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陰陽庁怪異対策課京都支部 18

 

 初代安倍晴明が滅びゆく妖怪を哀れに思い住まう世界を創成し、自治区として認めているのが妖怪屋敷である。人間の世界へ悪さをした妖怪は調伏されても仕方がないが自治区で大人しく暮らしているだけなら何もされる事はない。人を何人も食らう妖怪や厄介な存在の出現があった場合の情報提供を陰陽庁から求められる事もしばしばで快くそれに応じているのが初代晴明への感謝の表れとも言える。妖怪屋敷に住んでいるのは基本的には妖怪ばかりではあるが、人型といわれる人に化けた者や人間の世界に馴染めなかった半妖も多数存在しており屋敷の頭目である九尻の狐のサポートを行っている。天女の様な格好をした従者に案内され、綾乃は奥にある玉藻の居る宮殿の様な広い場所までやってきた。ぷかぷかと煙草を煙管で吐いて、綾乃が来た事を歓迎した。


「よう来たの、綾乃。お主に良い情報を提供しようと思っての」


「呪いのアプリの件だよね?何回やっても何も起きないから唯の噂かなって思ってたんだけど、違うんだよね?」


「左様じゃ。ありゃ日本の妖怪が起こしている事件ではなくての。日本の妖怪にもウラミやひとつ目と呼ばれる恨みによって生まれる類いの存在じゃ。本来はわしが百鬼夜行で行くべきじゃがわしもちいと用事が出来てのう」


急に、緑色に光る3つの玉のような存在が姿を現す。ぐるぐると回っているその緑の玉から声が発せられた。


「なりません、綾乃に行かせるべきはないはずです」


急に、玉藻の目が細くなる。


「時の3女神の一人ウルズ、久しくその姿を見ぬと思うたらまだ姿を維持出来ぬのか。お主が力の使い方を教えて随分経つはずじゃが、まだ不安かの?」


時の3女神、過去を司るウルズ、現在を司るベルダンディー、未来を司るスクルド

の事を指す。


「また暫く姿を見せられませんが、仕方ありません。私も同行しましょう」


回る3つの玉は、姿を緑の小鳥に変えて綾乃の肩に乗る。


「ウルっち、久しぶり!!大丈夫だよ。お陰で大分制御出来るようになったよ」


「そうですね、良い機会ですから拝見しましょう」


ぞろぞろと、妖怪達が集まり、ひとつ目の妖怪が空間をねじ曲げて穴を作る。

恨みから派生する魔物の居場所を同種の妖怪なら感知出来る。


「その先に、西洋の魔物がおる。行って、日本の妖怪の恐ろしさを存分に教えてくるが良い」


雪女、河童、牛鬼、烏天狗、鎌鼬、大入道にろくろ首沢山の妖怪が声を上げた。


「うん、じゃあ行ってきます!!」


そう言って、綾乃と妖怪達は穴の先へと入って行った。



 京子と紅葉が迷宮を探索していると、大きな人の形を模した紙がふわふわと幾つも浮いているのが見えた。接近するなり襲い掛かってくるので、二人は構える。紅葉は印を組んで影丸を呼び出し、京子も式神を浮遊させてクナイに変化させた。


「影丸、小太刀!!」


影丸は紅葉に小太刀を口にくわえて放り投げた。2本共受け取り、式神を斬っていく。残った敵をクナイを動かし、掃討した。


「言い忘れとったが、迷宮には封印を守護する式神がおる。斬った端から増えていくから、燃やすんがベストや」


「兄さん、そういう事は最初に言って」


クナイを解除して、地面に落とすと、再度札を空中に散布する。目に見える全ての式神に飛ばして貼り付けると、一斉に爆発させた。燃えていくのを見ながら、二人は同時に駆け出した。札が尽きる前に目的地に到達せねば迷宮で立ち往生する羽目になる。同じ頃、晴明と寛治、道満は目的地へと到達していた。道中、式神が立ち塞がったが晴明と道満の足止めにもならなかった。大きな扉を開いた先に広い空間が見え、段差を上った先に禁書が入った紐で結ばれた黒い箱が置かれてあるのが見えた。

「罠かもしれんからな、お前が取ってこい」


晴明は、問題ないと目で伝え、寛治もそれに従った。すると、箱の中から一冊の書物が出てくる。道満に手渡すと、早速その中身を開いた。全ページ白紙、何も綴られていない偽の書物。


「くくくくく、晴明この期に及んでこの道満を虚仮にするか!!」


何も答えない晴明に道満は激昂して、怒りを露にする。


「お望み道理、今すぐ皆殺しにしてーーーーー」


携帯を取り出したがその前に道満に聞き覚えのある声が響いた。それと同時に、白紙の書物から植物の蔓が発生し道満を絡めとる。


『道満様、どうかお怒りをお静め下さい』


「そっ⋯⋯⋯その声は如月の君。何故そなたがこのような場所に!?」


今度は、晴明が口を開く。


「実は昔、晴明はお前の目的に気づいとったようでな。自分の奥さんの身にもしもの事がと思って――――蓮の化身で式を作り、お前に宛がとったんや当時事情を知る貴族の間で失笑の嵐が吹き荒れとったわ」


驚愕の事実に、道満は否定した。


「馬鹿を言うな!!この私が式神に気づかぬはずがない!!」


『いいえ、道満様事実で御座います。天井の染みを幾つ数えたか今でもハッキリと覚えております。貴方が私に囁いて下さった愛の言葉も全て!!』


「えええい!!私を惑わすのは止めろ偽物め!!」


「せやから言うたやろ、『お前並みに意地の悪い先祖が作った迷宮』やてな」


晴明は皮肉を込めてそういうと、道満を絡めとる蔓をきつくして締め上げた。

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