The killer of paranoid Ⅷ 29
九条駐屯地の自衛官達は京都の惨状に戸惑いつつも、施設を一時解放してグラウンドに仮説テントを立てて、車で周辺を見回り、道端で倒れた人を保護していた。学校、医療施設、駅回りや市役所や重要文化財等に陰陽庁の結界師がクリオネの式を侵入させないようにセーフティゾーンを作り始めている。暴れる人民もとんと減り意識を失い倒れた人や怪我人で溢れかえっている状況となった。落ち着いたら飲み物を渡したり、簡易な食事を与えたり避難所としての機能を発揮している。
「前田はん、こういう時の為のあの装備なんちゃうか。ちょっと歯がゆいで」
「分かってる。けど現場が混乱してるんだ。的確な指示が俺達に回ってない以上目の前を優先するしかないな」
教会との連携で動く以上根回しも期待薄。
「教会は手伝ってくれてるの?それとも傍観してるのかしら」
前田の携帯が鳴り響いて、エクレアから連携が取れない事と、教会も動いて結界の範囲を広げている一報が入る。
「陰陽師の連中は何しとんじゃ!!結局教会に助けて貰ってからに!!」
教会の介入については、正式に日本国政府から教会からの提案を受け入れたとの事らしい。自国の防衛を陰陽省だけで解決出来ない事態に陥っている事に前田は猫の手も借りたい程に危機に陥っている事を懸念する。不安は自衛官全員に広がり、絵美も空を眺めて不気味がる。結界のお陰で助かってはいるが最初は自衛官にも何人か取りついて騒動になった。
「遠藤さん、これってどういう事態かわかりませんか?」
「一応、上から呪術師って連中のテロが発生した事は聞いた。あの生物みたいな奴が人に取りついて悪さをするのもね。けど流石に首は突っ込めないから、現状ここが僕らの戦場って事に変わりない」
呪術師という異能相手ではあるが、自衛隊が介入するには至らない。
「遠藤隊長!!新しい要介護者の受け入れがあるそうです!!」
「行こうか、白木と一緒に運ぶの手伝ってあげて」
「了解しました!!」
絵美は駆け足で要救助者の元へと走り出す。遠藤は上を見上げてぽつりと呟いた。
「東京と京都の同時展開となると、最終標的は国家転覆?」
馬鹿げた妄想だと一蹴して、遠藤も和の中へと混ざっていった。




