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The black cat rage about 10

 可愛らしい舞妓の舞いが終わったかと思いきや、何やらまた一騒動ありそうな雰囲気である。黒幕がそこに居る男ではないと聞いてその場の全員に焦燥の念が見える。和香が言った、父が操られているというその事実を目にして、全員がそれに目を向ける。性別の判断は難しいが恐らくは女性。死霊のように、体が青く、伸びた髪をだらりとさせ世界の全てを憎んでいるかのような威圧をこちらに向けている。かん高い奇声を発して全員が耳を塞ぐ。その隙に、化け物は和香の父の喉をその手で切ろうとした。手が鋭い刃に変形して思わず、その場で動けた私が人型に化けてその腕に絡みつく。振り回されながら、何とかその手の動きの邪魔をしていると、和香が全員に声を掛けた。


「あの化け物を引きはがします!!手伝って貰えますか!!」


「勿論です!!」


京子がそういうと紅葉と早苗も頷き札を取り出しそれを海道に貼りつける。京子が額に、和香が腕に、紅葉が足に、早苗が背中に貼りつける。それぞれ印を組んで、合図を発した。


「社長、離れて下さい!!」


その合図と共に、ぴょんと離れる。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


海道が苦しみ、同時に背後に居る存在にも落雷が発生したかのようなダメージを負わせた。見事なものである。二度食らうのは避けたいと判断したのか海道から離れて外へと逃げた。京子は、舌打ちして自分達の格好を再認識する。舞妓さんの、着物衣装では激しい運動は不可能。着物姿の和香も同様だった。


「遊びでやってた舞妓さんごっこが役に立ったのは良いけど、この展開は想定外だわ」


紅葉も、化け物を野に放った悔しさから、そう呟く。


仕方ない、動けるのは自分しか居ないらしい。


「にゃあ」


「社長!!」


それだけ言って、自分が外へと追いかけた。臭いも漂っており追跡可能。何件かの屋根を伝ってようやく追いついた。化け物も屋根へと場所を移しており、ようやくその全貌が見える。上半身は女型ではあるが、下半身は蛇であった。追いかける途中で蛇女は後ろを振り向いて毒の粘液を飛ばしてくる。思わず進路を変更を余儀なくされ、時に立ち止まって脚を踊らせる。毒の雨が厄介なので、こちらも分身して狙いを分散させた。ぎょっとした表情でアワを食う様はなかなかである。20十数匹のうち、残ったのは6匹であるが上々と言えた。遂に蛇女を目前に捕らえ、蛇女に跳びか掛かるもその強靭な蛇の尾に弾かれ消える。本体のみになり今度はこちらの番とばかりに猛スピードでこちらに襲い掛かってくるので、後ろへと回避すると屋根が爆発したかのように瓦が吹き飛んで埃が舞った。蛇の下半身に気づかず瞬時に捕らえられ、蛇の体で簀巻きにされてギリギリと締め付けられる。お互い言葉も口に出来ぬ化け物同士。殺すか、殺されるしかない。たまらず、こちらも猫に戻って脱兎の如く逃げ出した。すぐ様、こちらの後ろをぴたりと追いかけて来て何度となく攻撃を繰り出してくる。その度に瓦が吹き飛び、屋根が壊れていく。何事かと、下の人間にも気づかれ始めている。これは不味い、人を襲い始めたら守る手段が全くない。猫のまま、なるべく同じ屋根をぐるぐる逃げ回り、ぴたりと止まる。蛇女に向き直り、蛇女が観念したかい?と不敵な笑みと舌を舐めた。


「にゃあ」


と鳴くと、丁度良いタイミングで蛇女が居る足元の屋根が崩れ去る。驚いた表情を見せ、上を向く蛇女を人型に戻って刀を下に向けて顔を覗き込み、そんな訳あるかと一瞥した。とん、と下へ落ちて蛇女の顔に刀を深々と突き刺した。そのまま家の天上を突き抜けて一気に家内へと押し込む。ちなみに、私の刀は普通の刀ではない。自分の魂の一部であり今は妖刀の類と化している。取り分け、妖怪には良く効く。死んでたまるものかと、蛇も残った下半身を屋根から下して暴れて暴走した。屋根や壁が崩れ落ちる最中、力を込めて上半身をたたっ斬る。半分に裂け、血飛沫が舞い妖怪が倒れて消滅していく。場所が真昼間の居酒屋の2階で人が居ないのが幸いだったが下に誰か居たら無事では済まなかったかもしれない。屋根はボロボロ、中は血みどろ。机や座布団が見るも無残な状態であり妖怪は消滅したがしっかと跡が残った。まぁ、いいか、と猫の自分には些末な事だと思い直して太陽がさんさんと光る空を見上げた。すると、丁度蛇女の居た辺りから、何かがふわふわと浮かび始めている。退魔師が良く使う、召喚の札がひらひらとどこかへ向かっている。ボロボロで傷ついており、新しく召喚する為に飛ばした物ではない。周囲に和香や、京子達も気配は無い。つまりこれは、先ほどの蛇女を召喚する為に使用した物。大方、証拠隠滅にこれを回収しようとしているのだろう事は見て取れる。一体、何者がこの一件を引き起こしたのか知らねばなるまい。主の下へ先導をしてくれる札の後をゆっくりと追いかけた。


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