The killer of paranoid Ⅷ 22
時間が経過して、続々と清治の携帯に連絡が届く。結界を維持する為に電話に出る事も出来ないがそうも言っていられない。
「ほんの暫く、二人に結界の維持を任せるが問題ないか?」
「ちょっときついけど30秒なら。まぁ、壊れたら壊れたで」
「ハハハ。有り得ませんので、お任せ下さい。宜しいか?」
「あんたが二人分やってくれるなら私は構わないけどさ。実際問題長くは持たないからね」
清治が二人に結界の維持を任せると二人の顔が険しい物に変わる。その間に清治は携帯の連絡に目を通す。状況を把握した時点で最悪を上回る状況となっていた。自分は動けない上、京都と東京の襲撃があり、厄介な巨大悪魔が邪神によって召喚された状況に加え、京子も浚われ、捜索も出来ない状況にあり、助けに行く事は不可能に近い。無限に増え続ける呪力によって市民や観光客に被害が出ており、それに大勢の退魔師が投入され呪術師によるテロ行為に割く人員が減っている。京都については知人の妖怪が状況を伝えてくれており、脱獄囚の青葉が朱雀を退けた知らせが入っている。
「無尽蔵の呪力⋯⋯⋯まさか」
自分が封じている巨大な悪魔に目を向ける。
「そのまさかさ、現代の晴明。気づくのが遅かったじゃないか」
声が聞こえた方に顔を向けると、朝倉京子が空中に浮かんでいる。顔や肌は死人の様に薄く青色となっており、装束も普段とは違う肌の露出が多い青基調にした物を着ている。背後に立たれた事に気づかず接近を許したのは妹の姿に驚かされたものであり、一瞬の隙を突かれて、背後から首を短刀で斬られる。出血が噴き出し、晴明はその場を離れて喉を手で押さえる。ゆっくりと手を動かすと、手品の様に斬られた箇所が消え失せた。次に口を手の甲で拭って血を拭く。
「蘆屋堂満、やっぱり生きとったか。あの空間に閉じ込めたと思とったんやけどなぁ。妹をどないした」
「殺したよ?魂を握りつぶしてね。最高の肉体である役家筋の人間の肉体を捨てざるを得なかったんだし、悔しいがあれは僕の完敗だったな。だが今回は僕の勝ちだ。君の妹もこの世で最も価値のある肉体には違いないし、君を殺してそいつらを使役出来れば僕に逆らう奴は居なくなるってもんさ」
「悪いが時間があらへん、速攻で蹴りを付けさせて貰う。おいでませ貴人!!」
貴人を召喚する前に、晴明は自分の異変に気付く。
「いや、もう終わってるよ。自分の首元を見てご覧よ」
清治の首に、黒い痣が出来ている。傷口を消したと思っていたが、黒い血が流れていく。清治の表情が苦痛で歪む。
「カハッ⋯⋯これは⋯⋯⋯」
「ありったけの呪いを込めておいたよ。流れる血は黒いが紛れもなく君のもの。解呪はこの僕にしか出来ない。今すぐにでも殺してやりたいがお前に聞きたい事がある。わざわざお前の妹を浚ったってのに、前と同じく坊主で終わるのは我慢ならなくてね」
蘆屋堂満が、怒りを露わにして晴明に告げた。
「禁書の本当の在処を教えろ。さもなくばお前を蝕む呪いは加速すると思え」
暗い世界に、朝倉京子は意識を取り戻す。
三途の川か、死後の世界だろうか。
何もみえない、上下左右もわからない。
不安に押し潰されそうになると、急に目の前に
小さな光が見えた。その方角へ手を伸ばそうと
藻掻くと、光の方から近づいて来る。
それは太陽の如く巨大な恒星に見えた。
光に飲み込まれて、自身もその恒星に飲み込まれる。
塵の様な存在が、飲み込まれた所で恒星に変化等無い。このまま自分は終わるのかと溶けていく感覚を覚えていると、気づいた頃には京子は恒星の核となっていた。丸かった球体が自身の写身を創り出し巨大な体躯を手に入れる。小さな存在が自分に微笑んでくれていて、優しく彼女は出迎えてくれていた。
「おかえりなさい」
「銀杏?」
かつて、禁書の力を使用して彼女の力を最大限引き出した挙げ句、式神として使役した事が脳裏に思い浮かぶ。魂を握り潰された時、京子の魂は消滅したのではない。より大きな自分の魂の下へ転移しただけである。そしてそれが今一つとなった。つまる所、銀杏の体の中という訳だ。一つの体に魂が二人乗りしている状態に京子も困惑する。
「ここは結界の中だけど、貴方が望むのなら」
壊してここを出ると、銀杏は意気込んだ。




