、全力で注意を逸らして」


「フっ⋯⋯囮なら喜んでやらせて頂く」


影丸が背後で吠えて注意を引き付ける事に成功すると、好機と見た結衣が間合いに入って横腹に重い一撃を加える。そして死角に空中で遊ばせた手裏剣を放つと全弾命中して鬼も苦痛の表情を見せた。残りの面々も後方支援に切り替え、精霊や式神による遠隔射撃を行い爆発した。


「―――――――――――これで止め!!」


全員の思いが、重なる瞬間だった。健一が間合いに入り、首を狙って一太刀浴びせた。

首が飛んで、地面に転がると体もゆっくりと膝を付き、地面に倒れる。やがて動かなくなり、静寂が戻ってその場の全員が安堵した。


「10年前に12人が殺されたと聞いたが、確かに化け物だな」


「応急処置が必要な奴は言ってくれ、俺が診よう」


「助かります」


各々、横たわる化け物を見て重軽症者の確認作業に入った。幸い子供に死者は出ていない。


「結衣は大丈夫か?」


「健一さん、気遣いは無用です。早く重傷者を病院へ」


「おお、そうだった」


紅葉が凄惨たる現状を目の当たりにして、唾を飲み込んだ。負傷した者が殆どで、死者も2名出ている。


「主、まだ終わってないぞ。気を抜くな」


「終わってない?」


「妖気は全く消えてないぞ主!!」


ゆっくりと弱まる気配も見せない妖気に紅葉も気が付き声を張り上げた。


「健一さん!!!」


どうした紅葉、そう振り向いた瞬間背後に鬼が首が無い状態で立っていた。伸ばした爪で首を切り落とす。


言葉にならない光景に誰もが硬直した。そのまま、ゆっくりと首を持ち上げ、斬られた首元にくっつけると健一の頭が先ほどまでの鬼へと変化した。元の首は用が済んだとでも言うように消滅して消えていく。ゴキゴキと首の骨を鳴らして感触を確かめ、再び敵意を周囲に向けた。死なない敵に畏怖を覚え身動きがとれぬ者、自らを鼓舞して立ち向かう意思を固めた者。思考停止してどちらにも至らない者と三者三様はっきりと別れた。


全員の頭上に全滅の文字が浮かび上がる。


「紅葉、逃げるように皆に言い聞かせて!!私が時間を稼ぐ。それが終わり次第あんたも逃げるのよ!!」


早苗がそういうと、紅葉の脳が揺さぶられた。姉が死ぬかもしれない状況に、ようやく自分の意識を取り戻す。


「あんな奴に勝てる訳ないじゃない!!」


「勝つなんて言ってないわ。結衣さんはどうされます?」


「子供のあんたにそう言われたら、付き合うしかないじゃないの。バックアップ頼んだわよ早苗」


「任せて下さい、可能な限り隙を突いて逃げたいとこです」


「同感ね」


早苗だって冷静でいられる状況ではないのだ。しかし妹を殺されるよりはマシだと判断したに過ぎない。早苗が再度空中に札を散布し浮かび上がらせると結衣もトンファーを構えて攻撃を仕掛ける隙を伺う。鬼が爪を伸ばして結衣に攻撃を仕掛けるとそれを遮って、黒い長髪の少女が攻撃を受け止めた。短刀を手に持ち、爪の攻撃を防いでいる。


「派手にやってくれたわね。仕事が増えちゃうじゃない」


鬼は少女に見覚えがあったのか、驚愕の表情を浮かべている。そんな、緊迫した状況の最中に、猫の声が響き渡った。


「にゃあ」


鬼の背後に、ゆっくりと佇む二股の黒い猫。

たかが猫と判断したのか鬼が背を向けると伸びた尻尾が首と胴を締める。鬼は黒猫の尻尾を爪で斬る。すると目の前の黒猫は姿を消した。代わりに何十匹と同じ黒猫が姿を見せる。浦美が鬼へと攻撃を仕掛けると、鬼も伸ばした爪で応戦している。金属音が響く度に火花も散る。素早い攻撃の連続に他の面々もそれを眺めていた。着物を着ているにも関わらず、軽やかで素早く一撃も重い。黒猫もアシストとばかりに背後から襲いかかった。一匹は足に齧りつき、ある一匹は顔を覆って邪魔をする。その度に鬼は黒猫を排除しなければならず、浦美への注意が逸れた瞬間、短刀による攻撃への意識が薄れて浦美の斬撃が入る。青い血が舞い、浦美も興奮している。


「あら、手首が元に戻ってるわね。折角前は斬って落としてあげたのにぃ」


晴野浦美はれるやうらみが可笑しそうにそう言うと鬼は上を向き憎々し気に少女を見た後、羽を生やして天井を突き抜けてこの場を去った。ようやく、脅威が去って紅葉達は任務の失敗を痛感する事になった。



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