The killer of paranoid Ⅷ 24
葵と綾乃は公園周辺に倒れている人達の保護や、霊感に強くて宇宙人の襲来が見えている人達への避難誘導を行っていた。誰かが救急車を呼んでくれていて現場が騒然となり、二人で行っていた作業もいつのまにか大勢の大人達、陰陽庁関係者も見えてちょっとした騒ぎが起きている。というか、街全体がこの異常現象に対応している様に見えた。商店街、スーパー、観光業に携わる者達、学校の体育館等で倒れた人々の受け入れが行われている。葵達は人が多い事と距離を考慮して商店街へと人々を移した事が結果的に大勢の人間を巻き込んだのが功を奏したと言える。綾乃の力で周辺の式神は一掃出来たが、先程またこの辺りで式神によって暴走している人間が現れた情報が耳に聞こえる。野次馬も随分と増えた様で、老若男女問わず増えてきている。
「何事だよ。こりゃ」
「陰陽庁関係者も居るし、何らかのテロっぽいね」
「今、牙狼会からも連絡入ったけどテロだって。頭上に纏わりつく式神で人を操るんだって。こわー」
「俺達も何か手伝うか?」
「上の人達は何かやるだろうけど。私達子供が勝手に動いていいもん?」
「目の前にこれだけ被害が出てるんだぞ!!」
「まぁ、晃ならそういうと思ってたよ。倒れた人居たら連れて来るくらいなら出来るか」
「流石正義馬鹿。でもそういう所好きよ」
「煽てられても、何も出ねぇっての」
「うちの商店街もこの騒ぎじゃ商売上がったりだから、お父さんが終わったら、うちで奢るってさ」
近くの人混みにて少女が携帯にて、親に連絡している。
「母さん、何か京都ヤバイ事になってんだけど、大丈夫なのこれ。え?呪術師のテロ?うわ、それは怖いね。魔法省も連携するんだ。うん、うん、分かった。家で大人しくしてるってば。これから帰るとこだから。じゃあまたね」
一匹の黒猫が少女の足に寄り添う。艶やかで、色目があり色黒。
「それで、あんたまさか動こうってんじゃないでしょうね」
「こんな面白そうな事に首突っ込まない魔女居る?」
自分の周囲を魔法で確認するだけでも、結構な数の魔女が動き始めている。
「あんたは本当に、いつか好奇心で自分の首絞めなきゃいいけどね。他の魔女はともかく、教会の人間に見つからない範囲が条件よ」
「大丈夫でしょ。私とあんたもいるし」
黒猫が溜息を吐く。
綾乃の携帯から携帯が鳴り響き、携帯の着信音で誰だか判別する。
「お?たまちゃんからだ。もしもし?」
「綾乃か、元気にしとるか?たまにはこっちに遊びにこんか。京都の土産を持参してくれれば尚良いぞ。と、こっちでも把握しておるが、今京都が大変じゃろう?」
「そうなんだよ!!宇宙人が襲来してるの!!」
「期待を潰す所悪いがあれば宇宙人ではない。ある悪魔が術式を使って京都市民を困らせておるんじゃ。こいつが結構厄介な奴でのう。お主に退治して貰いたいんじゃが、今動けるかの」
「そっか残念。うん、大丈夫だよ」
「札をそっちに転移させるでな。それを額に貼っておくと京都の住民を困らせておる悪魔の下へと転移してくれる。そうそう、札は二枚あるでな。誰か連れて行きたいなら好きにせい」
電話が切れると、ぽんと煙が出てひらひら2枚の札が空中を舞う。
綾乃はその2枚の札を手に取った。
丁度、葵が綾乃の所へ戻ってくる。飲み物を持って来てくれたらしい。
「まだまだ、終わりそうにないからな。巻き込んですまないけど、これでも飲んで・・・って何やってんの?」
ぺたりと葵の額に札を貼って、自分の額にも札を貼る。
「じゃあ、一緒に事件を解決しにいこうよ!!」
「はぁ?」
札の効果が始まって、二人は一瞬のうちにある場所へと転移する。
晴明が作った本来東京の退魔師達を結界に送り出す転移用の札を使用して来たのは晴明が封じている呪術結界の中であり
「お~⋯おっきいねぇ!!」
まるで池の中の魚を見るかの様な感想に対して、葵は人生の窮地に声を張り上げる。
「デカ過ぎだろ!!何だよここは!!」
目の前には、ビルに並ぶ程の大きい悪魔が目の前に居た。




