Revenge tragedy of agent Ⅰ 3
ホテル前で、一人の男が車の中で待機していた。ちらりほらり、帰っていく人を識別しながら確認して2時間弱。延長を考えていなければそろそろのはずではある。オールバックにサングラスを掛けた男はじっと機会を伺っているとようやく、待っていた小太りのサラリーマンが現れた。
(おいでなすった。ゲェー・・・・・相手女子高生かよ。マジかお前)
40代半ばの男性は、制服を着た女子高生と一緒にラブホテルの玄関から出てきた。入った時点で浮気は確定だが、相手が社会人なら離婚の際に旦那共々慰謝料も期待が出来る。しかし援助交際の線が太い為、それは期待薄といった所。すかさずその現場を携帯で写真に納めて証拠を取っておく。男性の奥さんからの浮気調査依頼が来たので旦那さんを尾行して2日目あっさりと現場を確保出来た事は幸いだったが報告するにも気が滅入る。出来れば身の潔白を証明する証拠として提出したかったがこれが事実なのであれば仕方がない。
「みゆきち、車出せ」
「くかー・・・んごっ・・・むにゃむにゃ。佐竹さんそれセクハラ~」
「おい、起きろみゆきち!!」
菰田深雪20歳、助手。今まで寝こけていた女。
「ひゃっ!!何ですか佐竹さん。・・・証拠取れました?」
「ああ、残念だけど浮気確定だな。戻って報告書纏めるぞ」
「分かりました、頑張って下さいね」
「いや、お前がやるんだよ」
事務所に戻って助手に報告書を作成させている間シャワーを浴びて、疲れを癒した後自室になっている奥の部屋のソファーに寝そべった。TVを着けると丁度昔の未解決大事件のスペシャル特番が放映されている。MCと解説役がそれぞれ自分の主張を続けている。
「犯人の特徴はその異常性です。カニバリズム、人骨で作るアイテムやアクセサリーを好み、犯行は10年周期」
「10年周期!?以前にもこんな事件が?嘘でしょ」
「1980年代~現在に掛けて、丁度10年周期で犯行が行われているのですよ」
「10年毎にこんな大量に死人が出る事件が?模倣犯の可能性もありますよね」
「手口がほぼ同じで、犯人に繋がる証拠は全くといっていいほど出てきません。まさしく現代の怪物ですよ」
「そろそろ10年が経過します。ひょっとしたら犯人がまた現れるかもしれませんね」
佐竹は小型の冷蔵庫から缶ビールを取り出して、口を開けると一気に飲み干した。
「怪物ね・・・必ず正体を暴いてやる」
手に持つビールの缶を握り、映像に映る今現在の犯人の特徴を予想して描かれた絵を見て憎々しげに呟いた。