表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/209

The black cat rage about 9

 鹿おどしが、コンと鳴って心地よい音を出す。お見合い当日になり、和香は和服に身を包み、化粧をする。相手に失礼に無い様に最低限失礼の無い装いをし身支度を整えてきた。父も隣に座り、向かいに座る彦麿呂に笑顔を見せる。茶と和菓子を頂いて、二人の話に花が咲いている状態である。和香は周囲を警戒したが、そのまま拉致監禁される様な事はしないと判断した。


「いやはや、何事も無く今日というめでたい日を迎えられた事、嬉しく思いますぞ」


「こちらこそ、和香殿が離婚を決意してくれた事、誠に嬉しい限り。なんでもすでに仮面夫婦とか。夜の方もさっぱりだそうでお寂しいと聞いたでおじゃる。旦那は繁華街に通い詰めて和香殿に見向きもしないとか。それを聞いて憤慨したでおじゃるよ」


一瞬、誰が仮面夫婦だこの野郎と和香の表情に殺意が篭る。


「おや、どうされたのです?和香殿」


「いえ、何でもありませんよ。私とそこまで結婚したい理由が何か少し興味があるんですが。彦麿呂さんとはお仕事で何度か一緒になった事はあるかと思いますが興味を持たれる程長く組んだ事もありませんのに」



「いやいや、いつも高値の花の様に思うておりましたとも。こういう機会でも無ければ、お話しする事も叶ったかどうか。そんな貴方に好意を寄せられていると聞かされて辛抱堪らんでおじゃる」


浮かれた話を色々聞かされ、和香は酷く吐き気を催した。


「おろ、どうされた和香殿。お具合が悪く見える」


本当に吐きそうだという本音は隠し


「ええ、少々体調が」


にこっと笑顔で返す。


すかさず、父がぱんぱんと手を叩き中居さんを呼び出した。料金を払えば芸者さんが付くのもこの店の特色と言える。


「それでは、私からのサプライズをどうぞ」


「ほう、サプライズ!!」


中居さんが現れ、豪華な懐石料理が並べられて

彦麿呂は和香の父に酒を勧められて一献飲む。

次に襖が開かれ、舞妓姿の早苗、京子、紅葉、それから黒い猫が一匹ちょこんと立っている。それを見て、和香が吃驚して口を開けた。舞妓独特の派手な衣装をしているが本物ではない事は一目瞭然。長い髪を結っていなければ、顔におしろいも

塗ってはいない。そんな事は京都に生きる者であれば大概は知っている。


「うん?確か落語が出来る噺家を呼んだはずじゃが・・・はて。まぁよいわ」


金色と赤が混じった大きな扇子を目の前に置き、深々と2人が礼をした。早苗が三味線を弾いて、音楽が鳴って早苗が歌を歌う。舞妓が舞う『京の四季』


春は花 いざ見にでんせ 東山


色香あらそう 夜桜や


浮かれ浮かれて


粋も無粋も ものがたい


二本差しても 柔らこう


祇園豆腐の 二軒茶屋


みそぎぞ 夏は うち連れて


川原につどう 夕涼み


紅葉と京子は舞いながら、彦摩呂に近づく。


これは通常の舞いにはない動きである。


よいよい よいよい


早苗が言い、最後の1フレーズ直前でぴしゃりと扇子を戻す紅葉と京子。


『―――――――――せーの!!!!!!』


の掛け声と共に思い切り二人で彦麿呂の脳天に食らわした。


「ぶべし!!!!って何するでおじゃる!!」


「何してるのか聞きたいのはこっちだっての」


紅葉が鼻で笑って、彦麿呂を見下ろしている。そこには、拉致監禁等という非人道的行いに対する侮蔑も見えた。


「私が誰か分かりませんか?彦麿呂さん」


「お主は、清治殿の妹君ではありませんか。しかし何故ここへ?」


「私たちは、そこにいらっしゃる和香さんから助けて欲しいと頼まれ助成すべくここに来ました。無理矢理親子と夫婦の絆を一方的に断ち切らせた挙句、和香さんを拉致監禁させたとか」


それを聞いて、顔面が崩壊する程吃驚する彦麿呂。


「ほ⋯⋯ふぁ??!!!!!??和香殿が拉致監禁??

一体全体どういう事でおじゃる!!海道殿

そんな話聞いてはおらんでおじゃる!!」


その言葉を耳にして、一番驚いていたのは和香だった。


「黒幕は貴方ではない?⋯では、父は一体誰に操られていると?」


その言葉に、その場に居た全員が海道と呼ばれた殿和香の父に視線を向ける。


「貴様らよくもわしの悲願を台無しに⋯⋯がっ!!!」


海道が、急に目に光が無くなり、背後に亡霊が現れる。挙動不審になり、カク、カク、と首がロボットのように首があちこちの方へ向いた。左側の耳から、黒い靄が現れ、それは姿を現す。憎悪の目を周囲に向けて、奇声をまき散らした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ