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陰陽庁怪異対策課京都支部 4

 京都市街、ビルの屋上から飛び降り自殺を図った男性が死体となって転がっていた。地面は血で染められ、第一発見者の作業員の男性は慌てて警察へと連絡した。早朝の事だった故か人通りも多く騒ぎとなったが、黄色いテープが貼られて警察が野次馬を遮っている。


「ガイシャは34歳男性、ビルに事務所を構える建築業の営業サラリーマン、ね。何か思い詰める様な事あったのかねえ」


自殺する理由は何であれ、死んだ者からは声を聞く事が出来ない。タバコに火を付けて吸っていると、少女の声が聞こえた。


「自殺じゃないみたいですよ?何かに追われて追い詰められて落ちた末の事故って本人が」


「・・・・・・また、君か」


「おはよう御座います。刑事さんの隣で泣いてますよ」


警部は、声の主に聞き覚えのある少女に向き直った。赤い跳ねっ毛の癖のある少女。たまに事件現場に現れて死者と会話出来ると言い張る電波さん。


「それで、自殺ではなく、誰かに追われた末に滑って事故死したと」


刑事ドラマの見過ぎだろうと思っていたが、被害者の靴はそのまま履いたままだ。可能性がないとは言わないが、憶測の域は出ない。


「うーん、でも何でしょう。話を聞いてると目に見えない誰かに追われてるって言ってます」


思わず、笑ってしまいそうになる感情を抑える。


「見えないモンに追いかけ回されたら、そりゃ怖くて逃げるわな」


たまに的中させる発言もあったりもするが、基本彼女を相手にしない理由がこういった電波発言を臆面もなく言ってくるからで、それも本人は自分は幽霊が見えるのだと。大真面目な顔をして訴えてくる。


「子供が見て良いモンじゃないんだから、さっさと学校行きなさい」


しっしと彼女を追い払って、野次馬の対処に努める。少し寂しそうに少女は現場に背を向けて、去って行く。


「さて、被害者の交遊関係でも洗うとするかな、ん?」


科学捜査班に現場を預けて事務所に入ろうとすると警部の携帯に神社の近くで遺体を発見したと本日2度目の連絡が入った。被害者はビルで自殺した男の元彼女。衣装は白い着物を着ており、すぐ側の木の幹には牛の刻参りをした後が残っており深々と木に打ち付けられた藁人形の顔写真には、男の写真と藁人形の中に彼の髪の毛が入っていた事が確認された。彼女は何者かに首を斬り落とされており、殺人事件として警察は捜査を進める事となった。全国のお茶の間に牛の刻参りが流れるや否や暫くその話題で持ちきりとなった。昔の呪いの儀式という事で、知らぬ者の関心を引いて儀式を用いた“お呪い”がちょっとしたブームを生んだのである。今も昔も変わらぬケシゴムの裏に思い人の名前を書いて無くなるまで使い切れば恋愛成就するといった可愛い物から、ぬいぐるみの腹を裂いて中に相手の写真を詰め込み相手を呪いながらぬいぐるみを叩いたりする危ない呪術まで。特に若い女の子に関心があったのは恋愛関係が主ではあったもののストレス発散に相手を呪う儀式を行う者も出始めている。


「このパワーストーン糞やべえ!!運気上がりまくり!!こないだ部活でレギュラーなったわ」


「マジかよ・・・俺同じの買ったけど、全然だぞ」


「後3つは買えばよくね?」


「アホか、一個3000円だぞ!?」


「お前、携帯ゲームの課金ちょっと控えればいい話じゃね?」


「確かに、1万円なら安いもんだな」


ははは、と笑う男子のグループ。その隣では女子の一人が天にも上る夢見心地な表情でぴょんぴょん跳び跳ねている。


「信じられない!!ケシゴム使い切ってから告白したら成功しちゃった!!」


「一日中ケシゴム削ったかいあったねミノっち」


「マジ?うちもやろうかな」


「私、手に好きな子の名前書いて3日間隠せたら恋が実るってやつやってんだけど」


「うん」


「全然効果ないだけど」


「だよね・・・」


「まさか、ここまで皆が呪いにはまるなんて」


京子が教室で呪いで騒いでいるこの状況に驚いていると紅葉もその騒ぎを冷めた目で見つめていた。


「リバイバルブームって奴?仕事増えそうで嫌な予感しかしないわ」


紅葉のその予感は、ある事件となって的中する事となる。



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