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陰陽庁怪異対策課京都支部 2

 

陰陽師が栄えし頃、妖怪や怪異を鎮める為に設立された組織が存在した。現在はその名を「陰陽庁」と名前を変えて一般市民に知られる事なく全国で活動している。妖怪は人の思いより生まれる。古い妖怪達も消滅したものもあれば、日々新しく生まれる妖怪に対処しているのである。場所は京都の清水寺にて本日も妖怪の調伏が行われていた。妖怪が清水寺への坂道をかけ上っている。下半身は蜘蛛。上半身は男性の姿をしている。それを二人の少女が追いかけていた。


「ちょっと、どうすんのよ不味いわよこれ」


髪を耳まで下ろした快活な少女がそう言うと、もう一人の栗毛の少女が溜め息を吐いた。


「万が一にもここで何かあったら、怒られるだけじゃ済まないわね。紅葉、あんたが怒らせるから」


「はぁ!?何よ私のせいだっての!?」


二人とも巫女服だと言うのに傾斜を軽々と上っていく。妖怪は、清水寺の本堂に着くなり訴えた。二人は妖怪に備えて止まって構える。


「俺がモテないのは世の中が悪いんだ!!断じて俺のせいじゃない!!俺の告白を断ったお前は絶対に許さない!!まずは清水寺を滅茶苦茶にしてやる!!」


泣きながら訴えてきた。


「ほら、怒ってるじゃないですか。モテない感情から生まれた妖怪の傷を深くしてどうするんですか」


京子は札を取り出して、紅葉は小太刀二刀を逆手に持つ。妖怪は意識の集合体として発生する場合と個人の一感情として発生する場合がある。今回は後者で妖怪自体も然程強くもない。思いの強さはそのまま妖怪の強さに比例する。今回の様な個人のコンプレックスを具現化した妖怪は思いを遂げさせてあげると消滅する場合もある。告白された紅葉がバッサリ「キモいしないわ」の一言でこうなった。京子は地面に魔方陣を出現させて、岩の式神を召喚した。人の形を模した岩が妖怪に向かって動き始めると妖怪は後ろを向いてお尻から蜘蛛の糸を吐き出した。式神が糸に絡まって動けなくなっている間に、二人とも間合いを詰めて紅葉が小太刀をに前足に斬りつける。6本のうち2本が無くなり、妖怪はバランスを崩した。急に暗くなって、影が出来た方に妖怪は顔を見上げると京子が式神を踏み台にして跳躍していた。刀を大きく降り下ろして脳天から斬りつけると、断末魔を残して消滅する。式神を解除して、二人は安堵した。


「任務完了ね。観光地に何も無くて良かったわ」


紅葉がそう言うと、刀を仕舞う。現在深夜23時頃。清水寺にはすでに人は居ないが、夜の街の光が綺麗に輝いて見える。


「嘘でも告白受けちゃえば消滅したかもしれないのに」


「絶対無理」


告白された事を思い出して、紅葉はげんなりと答えたのだった。京子が携帯に連絡を入れて陰陽庁の本部に連絡を入れる。


「清水寺付近に出没していた妖怪を滅しました。もう大丈夫です」


【お疲れさま、今日はもう遅いし二人とも見廻りを交代して帰っていいわ】


「了解です、次の任務はいつでしたっけ?」


【えーっと・・・・・・3日後の夜よ。大変よね、中学生に上がったら皆一人前扱いなんて】


「まぁ、仕方ないですよ。陰陽庁が出来た頃から続く伝統ですし」


当時は13才になったら元服と言われ大人の仲間入りとされた。その名残でみっちり京都の市役所の地下に存在する陰陽庁の本部の中で幼少の頃より退魔師の基礎を教え込まれ、小学校卒業と共に陰陽師としての訓練も卒業を迎え、実践に放りこまれる。それ故、夜の濃くなる深夜まで子供が見廻りをする事が多く、大人はそれから先の時間帯に徘徊する事が常だ。何せ、夜の深まる深夜3時頃ともなれば、人が皆寝ている時間帯。故魑魅魍魎が活気づいて姿を現してくる。


【大人組が動き始めたから、二人は今日はこれで終わりね】


「ありがとう御座います。お疲れさまでした」


携帯を切って、京子は紅葉に報告した。


「今日はこれで終わり。帰って寝ましょう」


「っ・・・あー長い一日だったわ。これ現行法に違反してんじゃないの?」


尤もな疑問ではある。しかし伝統を重んじる京都の人間故か今のところ変革の声は上がらない。


「いずれ紅葉が陰陽庁の役人にでもなったら変えればいいんじゃない?」


「いや、それはおかしいわ。救われたいのは自分であって、未来の子達じゃないし」


京子は、紅葉に並んで歩いて、真顔でいう彼女に呆れて返した。


「だから、誰も変えたがらないのよね」


二人は清水寺から京都を眺め下ろす。まだ少し寒い春の風が二人にそよいだのだった。


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