表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/209

The black cat rage about 11

 ひらひらと舞う、召喚札が一件の餅屋の前に方角を変える。店の前に、長椅子が敷かれ、その場で購入して食べる事が出来るようになっており、何人ものお客が団子を美味しそうに頬張っている。そのうちの、和服の60代の老人の座る長椅子の上に落ちる。


「おや、これはいけない。風で紙が⋯⋯」


「ハハハ、ゴミが団子に貼りつかれた日には勿体ないですな」


「ええ、全くです」


それを手で掴むと袖に仕舞う。

それから店員にお皿と湯飲みの盆を渡して去ろうとした。


「にゃあ」


「黒い猫、か。縁起でもない」


嫌な顔をして、しっしとあっちにいけと手を振る。顔や匂い、身体の特徴は覚えた。分身を一つ作り後を追う。人通りの多い往来では少なからず周囲に被害を出す。流石に今ここで目の前の人物を力づくで取り押さえる訳にもいくまい。


「おお、クロやないか。久しぶりやなぁ」


声のする方へ顔を向けるが、全く知らない青年がこちらを覗き込んでいる。和服に身を包み、ぼさぼさの頭が特徴的。よっこいしょと買ったばかりのお餅を美味しそうに食べ、熱いお茶を喉に通す。


「は~⋯⋯美味い。色々厄介事が俺の代で一気に回ってきよる。因果なもんやわ」


なんのこっちゃ、わからん話をされてもこちらには困る。


「ああ、そうか。俺は知らんわな。世話になってる京子の兄言うたら話分かるか」


全然似てない。それに久しぶりに名前で呼ばれた気もする。


「これで、憑かれるっちゅう退魔師には恥ずかしい失態犯した海道さんの幹部昇進はどの道お流れ。彼を推薦した彦麿呂はんも面目丸つぶれ。どいつもこいつも狐に狸でほんま、お前みたいな猫が可愛く見えるで」


ほれ、とおはぎを目の前に出されたので飛びついた。美味い。それに夢中になっている間に青年はどこかへと姿を消してしまった。お前が何しでかすか期待しとくで、という言葉を耳に残して戻ると和香の父が長い間憑りつかれた状態にあったらしくあれから目を覚まさないらしい。病院の寝室で、和香が心配そうに付いている。


「まさか、こんな事になってたなんて」


父の豹変をもっと疑うべきだったと彼女は反省しているようだった。


「一体どの誰が!!⋯⋯くっ」


悔しそうに、そう呻く。


「にゃあ」


と声を鳴らすと、彼女は私の存在に気が付いた。札を持ち去った犯人に化けて、それから猫の姿に戻る。


「その姿は⋯⋯まさか、犯人が特定できたと?」


こくりと頷くと、和香は意を決し、私に謝辞を述べた。早速、他の連中に知らせようとすると和香はそれを遮る。


「すみません。京子さん達には内緒でお願い出来ませんかこれ以上うちの事で迷惑を掛けたくありません」


その提案に、頷いて私は彼女の意思を尊重した。病院の中で、猫が徘徊するとなると騒ぎになるので一目の付かないように用心しながら廊下を移動する。階段を下りて、ようやく外まで後一歩。その病院の玄関にある受付の前に設置してある受付を待つ間に視聴出来る備え付けのテレビに人の視線は釘付けになっていて、人気のある時代劇が始まった。


のさばる悪を何とする


天の裁きは待ってはおれぬ


この世の正義もあてにはならぬ


闇に裁いて仕置する


ーーーー南無阿弥陀仏




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ