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陰陽庁怪異対策課京都支部 20

 

 紅葉と京子は式神をあしらいつつ、丁度広い空間へと出る。神社仏閣の本堂の中に居るかのような荘厳な建物に口を開けたまま眺めた。奥へと続く階段の前には、2頭の大きい狛犬の像が置かれており石から、生物へとゆっくりと変化しやがて2頭は二人に雄叫びを上げた。


「強行突破しか手がないか。紅葉、来るわよ」


「一々言わなくても分かってるわよ」


紅葉は小太刀二刀を構え、京子は式神を空中に散布して刀に変化させる。くるくると回転して数十本地面に突き刺さった。その一つを手に取り京子も構えると、一匹が京子に強襲する。肩で転んで回避し、狛犬の横腹を下から上へ突き刺した。直ぐ様、横にある刀を手に取り跳躍して背中を突き刺す。深く刺さらなかったが、直ぐに手を離してまた別の刀を手に持ち襲いかかる狛犬の右前足に突き刺して、狛犬が激痛で悶えている間に別の刀を手に持ち刺して行く。斬撃をすると周囲の刀に当たる場合もあるので、これをやる時は基本的に『突き』一辺倒。隙あらば突き、さっと離れて次の刀を準備、そして突撃の繰り返し。時に2本両手で持って、2蓮撃を繰り出す。動作が素早く相手を動かす前に攻撃に移り、一撃を加えている。


「久しぶりに見たわ、あんたの“針千本”」


子供の頃二人で遊んだ黒ひげ危機一髪を見て編み出した京子の十八番。もう一匹が紅葉に襲いかかって来たのでバックステップで回避するといつの間にか背後には壁がある。追い詰めたとばかりに狛犬が口を開けて襲いかかる。紅葉は背を向けて、壁に向かって跳躍し壁を足で蹴ってくるりと身を翻した。忽然と消えた獲物に戸惑っている矢先背後からの小太刀の斬撃に悲鳴を上げる。好機とばかりに攻撃を繰り出していく。狛犬も式で作られているらしく血は出ない。代わりに斬った所から刀傷が増えていく。小太刀を一振り鞘に仕舞い紅葉は跳躍して脳天から突き刺した。雄叫びと共に式神が消えていく。京子の方に目を向けると、向こうも終わったらしく式神が少し可愛そうに思えるのは、十数本の刀が刺さって針の山が出来ているからに間違いはない。お互い一息ついて視線を奥の階段へと向けた。


 異空間の扉を守るカジナンは、直ぐ様状況が覆った事を理解した。悪魔の呼び掛けに応じないのは、イレギュラーが起こった証拠でもある。退魔師達が自分を囲む中、時間の経過と共に陰陽庁以外の人種も散見するようになった。日本の自衛隊が彼等の後方で待機しており主にスナイパーがこちらを狙っている。結界を貼っているものの一斉に仕掛けらた場合持たない。


「おう、いててててて。まだ腰がちょい固まっとるの」


羽津流に心配されながらも腰を気にしながら、水連がカジナンの前へ現れる。


「まったく、わしも平和ボケしたもんじゃわい。それで、お前さんこれからどうするね。この場の全員と一戦交える覚悟で戦うつもりかの」


「一つ聞きたい事がある。どうやって悪魔を倒したのかそれだけが気になってね」


「さ~の~。清治の奴が何とかしとは思うが、なんせ石にされとったもんで」


一瞬の閃光が見えた瞬間、カジナンの張っていた結界が破られた。水連の居合い抜きの一太刀による一撃が容易く結界を壊した。


「冥土の土産に教えるのも勿体ない話じゃ。世間を騒がせただけでは飽きたらず、何人も死人を出しおって」


カジナンは周囲を見渡した。緊迫した状態を保ちつつも号令一つで躊躇なく攻撃を開始する嵐の前の静けさ。自衛隊の狙撃手、陰陽庁や呪術捜査官の手練れ達、そして水連が刀を抜いて構えている。それを迎撃する為にカジナンも悪魔の召喚の準備を整える。派手に暴れてその隙を突いて逃げる事はカジナンには十分可能に思えた。万事休すに思われたが、カジナンの周囲に魔法陣が浮かび上がる。向こうに何か進展があったのか道満の呼び出しに、カジナンは応じた。体が下半身から消えていく。その場の全員が攻撃態勢に入ったが水蓮は手を掲げて静止させる。


「それでは諸君、今度会う時はこの世界の絶望をお見せしよう」


羽津流が消え行くカジナンに薙刀で攻撃を仕掛けるも空を斬る。


「水連様、如何なさいますか」


「追撃は良い。呼び出したという事は向こうも切迫しておる証拠じゃろ。奴等がもしこの地に戻った場合に備えよ」


戻った時は安倍晴明が敗れると同義。それは彼の死を意味する。カジナンが消え、扉が残され水連がそう呟いた。



 場所は移り、迷宮の奥で道満は蔓に絡まれ身動きが取れずにもがいていたが、怒りを露わにして叫んだ。


「晴明!!こっちに人質が居る事を忘れたか!!奴に連絡を取って全員を殺す事等造作も無いぞ!!」


清治が呆れて、返答する。


「そないな事が出来るかどうか、試してみればええ。その前にお前をこの場で封印させて貰うがな、如月の君!!」


「お任せください!!⋯⋯⋯くっ!?」


結界を張ったものの、一撃で粉砕されて首を掴まれる。清治が喘ぐ中、道満は関心した様子で携帯の状態を確かめている。


「確かに、悪魔との契約が切れている。一体何をした?」


「別に俺は何もしとらんで。外の連中が頑張ったんやろ」


「そうか、なら死ね。そのまま縊り殺せ真義」


命令の通りに、彼女は目一杯力を込めて清治の首を圧し折ろうとしたが、何者かが彼女の腕を蹴りで弾いた。真義は警戒して後方へと下がると、鬼化した義達が清治の前に立っている。


「小人になって潜んでいて正解だった。な身内の不始末はこっちでやらせて貰う。君は彼と決着を」


咳込んで、息を整えると改めて道満を見据える。


「そうさせて貰うわ、寛治さん結界を!!」


そう言うと、寛治は結界を張って自身の安全を確保する。とはいえ、相手の攻撃を防げるものではない。あくまでこれから起こる戦いの余波に備える為の物。狙われれば一溜りもない事は重々承知していた。


「出でよ孔雀明王!!」


「お出でませ、貴人きじん


二人が同時に召喚を繰り出し、お互いの式神が対峙する。場の空気が張り詰められ、空気が震え振動する。孔雀明王が重力の塊を圧縮した球体を作り出すと貴人も光の弓と矢を作り出し、二人の攻撃は同時に放たれた。

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