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The killer of paranoid Ⅷ 15

 玄武の結界の中の倒れた人々が消えていく。消滅した訳ではなく、玄武の作り出した簡易な別の結界の中へ収容を始めた。その維持の為、玄武はこれ以上動く事は出来ないが民間人を盾にされる事は無くなる。人質が消えていく様をハゲの男性ーーこと、呪朽は舌を打つ。


「当てが外れたかいの」


「保険が一つ無くなったが、それだけだ」


水蓮の快刀が呪朽の首筋に走る。避けるまでもなくそれを、首筋で受け止める。硬く金属音が響き渡り、彼の体が銀色へと変化する。石化や硬化は変質といった呪いの類いは敵対者にするのが通常だが呪朽は自らを呪いにかける。コントロール化させて自在に扱える事こそ呪術師の真髄。対して水蓮は以前にも石化で動きを初手で封じられた事が蘇る。


「厄介なもん使うのう」


連撃にて斬り結ぶも全て弾かれる。


「驚くのはまだ早いぞ。見るがいい」


玄武の結界で弾かれ消滅した式神の邪神の呪力と人々の欲望を強制的に肥大化させた呪力が周囲に漂っている。それを呪朽を始め、この場に居る呪術師が回収した。全員が大幅に強化され力を得る。呪朽の周囲が徐々に金属の光が広がり水蓮が下がり始める。一身に呪いをその身に受ける者に近づけば自分も呪われる。開幕は互角以上だったが、これで全員が防戦を強いられる事になった。呪いは様々で各々の得意分野が違っており、令ニが相対している男性も呪力を得たのか力が増している。異界の植物を呼出し、その領域を広げている。令ニも式神を呼出し、チェーンソーで食人植物をズタズタに引き裂く。そこからまた呪力を得て更に多くの召喚を行う。


「考えたもんだね。でも一つ残念だな」


「何がかね」


令ニは感心しながらも含みながら嘲笑する。


「いや、通常呪力を与えない様に呪力は消すのがセオリーだ。けど呪力が尽きない環境下にあるなら、そっちに合わせるだけだ」


漂う呪力を引き寄せて、式神をもう2体作り上げる。呪力を際限なく吸収して力に替える呪いのキリングドール。腕が鋭利に尖っており、蟷螂の様にも見える。もう一方は指から呪力の塊が噴出される仕様。目の前の男も条件を五分に持ってきた少年に畏怖の念を抱いた。召喚した食人植物はキリングドール達に無惨に殺され、且つ呪力も吸収されて2体は永遠に踊り続ける自動式のマリオネットと化した。呪力が尽きた男性の目の前には不敵に笑みを浮かべる令ニと3体の式神。チェーンで拘束されて転がされる。


「じゃあ、次の獲物を狩ろうか」


「令ニやることがえげつない」


令ニの奮戦により状況が少し改善されるものの、以前全体の状況として防戦なのは変わらず。また、この環境下に適応出来ているのは令ニを除けば水蓮のみ。水蓮もまた、周囲の呪力を操り、自分の領域を作り出して呪朽の呪いを受けない様に務めている。結論から言えば似たような呪術を自身に掛けた状態。自分の意志で体を硬化させ、且つ刀の威力を高めている。相手の周囲に及ぼす影響を受けずに近接戦闘を続行させ、尚且つ相手を上回る立ち合いが可能。刀の威力を相殺出来ずに受けた箇所から斬撃による痛みが迸る。信じられない物を見る目で水蓮を見る。


「全く、ちょっとヤンチャした自分を思い出したぞ」


「くたばり損ないの爺が!!それで何人の同志を殺した!!」


「そんなもん、逐一覚えとらんよ。どいつもこいつも人を人とも思っとらん犬畜生以下の存在じゃったしなぁ。お前さんもそのうちの一人じゃて」


水蓮の体が黒く変色していく。


(とは言え、周囲の式神が無尽蔵に流れてきておる。街にはこれを壊す者達が奮戦しとる以上呪力が無尽蔵に流れてくるか。全く良く出来とるの。どうする清治⋯⋯現代の晴明はお前じゃ)


一匹の蝶々が、どこかの宮殿へと流れ着く。


虹色に輝くその蝶々は美しい女性の肩に止まった。


「全く、何の色気もない文を寄越しおって。これがかつての逢瀬の合図であった事をもはや忘れてはおらぬか。代を経れば昔の事も薄れるのは仕方の無い事とも思うが、大事な事を忘れては怒りが収まらぬというもの。いつから緊急連絡わりになったのか。色あせぬ思い出とは裏腹に悲しいものよのう。さて、東京と京都の同時展開か。千里眼で状況を確認せねば手は打てぬな。これは我らの愛の結晶に動いて貰わねば如何ともし難いというもの。何、それで我の怒りも少しは収まるというものよ。すでに面白い状況になっておるようじゃしなぁ」


からからと女狐は笑う。


東京と京都で起きている事態には興味はないが


彼女の娘に連絡が出来るというだけで気分が高揚していた。



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